Saturday, January 2, 2010

謹賀新年2010

瞬く間に2009年も終わりを告げて2010年になってしまった。Y2Kで大騒ぎしてから10年というのは信じ難い。2010年は景気回復を含むいい年になって欲しい。個人的には米国税務サービスを通じて、一つでも多くの日本企業がアメリカまたはグローバルで成功する際の一助となり続けたい。

*2009年を振り返って

日本企業に国際税務サービスを提供する者として、2009年の一番のニュースは何と言っても日本の国際課税システムが米国型の「全世界課税」から外国子会社からの配当非課税を規定した「Territorial」システムに移行したことだろう。この制度変更により日本企業のグローバルタックスプラニングの機会、効果は従来と比較にならない域に達っしたと言える。しかし、その恩典を最大限に利用しようとしない日本企業が未だにかなりある点は不思議だ。

企業カルチャーとして税務プラニングのような「邪道」なことはしないと明言してしまうところもあるが、グローバルレベルでの競争を真剣に考えるのであれば、この分野である程度のプラニングもしないという選択はもはやあり得ない。GDPが中国に抜かれて第三位となるかもしれない2010年こそ、何とか日本企業のタックスプラニング元年として欲しい。

米国子会社からの配当は一定条件を満たせば0%源泉税という恩典もある。更に2009年末に発表された日本の税法改正では、タックスヘイブン税制に抵触する低税率国の定義が25%から20%に引き下げられている。これら諸々の新たな税法を諸外国の税法とうまく組み合わせることにより、効率のよいグローバルタックス管理が可能となるはずだ。税務効率がよく、かつ事業目的にも合致しているグローバルサプライチェーンの構築、資本借入率の見直し等、直ぐに検討できる項目が沢山ある。

米国税務的には、年の瀬にAll CashのD再編やSec.304の財務省規則が発表されたりした。この二つはぜひ近々に特集してみたい分野だ。

*2010年はどんな年?

ブッシュ政権初期に導入された大規模減税の多くの規定が時限措置であったが、その多くが2010年をもって失効する。どの規定が延命するか見ものであるが、政権・議会が民主党主導になっていること、財政が極めて苦しいこと、などからブッシュ減税で規定されている低税率を含む多くの規定が2010年をもって廃止されるだろう。

また、通常のIRAをロスIRAに変換する際、従来は所得制限が規定されていたが2010年は、1998年にロスIRAが創設されて以来初めて所得制限なしでロスIRAへの変換が認められる。このことから2010年には高所得者・資産家の間でロスIRAへの関心が高まるだろう。

オバマ政権の目指す医療保険改革の行方、特にそれに盛り込まれる税収確保の規定も注目度が高い。

以前から何回もポスティングしている「Carried Interest」をキャピタルゲインではなく、通常の報酬所得として課税しようという改正も実現するかもしれない。ただ、Carried Interestの問題が大きく取り上げられていた当時と比べると、Private Equity Fundの活動自体が下火になっているだけに今更って感じがしなくもない。

マイナーなところでは、非居住者の個人が申告書として使用する1040NRの5ページ目の質問が大きく改訂されており、この新様式での初の申告シーズンとなる。従来の様式では租税条約の恩典を開示する質問が「ECI」か「Non-ECI」かで分けられていたりと不必要に複雑だった気もする。この質問にどれだけの人がきちんと回答していたか興味深い。例えば、米国源泉の報酬を租税条約14条で非課税としていれば、ECIに係る金額となるが、本来は全世界所得で課税されるはずの米国外源泉の給与をTie-Breakerで非課税としていれば、そちらは「Non-ECI」となる。

というように税務オタクっぽい話題は益々尽きることはなさそうだ。今年もできるだけ多くのポスティングを心掛けるので、引き続きご愛読頂きたい。