Sunday, February 21, 2021

バイデン政権下のタックスポリシー(4) GILTI増税 (1)

2月に入ってNYCは急に冬っぽい気候になり、数日おきにチョッとした積雪。例年だったら今朝地下鉄動いてるかな~、とか考えてる頃かも。コロナ以前からNYCの雪とか、午前8時のカリフォルニア・フリーウェイとか、オフィスに移動する時間が無駄と思われる日はLocation Freeでサクサクやってたんで、実はあんまり関係ないか。あんまり道路が凍結したりするとWhole Foods行けないかも、程度の比較的どうでもいい悩みだ。テキサス州とかの南部にも寒波、と言ってもNYC的に見ると普通の冬の気候なんだけどテキサス州だからね、が来て風力発電の風車が凍結したりして電力不足に。お陰でダラスからウェブキャストに参加するはずのメンバーが、当日インターネット使えず、電話で参加したりするハプニングがあった。

カリフォルニア州の夏の計画停電もそうだけど、再生可能エネルギーへの転換は災害時や需要ピーク時に市民に十分な電力を供給できる体制を維持しながらバランスよくアプローチしてもらわないとね。世界一の産油国になってる米国の中でもテキサス州は原油生産量で他州にかなり水をあけている存在なだけに、そこで電力不足っていうのは皮肉。21世紀の文明国で計画停電っていうのもなんだかな~って感じでした。

お天気が良くても、ミッドタウンは相変わらず平日でも閑散としてて、この閑散ぶりもついに一年近く続いてることになるけど、街のレストランも閉鎖命令が出たり解禁されたりしてオーナーは一喜一憂。バレンタインデー直前にNYCの屋内飲食が25%キャパで再開。カリフォルニア州も罷免投票を恐れた知事が2週間ほど前から屋外に限定して飲食OKとなった。カリフォルニア州では焼き鳥屋さんや焼き肉屋さん(どこのお店のことかだいたい分かるね?)が「ソフト・オープニング(?)」していて数日満喫することができたし、NYCのミッドタウンも冬なんで屋内じゃないと話しにならないけど、今週、ようやく例のイタリアンに2か月ぶりに立ち寄ることができた。レストランって好景気下でも成功率が低いはずだから何か月も閉鎖させられたり、Plaxiglass、ヒーター、高性能換気システムとかに投資させられた上、急にまた閉鎖とか、再開しても25%キャパとか、そんな環境で生き残るのは大変だろう。僕たちが属する法律、タックス、会計とかのサービス業なんて言うのは今のところWFHでも対応できる部分が多いからいいけど、レストランやネールサロンとか、In-Personのサービスが一日も早く正常に戻り、そこで働く人たちの職が安定しますように。

で、バイデンのGILTI増税案だけど、まずそれを語るにはGILTI制度の概要を知らないと、ってことでGILTIのおさらい。って言っても真面目にGILTIの話しをすると3か月とかの長編シリーズになり兼ねないし、ついつい興奮してしまいそうだから、はやる気持ちを抑えつつ、ここでは2分のスペシャルバージョン。ちなみにもっと知りたいという奇特な方は、2018年から何回も触れてるトピックなので過去のポスティングを参照して欲しい。

GILTIは、CFCが毎期得る所得を、分配のあるなしにかかわらず、米国株主が合算して米国で税金を支払うっていう制度で、設計としては1962年から存在する米国の元祖CFC所得合算制度Sub Fに通じる存在。制度のインフラは同様なんだけど、Sub Fがモビリティが高い所得とか議会や財務省がCFCの活用法やロケーション選定に関してチョッと阿漕過ぎる、って認定するタイプの活動から生じる所得を対象としているのに対し、GILTIはその辺は一切構わず、原則CFCの所得のうち、Sub Fでピックアップできない残り全額を米国株主に毎期合算させる制度。落ち着いて考えてみるとかなり過激な制度なんだけど、3年も付き合って今ではすっかり慣れて当たり前になってるのが怖い。しかも後述するバイデン増税案ポリシーは、GILTIがあるのは当たり前で、通常の法人税との比較でまだまだ手緩い、というものだから2017年以前のクロスボーダー課税制度と比較するとWhole New Worldだ。マジック・カーペットで昔に戻れればいいのにね。

また、制度設計的にもSub Fと大きく違うのは、Sub Fは一旦CFCで数字が確定されるとそれ以上米国株主側で加工されないCFCレベルの属性なのに対し、GILTIっていう金額はテクニカルにはCFCには存在せず、CFCの数字を米国株主が加工してはじき出す米国株主側の属性、っていう点。分配がないのに米国で課税が生じることから、再度課税がないようにGILTI合算時およびその後の課税済み所得の分配時には複雑な株式簿価調整メカニズムがあるけど、CFC側と米国株主側で必ずしも数字がミラーイメージではないGILTIにSub Fと同じインフラで対応しようとするとあちこちで無理が生じることになる。連結納税グループの子会社がCFCを所有してるケースも多いけど、その際に子会社側のCFCに対する株式簿価調整と連結納税グループ内の株式簿価調整、さらに100%DRDとの関係とかかなり複雑で、ULRで封印したはずだった「ミラーの息子 (Son of Mirror)」取引(懐かしい?)が息を吹き返したりして、1936年から50年続いた後に1986年に全面撤廃されたGeneral Utilities原則、連結納税規則や337、ライドエードケースとかに凝ってたオタクの身としてはついつい興奮せざるを得ない状況になっている。2分バージョンじゃなくなりつつあるって?ゴメン。ベーシックに戻らないとね。

で、CFCの課税年度終了時点でCFCを所有する米国株主が、CFCの所得・損失、Tested IncomeまたはTested Lossっていうけど、を自分の持分取り込んで合算するのがGILTI計算の第一ステップ。優先株とかあるとこの計算自体複雑だけど、今日は2分バージョンだから割愛。合算ネット額が米国株主にとってのNet Tested Incomeになる。自分が所有するCFCのTested LossとTested Incomeを相殺できるんで「Net」になる。Tested Incomeを計上しているCFCから見ると、他のCFCのTested Lossで自分の所得が米国でGILTI対象じゃなくなったりして、E&Pの管理が面倒。これが理由で以前のPTI規則案が一旦取り消され、新たなPTEP規則が発行されるはず。既にNoticeが出ていて大枠のガイダンスはあるけど、バスケット毎に毎年16種類とか管理が大変だ。PTEP規則は興味津々なんでず~っと待ってるけど、CARES Actとかで財務省も忙しかっただろうから、まだ出てない。そろそろでしょうか。2分バージョンだったね。自らを戒めるのが大変だ(苦笑)。

Net Tested Incomeがマイナスだったらそれで終わり。その場合、Net Tested Incomeはゼロと取り扱われる。つまり、Net Tested Lossで米国株主の他の所得を圧縮することは認められない。CFC間では通算OKだけど、その結果マイナスが出た場合にマイナスを米国に持ち込めないんで、GILTIってグローバル連結納税みたいだけど、あくまでCFC課税だね、っていうが分かる。もし、連結納税制度で、損失の法人はその年、連結納税グループに属してないと取り扱う、なんて規則があったら何それ~って思うだろうし、なんか釈然としないよね。しかも、Net Tested Lossは繰り越しや繰り戻しがないんで、それっきり。CFC間の通算がOKな点ではSub Fより寛大だけど(Sub Fにも超限定的にQualified Deficit規定とかあるけど)、Tested IncomeにはCurrent E&Pの上限もないし、全体にGILTIの方が厳しい。

で、めでたく(?)Net Tested Incomeがポジティブで、その名の通りNet Tested Incomeとなる場合、次にそのうちいくらが「Intangible Return」、すなわち超過利益部分かっていう認定をする。なんと言ってもGILTIの二つ目の「I」は「Intangible」の「I」だからね。ちなみに最後の「I」はIncomeです。これを「Y」ってして、GILTY課税になってBeyond a reasonable doubtの世界に入らないように。

このIntangible Returnを個々の事実関係を基に計算するようなシステムにしてしまうと、当然実務的に適用が不可能になる。そこで、GILTIはみなしルーティン所得に当たる「Net Deemed Tangible Income Return」を機械的に計算し、Net Tested Incomeのうちみなしの有形資産リターンを超える金額は全額「Intangible」に基づくもの、という事実認定を規定している。GILTI制度に斬新な部分はいくつかあるけど、Intangible Returnをこのようにバッサリ定義した点もそのひとつ。すなわちそこでゴチャゴチャと屁理屈を捏ねることを認めず、原則ほぼ所得全額をIntangible Returnとしてしまった点だ。大胆。で、何がみなし有形資産リターンかというと、所得を認識しているCFCが所有する有形償却資産の税務簿価(ADSベース)年平均残高を米国株主側で合算しそれに10%を掛け、そこからCFCが認識する特定の支払利息を差し引いた金額。Tested Incomeを計上していないCFCの有形償却資産は加味されない。このみなしルーティン所得をNet Tested Incomeから差し引いた金額がGILTIだ。しつこいけど、米国株主側で初めて算定可能な金額で、各CFCは計算の基になる金額は各種提供するものの、CFC毎にGILTIという金額は存在しない。Sub Fとの大きな違いだ。Net Tested Incomeがみなしルーティン所得より小さい場合は、それで終わり。GILTI合算額はゼロになる。

こんな風に計算されたGILTI合算額は100%まるまる米国株主のGross Incomeとなる。で、そこから50%の所得控除が認められるんで、通常の法人税率半分、現状だと21%の半分に当たる10.5%が実効税率でGILTI課税が生じるのが基本の姿。実際には基本通りにいかないことが多くて苦労が絶えないけど。正確にはGILTI合算額に、FTC計算の基となるTested Incomeに紐づくと取り扱われるCFCの外国法人税をグロスアップするんで、所得控除もグロスアップ後の金額に50%掛けて算定する。Tested Incomeは外国法人税に関して税引き後の金額だから、FTCを計上する場合には一旦税引前に戻すための作業だ。ちなみにFTCに使用できるCFCの外国法人税は、Tested Incomeに紐づく金額の80%だけど、グロスアップは100%っていうのも罠っぽい。Tested LossのCFCが支払う法人税を加味することは認められない。Tested Lossだから外国でも法人税なんか支払わないじゃん、って考えるのはあわてんぼうのサンタクロースだ。Tested IncomeとかTested Lossは、米国税法基準で算定するので現地の課税所得とは大きく異なるケースが多い。なんで米国の目から見ると「Loss」でも、現地では課税所得が発生している、または逆のケースも十分にあり得る。

10.5%とするための50%所得控除だけど、課税所得がないと取れない仕組みになってて、またFDII控除と共存しているので、損失の課税年度やNOL繰り越しや繰り戻しを適用している年度は所得控除が認められない、または部分的に減額処理の対象となったりする。50%控除が取れないとGILTI合算額は100%課税されていると同じことだから、GILTI合算額に対する実効税率は21%となる。CFCが国外でどれだけ高税率で法人税を支払っていてもだ。この点は、行政府の大英断でHigh Tax Exclusionという法文からはとても読み取れない規則が策定されているので、それで助けられた納税者は多いだろう。

このように教科書通りきれいにいけば100のGILTI合算額に対して10.5の法人税が米国で課せられることになるけど、そこからFTCを引くことができる。上でもチラッと触れたけど、Tested Incomeに紐づく外国法人税を特定し、その80%が潜在的にFTC対象となる。FTCの制限枠の算定は、課税所得総額に基づく制限枠に加え、GILTIバスケットを含む4つのバスケット、条約に基づくRe-Sourcing条項を利用している場合はそれが5つめのバスケットになるけど、毎に制限枠を計算する。その際に、米国株主側で発生している費用を各バスケットに配賦・按分することになる。この配賦・按分計算自体迷路のようで、費用の配賦・按分って一間地味に思うかもしれないけど、クロスボーダータックスプランニングの肝と言っても大げさでない部分だ。一般管理販売費をCFC株式やSub F、Tested Incomeに配賦・按分するケースは、Stewardship費用を除くと余りないって言えるけど、支払利息やR&D経費は特殊な計算を伴うので要注意。特に支払利息はお金に色なしということで、原則、資産の税務簿価で按分するので、GILTIを生み出すCFC株式にも按分される。国内外の調和を図るため、資産簿価計算時の償却費用は国内資産に対してもこの目的のみでADS使用可能。派手に加速度償却とかしてると、国内資産の簿価だけ急激に下がってFTCに限ってみると費用按分が不利になるからね。この費用配賦・按分は想定外のGILTI課税に繋がる。1ドルでもGILTIバスケットに費用が配賦・按分されると、10.5という枠が削られていくんで、外国源泉所得に費用を配賦・按分するとその金額に21%で課税されるっていう言い方もできる。この点も上で触れたHigh Tax Exclusionが公表される前は大きな問題となっていた。

って、ことで2分バージョンのはずが、20分バージョンくらいになってしまった感じはあるけど、僕なんか3年間GILTIのことを考え続けて未だに不明点があるくらいだから20分でもご勘弁を。今日はお天気いいんで、閑散としたミッドタウンか、結構混んでるSOHOに繰り出して気分を晴らそうかな。次回はバイデンのGILTI強化案。