上院法案公表から一夜明けたMorning After。再度法案に目を通したけどsection 899は公表直後に書いた昨日のポスティングで合ってると思う。Super-BEATはBEATそのものが大きく変わってるんでNew BEATの話しも一緒にしないとSuper-BEATの理解が進まないんで次回にでも。
で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。
BBB
っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。
ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。
Last Minuteロビー活動
で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。
Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。
来週上院投票?
ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。
次回はNew BEATとSuper-BEATについて。
Wednesday, June 18, 2025
Monday, June 16, 2025
税制改正上院バージョン公開「899の運命は?」
前回のポスティングを「次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね」って締めくくったけど、本当にその通りになりました!米国時間の金曜日に結局出なかったんで月曜日は怪しいなと思って移動中にもかかわらず朝から目を光らせたんだけど、ちょうどJFKに着いた直後Air Train降りるタイミングで公表を知った。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。
チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。
で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。
Section 899上院法案バージョン
こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。
Offending Foreign Country
下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。
Unfair Foreign Tax
1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。
「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?
おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。
Applicable Date
適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。
「On or After」 v 「After」
以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。
付加税%は15%打ち止め
下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。
「Portfolio Interest Exemption」
米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。
っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。
Saturday, June 14, 2025
Section 899下院法案バージョン (4)
Mega-Bill上院バージョン
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。
Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。
これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!
で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。
Section 899の行方は?
これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。
その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。
次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。
一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。
ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。
また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。
Section 899上院バージョン?
大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。
Recission Bill下院可決
数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。
う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。
Section 899 下院法案「Specified rate of tax」
Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。
で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。
マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。
また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。
ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。
Sunday, June 8, 2025
Section 899下院法案バージョン (3)
Mega-Billの中の税法部分の上院バージョンが公表される前にsection 899下院法案バージョンの詳細に戻っておかないとねってことでシリーズ3。下院法案バージョンに関しては国別暦年ベースの付加税適用開始タイミングおよび付加%、そしてDiscriminatory Foreign Countryの納税者がFiscal Year課税年度を採択してるケースの各納税者に対する適用タイミングおよび混合税率の考え方に触れた。今日はsection 899の適用対象者が誰かっていう点に触れたい。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。
Saturday, June 7, 2025
Section 899最大の難関「Byrd Rule」Parliamentarianから合格通知
う~ん、section 899、Super-BEAT、OECD De-funding等の対抗策は2024年の選挙で共和党がTrifactaになったら現実的って2023年当時から警鐘を鳴らし続けたけど、世間では全然Catch-Onしなくて(苦笑)、今になってメインストリームメディアとかが「section 899が…」とか条文番号にまで言及して大騒ぎしてるんでなんだかな~って感じ。米国ではsection 899は「Revenge Tax」っていう俗称が一般化してる始末。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?
Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。
Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。
Byrd Rule違反かどうか誰が判断?
法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。
そして結果は?
週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。
大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。
上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。
Wednesday, June 4, 2025
ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向
いよいよ上院が休会から戻ってきたんで今週からMega-Bill上院審議開始。既にArmed Services等の物議を醸しにくいCommitteeは自分担当部分のMega-Bill上院版を完成させつつあるっていう話し。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
Rescission Bill
一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。
OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。
Mega-Bill上院審議
Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。
もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。
PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。
で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。
Cut v Saving
ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。
他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。
Section 899は?
下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。
Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。
肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。
ということで現状アップデートでした。
Saturday, May 24, 2025
Section 899下院法案バージョン (2)
3つ前のポスティング「Section 899下院法案バージョン」で下院法案に盛り込まれた改訂Section 899に関して触れたけど、その後あっという間に下院本会議を通過してSection 899はそのまま上院に送り込まれた。
以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンは「UTPR・DST・ DPT」の3つを(制度的に米国法人・市民および米国税法上のCFCに適用がないケースを除き)自動的にUnfair Foreign Taxesと認定し、それらの税法の一つでも採択している国は「Discriminatory Foreign Country」に当たり、そんな国の法人・市民が899対抗規則対象になる。この3つ以外の税制は従来通り、財務長官が域外課税とか差別的課税か判断するんでその公表があって初めてUnfair Foreign Taxになる。
また、従来の法案では実際に対抗措置がトリガーされる前のメカニズムとして財務長官による議会への報告、問題国と一定期間交渉手続き、等の要件が規定されていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」)。これらの手続きは(従来の)899案のフォーカスは必ずしも対抗措置をトリガーすることよりも米国に対する域外課税や差別的課税を取り下げさせる点にあったように見える。下院法案バージョンでは交渉要件は撤廃され、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は歳入効果の定量化を容易にし、「Scoring」を可能にすることで上院でBudget reconciliationの要件を満たすように工夫されている。結果10年間で$116Bの歳入源になってるけど、この数字は結構大きい。
Section 899下院法案バージョンの対抗措置メカニズム
Section 899下院法案バージョンの「対抗措置メカニズム」そのものは(Super-BEATが加わった以外は)従来の規定とほぼ同じで通常の税率に毎期5%上乗せしますっていう全体像。付加%税率の対象に当たる税金タイプも従来のバージョンのまま。これらは以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」で結構細かく触れてるんでここでは省くけどぜひ読んでみて欲しい。
たかが付加%されど…
どんなタイプの税金が付加%の対象になるかって考える際、超ベーシックなレベルで税金は大別して「Substantiveな税金(所得税・法人税)」と「徴収メカニズムに当たる源泉税」の2つがあるっていう点を常に念頭に置いておくと複雑な899メカニズムの理解が進む。前者は問題国の法人・市民に対する税金だけど、後者の源泉税は大概において米国人に課せられる法的義務。両者はミラーイメージなことも多いけど、別の規則に規定される異なる法的義務だからね。この区別に基づく899の複雑性は後述する。
さらにFIRPTAに関するSubstantiveな税金と源泉徴収メカニズムの関係は、最初にFIRPTAが制定された頃はFIRPTA源泉徴収っていう制度は存在しなかったことからも分かる通り、何となくHand-in-handな感じだけど、両者はミラーイメージとなる設計ではない。FIRPTA源泉徴収は源泉税っていうより実質予定納税だし、込み入ったペーパーワークに基づく減額や免除措置があったり元々複雑怪奇なんで、これらに付加%規則をOverlayさせてる899は相当難解。FIRPTAと899の関係は現時点ではOver-the-topな話しになり兼ねないんで899が上院通過したらそのバージョンに基づいて詳しく触れたい。
付加税率とApplicable Date
で、Super-BEAT以外の899対抗措置となる5%から始まる付加%だけど、前述の通り、下院法案バージョンでは財務長官によるリストアップ・相手国との交渉手続き期間等がなくなった関係で付加%が累積していくスターティングポイントは以前よりも早くなる。特定のタイミングで何%付加されるかを判断する際のスターティングポイントは「Applicable Date」っていう概念で管理されるけど、テクニカルにこのApplicable Dateっていう概念は各国単位で付加%が何%なのかっていう判断にのみ影響があり、付加%がどのように899対抗措置として実際に各納税者(源泉税徴収義務者含む)に適用されるかっていうタイミング認定時には登場しない。この部分の条文は良く読まないとかなり難しいよね。この差異は899対抗措置をトリガーするDiscriminatory Foreign Countryっていう認定は個々の企業行動やストラクチャリングではなく各国の法令に基づいて判断される一方、実際に対抗措置で迷惑を被るのはそんな国の納税者っていう制度上の位置づけに起因する。
適用付加%と条約
下院法案バージョンが出る前の1月の899法案では、Discriminatory Foreign Countryの法人・市民に対する法人税・所得税・源泉税に対する付加%上乗せ後の税率は「条約を無視して」決定することになっていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (4)「最新条文はやっぱりさらに強化」」)。この点に関して下院法案バージョンでは緩和があり、付加%は条約適格の納税者に関しては条約レートにプラスするって規定されている。これは条約相手国を慮っての緩和措置と言うよりは、批准手続きを含む条約を取り巻く法的管轄権は上院にあるんで、899法案の上院審議を援護射撃するための配慮っていう背景の方が強かったと思われる。元々、なぜ対抗措置を取ってるかっていうと、基本的にUTPRとかは米国租税条約を無視した課税って米国では考えられてるから下院に相手国を慮ってソフトタッチにする理由はなかったと推測される。
適用付加%
で、付加%がいくらなのかっていう判断法だけど、上述の通り、この判断時にキーとなる概念は「Applicable Date」で対抗措置有無は諸国の税法ベースなんで国単位の判断になる。Applicable Dateは次の3つのタイミングの一番遅い日またはその後に開始する「暦年の1月1日」って規定される。3つのタイミングとは1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの制度上の適用開始日。UTPR・DST・DPTは、米国法人・市民または米国税法上のCFCへの適用が免除されていない限り、自動的にUnfair Foreign Taxになるんで、これらに関しては単純に特定の国がこれをいつ可決し、その国の法令に基づいていつから適用が開始するかを基に判断する。
Applicable Dateは常に暦年の1月1日。適用付加%が5%ずつ増えていくタイミングもApplicable Dateから暦年何年目かを基に累積計算していく。すなわち、3つのタイミングに基づいて決まるApplicable Dateとなる1月1日から始まる暦年一年目は5%、翌年以降は毎1月1日が訪れる度にそこから始まる暦年に5%づつプラスされた数字が適用付加%になる。
で、話しがややこしくなるのは、「国単位」および「暦年単位」で適用される付加%を決めた上で、次に各納税者に適用される付加%の概念が登場してくる点。源泉税以外の所得税・法人税はその計算や課税が特定の日の数字で決まる訳ではなく、常に課税年度単位になることから課税年度が暦年ではないFiscal Yearの納税者の課税年度には(特別な事情でShort Yearになってない限り)必ず2つの暦年が含まれる。こんな状況に適用される付加%は、課税年度に含まれる各暦年の付加%を日数加重平均した混合税率。日数加重平均%を算定する際、納税者が属する問題国に適用される最初のApplicable Date前(すなわち前年12月31日以前)の適用付加%はゼロと考える。例えばApplicable Dateが2026年1月1日となる問題国の納税者が3月課税年度の法人だとすると、その法人に適用される2027年3月期の付加税は約6.26 %になるはず(26年4月~12月が5%で27年1月~3月が10%の日数加重平均による混合税率。計算合ってる?)。Applicable Dateが2027年1月1日の場合、同様に2027年3月期に適用される付加%は約1.23%になるはずだけど、後述の通りこのパターンではまず2027年3月期に付加%が適用されるかどうかの見極めが求められる。
一方、源泉税は課税年度単位の税金ではなく支払い時点の一発勝負なんで、単純に源泉税支払い時点で適用される付加%を参照するって規定されている。例えば上の例で2027年1月1日がApplicable Dateの場合、2026年12月31日以前の源泉税に付加%はなく、2027年1月1日以降は同12月31日まで5%、2028年1月1日から付加は10%…って続いていくんだろう。この目的では受け手の外国法人の課税年度が暦年でもそうでなくても関係ない。
源泉税徴収義務Safe Harbor
源泉税の付加%部分は、財務省がDiscriminatory Foreign Countryのリストを公表するまでは徴収義務が免除される。899が可決した後、比較的直ぐにリストが公表されるんじゃないかって推測され、Applicable Dateまでに公表される場合、Safe Harborは効果がないことになる。さらに私的財団および信託に関してはリスト公表後90日間Safe Harborの延長が認められる。
おそらく所得税・法人税は自らの話しなんで自分がどこに国に属してて899の対象だな、とか判断が容易だけど、場合によっては多くの国に関して源泉税を徴収する義務がある米国人に「この国はDSTがあるな…」とか個々に判断させるのは負荷が高すぎるっていうような理由で規定されるSafe Harborなんだろうか。
付加%の上限Cap
Applicable Date以降の暦年毎に累計で付加される%は付加した結果の累計税率が法定税率プラス20%を上限Capとするって規定されている。例えば源泉税だったら法定税率は30%だからCapは50%で、法人税だったら21%に20%加えて41%。毎期の付加%を加える基となる税率は条約を加味してもいいって規定されてる点は上述の通りだけど、上限Capに関しては条約税率は加味されない。例えば配当に関する源泉税の条約税率が0%の場合、5%を付加した5%源泉税率から始まって、10%、15%って10年かけて50%まで上昇することになる。そんな長期間に亘って899に抵触し続けないことを願うけどね。
で、ここまでは何%付加するかっていう判断の話しで、適用付加%が関係する法人税・所得税および源泉税にかかわる話しとなり、後述のSuper-BEATに付加%っていう概念はないんで、これらの付加%の規則はSuper-BEATには関係がない。
899対抗措置適用対象課税年度
で、次に各納税者のどの課税年度から899対抗策の適用があるかっていう判断法が規定されている。この判断は付加が何%かっている判断とは異なるもの。
課税年度単位の税率っていうのは所得税・法人税の世界の話しなんで、この規則は通常の所得税・法人税およびSuper-BEATに関係する話し。源泉税には付加%の判断同様常に支払日ベースで適用有無が決まる。
納税者の所得税・法人税の話しなんで課税年度単位での計算になることから(もちろん課税年度が暦年のケースは暦年の話し)、一体どの課税年度から所得税・法人税に付加%が適用されたり、Super-BEATでBEAT計算するのかを見極めないといけなくなる。この判断はApplicable Dateの決定に似てるけど暦年や1月1日っていう単位ではない。すなわち判断に使用される日はApplicable Date同様に1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つだけど、この3つの一番遅い日の後(After)に開始する課税年度から所得税・法人税に付加%およびSuper-BEATが適用される。Applicable Dateは「on or after」なんだけどこの目的では単に「After」。超紛らわしいけど、「on or after」と「after」の差異は課税年度初日とUnfair Foreign Tax適用日が同じ日(例、4月1日)の場合、多大なインパクトがある。
判断時に使用される3つの日にちが付加%のApplicable Date判断時に使用される3つの日とダブってて分かり難いかもしれないけど、この考え方でどの課税年度から所得税・法人税に付加%やびSuper-BEATが適用されるかを判断し、その次にだったらその課税年度に適用される付加%を特定するっていう順番でアプローチすると分かり易いと思う。
例えば上の例と同じような設定で、特定の問題国の法人が3月課税年度だとする。899は2025年に可決され、仮にUTPR等のUnfair Foreign Taxの可決および適用が2026年4月1日とする。まず、当法人が法人税に対する付加%およびSuper-BEATに関してどの課税年度から対抗措置の対象になるかっていう点を考えると、上述の通り、1)Section 899可決日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つの一番遅い日より後に開始する課税年度、すなわち2028年3月期(2027年4月~2028年3月)からになるはず。2026年4月1日から始まる2027年3月期は3つの条件の一番遅い日である4月1日より後(after)に開始してないからね。一方、付加%決定目的のApplicable Dateは2027年1月になるんで、2028年3月期の付加%は上述の日数加重平均で決定する。
Substantive税金と源泉税の関係
冒頭に付加%が適用されるタイプの税金は大別してSubstantiveな税金と徴収メカニズムの源泉税の2つに大別されるって書いたけど、暦年以外の課税年度を持つ外国法人はこれらの異なるタイプの税金に対する付加%や適用開始タイミングの差異に基づき複雑な取り扱いに晒される。
例えば付加%目的のApplicable Dateは2027年1月1日、法人税付加%適用初年度は2027年4月~2028年3月課税年度っていう例を続けると、こんな状況で2027年3月に配当が支払われるとすると、それを受け取る外国法人の法人税目的では付加%の適用がないんで30%(または条約低減レート)の法人税(Substantiveな税金)に付加%はなく、条約レートが0%だとすると配当は米国では課税されない(付加%適用初年度は2027年4月から開始だから)。
一方、源泉徴収する側の源泉税に関しては財務省問題国リスト公表済みっていう前提で2027年の付加%は既に5%なんで(Applicable Dateが2027年1月1日なんで)条約レート0%に5%を付加して源泉税を徴収する義務があることなる(この辺りのミスマッチは今後法案が最終化される過程でクリーンアップ、または財務省のガイダンス等で緩和策や新たなSafe Harborが規定される可能性あり)。配当日が2027年3月ではなくチョッとずれて4月になると、受け手の外国法人は4月から開始する課税年度から付加%の適用があり、その課税年度を通じて使用する付加%は日数加重平均ベースなんで、約6.26%になる。一方で源泉税に適用される付加%は2027年を通じて5%。となると3月の配当はOver-withholdingだけど、4月の配当はUnder-withholdingになるように見える。この差異は外国法人がForm 1120FのSection Iを埋めて提出し、差額の還付や追徴処理をするしかない。
とてつもなくややこしい。使った数字はあんまり自信ないから鵜呑みにしないで下さい。ただ考え方は分かってもらえた?次回は適用対象納税者に関して。
以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンは「UTPR・DST・ DPT」の3つを(制度的に米国法人・市民および米国税法上のCFCに適用がないケースを除き)自動的にUnfair Foreign Taxesと認定し、それらの税法の一つでも採択している国は「Discriminatory Foreign Country」に当たり、そんな国の法人・市民が899対抗規則対象になる。この3つ以外の税制は従来通り、財務長官が域外課税とか差別的課税か判断するんでその公表があって初めてUnfair Foreign Taxになる。
また、従来の法案では実際に対抗措置がトリガーされる前のメカニズムとして財務長官による議会への報告、問題国と一定期間交渉手続き、等の要件が規定されていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」)。これらの手続きは(従来の)899案のフォーカスは必ずしも対抗措置をトリガーすることよりも米国に対する域外課税や差別的課税を取り下げさせる点にあったように見える。下院法案バージョンでは交渉要件は撤廃され、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は歳入効果の定量化を容易にし、「Scoring」を可能にすることで上院でBudget reconciliationの要件を満たすように工夫されている。結果10年間で$116Bの歳入源になってるけど、この数字は結構大きい。
Section 899下院法案バージョンの対抗措置メカニズム
Section 899下院法案バージョンの「対抗措置メカニズム」そのものは(Super-BEATが加わった以外は)従来の規定とほぼ同じで通常の税率に毎期5%上乗せしますっていう全体像。付加%税率の対象に当たる税金タイプも従来のバージョンのまま。これらは以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」で結構細かく触れてるんでここでは省くけどぜひ読んでみて欲しい。
たかが付加%されど…
どんなタイプの税金が付加%の対象になるかって考える際、超ベーシックなレベルで税金は大別して「Substantiveな税金(所得税・法人税)」と「徴収メカニズムに当たる源泉税」の2つがあるっていう点を常に念頭に置いておくと複雑な899メカニズムの理解が進む。前者は問題国の法人・市民に対する税金だけど、後者の源泉税は大概において米国人に課せられる法的義務。両者はミラーイメージなことも多いけど、別の規則に規定される異なる法的義務だからね。この区別に基づく899の複雑性は後述する。
さらにFIRPTAに関するSubstantiveな税金と源泉徴収メカニズムの関係は、最初にFIRPTAが制定された頃はFIRPTA源泉徴収っていう制度は存在しなかったことからも分かる通り、何となくHand-in-handな感じだけど、両者はミラーイメージとなる設計ではない。FIRPTA源泉徴収は源泉税っていうより実質予定納税だし、込み入ったペーパーワークに基づく減額や免除措置があったり元々複雑怪奇なんで、これらに付加%規則をOverlayさせてる899は相当難解。FIRPTAと899の関係は現時点ではOver-the-topな話しになり兼ねないんで899が上院通過したらそのバージョンに基づいて詳しく触れたい。
付加税率とApplicable Date
で、Super-BEAT以外の899対抗措置となる5%から始まる付加%だけど、前述の通り、下院法案バージョンでは財務長官によるリストアップ・相手国との交渉手続き期間等がなくなった関係で付加%が累積していくスターティングポイントは以前よりも早くなる。特定のタイミングで何%付加されるかを判断する際のスターティングポイントは「Applicable Date」っていう概念で管理されるけど、テクニカルにこのApplicable Dateっていう概念は各国単位で付加%が何%なのかっていう判断にのみ影響があり、付加%がどのように899対抗措置として実際に各納税者(源泉税徴収義務者含む)に適用されるかっていうタイミング認定時には登場しない。この部分の条文は良く読まないとかなり難しいよね。この差異は899対抗措置をトリガーするDiscriminatory Foreign Countryっていう認定は個々の企業行動やストラクチャリングではなく各国の法令に基づいて判断される一方、実際に対抗措置で迷惑を被るのはそんな国の納税者っていう制度上の位置づけに起因する。
適用付加%と条約
下院法案バージョンが出る前の1月の899法案では、Discriminatory Foreign Countryの法人・市民に対する法人税・所得税・源泉税に対する付加%上乗せ後の税率は「条約を無視して」決定することになっていた(「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (4)「最新条文はやっぱりさらに強化」」)。この点に関して下院法案バージョンでは緩和があり、付加%は条約適格の納税者に関しては条約レートにプラスするって規定されている。これは条約相手国を慮っての緩和措置と言うよりは、批准手続きを含む条約を取り巻く法的管轄権は上院にあるんで、899法案の上院審議を援護射撃するための配慮っていう背景の方が強かったと思われる。元々、なぜ対抗措置を取ってるかっていうと、基本的にUTPRとかは米国租税条約を無視した課税って米国では考えられてるから下院に相手国を慮ってソフトタッチにする理由はなかったと推測される。
適用付加%
で、付加%がいくらなのかっていう判断法だけど、上述の通り、この判断時にキーとなる概念は「Applicable Date」で対抗措置有無は諸国の税法ベースなんで国単位の判断になる。Applicable Dateは次の3つのタイミングの一番遅い日またはその後に開始する「暦年の1月1日」って規定される。3つのタイミングとは1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの制度上の適用開始日。UTPR・DST・DPTは、米国法人・市民または米国税法上のCFCへの適用が免除されていない限り、自動的にUnfair Foreign Taxになるんで、これらに関しては単純に特定の国がこれをいつ可決し、その国の法令に基づいていつから適用が開始するかを基に判断する。
Applicable Dateは常に暦年の1月1日。適用付加%が5%ずつ増えていくタイミングもApplicable Dateから暦年何年目かを基に累積計算していく。すなわち、3つのタイミングに基づいて決まるApplicable Dateとなる1月1日から始まる暦年一年目は5%、翌年以降は毎1月1日が訪れる度にそこから始まる暦年に5%づつプラスされた数字が適用付加%になる。
で、話しがややこしくなるのは、「国単位」および「暦年単位」で適用される付加%を決めた上で、次に各納税者に適用される付加%の概念が登場してくる点。源泉税以外の所得税・法人税はその計算や課税が特定の日の数字で決まる訳ではなく、常に課税年度単位になることから課税年度が暦年ではないFiscal Yearの納税者の課税年度には(特別な事情でShort Yearになってない限り)必ず2つの暦年が含まれる。こんな状況に適用される付加%は、課税年度に含まれる各暦年の付加%を日数加重平均した混合税率。日数加重平均%を算定する際、納税者が属する問題国に適用される最初のApplicable Date前(すなわち前年12月31日以前)の適用付加%はゼロと考える。例えばApplicable Dateが2026年1月1日となる問題国の納税者が3月課税年度の法人だとすると、その法人に適用される2027年3月期の付加税は約6.26 %になるはず(26年4月~12月が5%で27年1月~3月が10%の日数加重平均による混合税率。計算合ってる?)。Applicable Dateが2027年1月1日の場合、同様に2027年3月期に適用される付加%は約1.23%になるはずだけど、後述の通りこのパターンではまず2027年3月期に付加%が適用されるかどうかの見極めが求められる。
一方、源泉税は課税年度単位の税金ではなく支払い時点の一発勝負なんで、単純に源泉税支払い時点で適用される付加%を参照するって規定されている。例えば上の例で2027年1月1日がApplicable Dateの場合、2026年12月31日以前の源泉税に付加%はなく、2027年1月1日以降は同12月31日まで5%、2028年1月1日から付加は10%…って続いていくんだろう。この目的では受け手の外国法人の課税年度が暦年でもそうでなくても関係ない。
源泉税徴収義務Safe Harbor
源泉税の付加%部分は、財務省がDiscriminatory Foreign Countryのリストを公表するまでは徴収義務が免除される。899が可決した後、比較的直ぐにリストが公表されるんじゃないかって推測され、Applicable Dateまでに公表される場合、Safe Harborは効果がないことになる。さらに私的財団および信託に関してはリスト公表後90日間Safe Harborの延長が認められる。
おそらく所得税・法人税は自らの話しなんで自分がどこに国に属してて899の対象だな、とか判断が容易だけど、場合によっては多くの国に関して源泉税を徴収する義務がある米国人に「この国はDSTがあるな…」とか個々に判断させるのは負荷が高すぎるっていうような理由で規定されるSafe Harborなんだろうか。
付加%の上限Cap
Applicable Date以降の暦年毎に累計で付加される%は付加した結果の累計税率が法定税率プラス20%を上限Capとするって規定されている。例えば源泉税だったら法定税率は30%だからCapは50%で、法人税だったら21%に20%加えて41%。毎期の付加%を加える基となる税率は条約を加味してもいいって規定されてる点は上述の通りだけど、上限Capに関しては条約税率は加味されない。例えば配当に関する源泉税の条約税率が0%の場合、5%を付加した5%源泉税率から始まって、10%、15%って10年かけて50%まで上昇することになる。そんな長期間に亘って899に抵触し続けないことを願うけどね。
で、ここまでは何%付加するかっていう判断の話しで、適用付加%が関係する法人税・所得税および源泉税にかかわる話しとなり、後述のSuper-BEATに付加%っていう概念はないんで、これらの付加%の規則はSuper-BEATには関係がない。
899対抗措置適用対象課税年度
で、次に各納税者のどの課税年度から899対抗策の適用があるかっていう判断法が規定されている。この判断は付加が何%かっている判断とは異なるもの。
課税年度単位の税率っていうのは所得税・法人税の世界の話しなんで、この規則は通常の所得税・法人税およびSuper-BEATに関係する話し。源泉税には付加%の判断同様常に支払日ベースで適用有無が決まる。
納税者の所得税・法人税の話しなんで課税年度単位での計算になることから(もちろん課税年度が暦年のケースは暦年の話し)、一体どの課税年度から所得税・法人税に付加%が適用されたり、Super-BEATでBEAT計算するのかを見極めないといけなくなる。この判断はApplicable Dateの決定に似てるけど暦年や1月1日っていう単位ではない。すなわち判断に使用される日はApplicable Date同様に1)Section 899可決(大統領署名)日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つだけど、この3つの一番遅い日の後(After)に開始する課税年度から所得税・法人税に付加%およびSuper-BEATが適用される。Applicable Dateは「on or after」なんだけどこの目的では単に「After」。超紛らわしいけど、「on or after」と「after」の差異は課税年度初日とUnfair Foreign Tax適用日が同じ日(例、4月1日)の場合、多大なインパクトがある。
判断時に使用される3つの日にちが付加%のApplicable Date判断時に使用される3つの日とダブってて分かり難いかもしれないけど、この考え方でどの課税年度から所得税・法人税に付加%やびSuper-BEATが適用されるかを判断し、その次にだったらその課税年度に適用される付加%を特定するっていう順番でアプローチすると分かり易いと思う。
例えば上の例と同じような設定で、特定の問題国の法人が3月課税年度だとする。899は2025年に可決され、仮にUTPR等のUnfair Foreign Taxの可決および適用が2026年4月1日とする。まず、当法人が法人税に対する付加%およびSuper-BEATに関してどの課税年度から対抗措置の対象になるかっていう点を考えると、上述の通り、1)Section 899可決日から90日後、2)Unfair Foreign Taxが可決された日から180日後、3)Unfair Foreign Taxの適用開始日、の3つの一番遅い日より後に開始する課税年度、すなわち2028年3月期(2027年4月~2028年3月)からになるはず。2026年4月1日から始まる2027年3月期は3つの条件の一番遅い日である4月1日より後(after)に開始してないからね。一方、付加%決定目的のApplicable Dateは2027年1月になるんで、2028年3月期の付加%は上述の日数加重平均で決定する。
Substantive税金と源泉税の関係
冒頭に付加%が適用されるタイプの税金は大別してSubstantiveな税金と徴収メカニズムの源泉税の2つに大別されるって書いたけど、暦年以外の課税年度を持つ外国法人はこれらの異なるタイプの税金に対する付加%や適用開始タイミングの差異に基づき複雑な取り扱いに晒される。
例えば付加%目的のApplicable Dateは2027年1月1日、法人税付加%適用初年度は2027年4月~2028年3月課税年度っていう例を続けると、こんな状況で2027年3月に配当が支払われるとすると、それを受け取る外国法人の法人税目的では付加%の適用がないんで30%(または条約低減レート)の法人税(Substantiveな税金)に付加%はなく、条約レートが0%だとすると配当は米国では課税されない(付加%適用初年度は2027年4月から開始だから)。
一方、源泉徴収する側の源泉税に関しては財務省問題国リスト公表済みっていう前提で2027年の付加%は既に5%なんで(Applicable Dateが2027年1月1日なんで)条約レート0%に5%を付加して源泉税を徴収する義務があることなる(この辺りのミスマッチは今後法案が最終化される過程でクリーンアップ、または財務省のガイダンス等で緩和策や新たなSafe Harborが規定される可能性あり)。配当日が2027年3月ではなくチョッとずれて4月になると、受け手の外国法人は4月から開始する課税年度から付加%の適用があり、その課税年度を通じて使用する付加%は日数加重平均ベースなんで、約6.26%になる。一方で源泉税に適用される付加%は2027年を通じて5%。となると3月の配当はOver-withholdingだけど、4月の配当はUnder-withholdingになるように見える。この差異は外国法人がForm 1120FのSection Iを埋めて提出し、差額の還付や追徴処理をするしかない。
とてつもなくややこしい。使った数字はあんまり自信ないから鵜呑みにしないで下さい。ただ考え方は分かってもらえた?次回は適用対象納税者に関して。
Thursday, May 22, 2025
Mega-Bill (OBBB Act H.R. 1) 電光石火で下院本会議も通過。次は上院
日曜日の夜にDeficit Hawk派の4人の侍が戦術的な「Present」投票に転じたことでBudget Committeeを乗り越えた直後から、Mike Johnson下院議長の下、下院共和党リーダーシップによる文字通り24時間夜を徹しての党内調整が続いた。主たる意見の食い違いは「歳出減が手緩い」って怒るDeficit Hawk派、「州税の控除枠が低い」っていうNYやCAの高税率州のSALT派、そして中間選挙で「民主党から叩かれるような刺激的な規定は最小限にして欲しい」っていう中庸派、らからのもの。
下院の議席数は共和党220、民主党212、空席3っていう状況なんで共和党は3人までの反対のみOKで、これはほぼ全員一致が求められるっていう厳しい状況。しかも歴史的に党内の異なる派の意見調整が困難な下院共和党の話しだ。
ルービックキューブ化する調整
日曜日夜のBudget Committee時点ではMike JohnsonがDeficit Hawk派に「Medicaid就労義務早期適用」「IRAのエネジークレジット撤廃前倒し」の2点を口約束ベースで説得しその場を凌いだ。Medicaidは就労義務とは言えそれで当然それでカバレッジを失う市民がいるんで中庸派は好まない。エネジークレジットは自分のDistrictで恩典を受けてる企業がある場合、イデオロギー的には好ましくないとか政府のバラマキって分かってても撤廃には腰が引ける。この手の「Entitlement」は一度与えると取り消すのはほぼ不可能。結局政府の歳出は増額一方。オバマケアで元々の趣旨を超えて歳出が増大したMedicaidも同じだ。SALT派の主張は、規律のない歳出を繰り返す高税率州を所得税が低い(またはない)州の市民が補填することになるんで他州の議員には評判悪いし、費用増額はもちろん歳入減に繋がるんでDeficit Hawk派の主張と真っ向から対立する。まるでルービックキューブ。
Magic Johnson
ほぼ調整不可能にも見えたこんな意見の食い違いをMike Johnsonはわずか4日で調整し切って約束通りメモリアルデー前に下院を通過させた。Johnsonは過去にも数々の危機を乗り越えて最近では「Magic」Johnson(笑)なんて言われたりするけど本当に魔法使いみたいな人だ。もともと2023年に(例によって…)下院共和党内の意見収集が付かずKevin McCarthyが下院議長の座を追われるっていうドタバタ劇後にJohnsonは議長就任したけど、その際、個人的には「この人誰?」って思ったくらい存在感が薄かった。ルイジアナの実直で信仰深い人っていう印象は受けたけどね。その後数々の政局を乗り切り、2025年には議長再選。そんなJohnsonは今回も辛抱強く調整を続けた。
振り返ってみると日曜日の夜のBudget Committee後、Deficit Hawk派とSALT派との調整が長引き、火曜日朝には絶妙のタイミングでJokerの切り札トランプカードを切った。トランプは下院共和党議員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってる場合じゃない」って強力にプッシュし、その晩というか水曜日早朝の午前1時(!)にはRules Committeeが招集され更に調整が続いていた。その間もDeficit Hawk派は「まだ手緩い」とか、SALT派は「$30,000の枠は$80,000に挙げて所得制限も撤廃がいい」とか強気の発言が続いてたよね。
ただ、これらの主張をMike Johnsonやメディア相手に主張するのは容易でも、実際に主張が聞き入れられなかったからって、税制改正、国境警備、ヘルスケア、国防、エネジー政策すべてが一つに盛り込まれてる(すなわちOne Big Beautiful Bill)一世一代と言っても過言ではない法案に反対票を投じて可決を阻止するのはチョッと時限が異なる話し。そんな風に考えると「エネジークレジット撤廃を前倒しにしました」とか「SALT費用控除枠は$40,000に増額しました」みたいな改訂は「だったら仕方なく賛成しましょう」っていうポーズには助け舟だったかもね。
Rules Committee・本会議
それにしてもRules Committeeは水曜日午前1時に始まったけど、改訂法案のMark-upが終わったのは20時間後の水曜日午後9時。そしてその後、法案を本会議投票にかけるRules可決は木曜日の午前2時40分に至った。Rules可決は結局217対212。共和党で唯一反対票を投じたのはBudget resolutionでも反対票を投じたThomas Massie(R-KY)。217対212っていうRules可決結果で本会議可決もほぼ確実になった。
本会議では結局、Thomas Massieと並びWarren Davidson(R-OH)が民主党全議員と並び反対票を投じ、Andy Harris(R-MD)は「Present」で2名の共和党院は「Absent」で無投票。結果215対214で可決。全てが終わったのは今日、木曜日午前7時だった。その後、Mike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise(R-LA)、WhipのTom Emmer(R-MN)が記者会見してたけど、Mike Johnsonとか全く疲れが出てる様子がなくてビックリ。Johnsonっていつ見ても同じなんだよね。お疲れ様でした…って感じでメモリアルデーは取り合えずゆっくりできるんだろうけど、6月には上院が休会から戻ってきて法案にはそれなりの修正が入るだろうから、またしても下院調整。Majic 2.0だね。
ちなみに常に反対のThomas Massieに関してはトランプがPrimary Challengeの可能性を示唆している。
共和党議員2人の無投票って誰?
本会議の投票に参加しなかった2人。結果OKだったから良かったものの議席数が僅差なんで場合によっては運命を分けたかもしれない。Andy Harrisの「Present」投票やBudget Committee時の4人の侍みたいに「何か深淵な戦術だったか…」って思わせてくれる動きでチョッと調べてみたんだけど、実は長時間に亘る徹夜の議論で居眠り(?)だったっていうオチ。一人はAndrew Garbarino(R-NY)。彼の側近は「チョッとだけ席を外した間に投票になってしまった。きちんと昼間に開催しないから…」みたいな説明をしてたけど、Magic Johnsonは「冗談じゃなく、彼は議会の後列で眠ってしまって投票を逃した」ってもっと正確な理由を披露している。もちろんJohnsonとGarbarinoは懇意の仲だからこそ言えること。「吊るしあげる」とも付け加えたそうだ。もう一人はDavid Schweikert(R-AZ)。Schweikertに関してJohnsonは「投票に駆け付けたのが遅すぎて票に加味するにはToo Late」って言っている。2人ともMega-Billのドラフトには尽力してたらしい。致命傷にならなくてよかったね。っていうか可決が確実になったんで2人の票は不要って判断して見切りCloseしたってことだろう。
今後のタイミングは?ちらつくX-Day
ここまで来たら何らかの形で両院通過する可能性大だけど、財務長官のScott Bessentたちが目指す独立記念日(7月4日)はどうだろうね。上院の様子を見てると際どいかもね。ただ実はMega-Billには$4TのDebt Ceiling増額が盛り込まれてて、この増額がないと「Extraordinary Measure」でのやり繰りも8月頃が限界とのこと。所謂「X-Day」。この関係で遅くとも8月初旬にはトランプの署名が終わってる必要がある。ボンドマーケットは不安定だけど、Mega-Bill可決の国家財政インパクトは既にマーケットに織り込まれてるって考えるのが自然だろう。
ここからのスピード感は上院による修正度合次第だけど、下院Ways and Means委員長のJason Smithは「上院での大きな修正は予想されない」って楽観的(希望的?)なコメント。歴史は必ずしもそうじゃないけどね。修正が多いとそれをまた下院で意見調整するんでMagic Johnsonの魔法が必要になる。いくつ魔法持ってても足りないね。
Section 899は?
下院本会議を通過したMega-BillにはそのままSection 899が入っている。InboundのTradeやCapital Flowを気にしたりするSenateがこのまま温存するかどうかは不明だけど、以前のポスティングで触れた通り、Mega-Billに盛り込まれたSection 899は上院もSurviveできるような工夫が施されてる。また$116Bの歳入は個別条文としてはおそらくトップ級なんでPay-For財源の魅力も大きいだろう。
ということでようやく次回は下院法案899の続き。
下院の議席数は共和党220、民主党212、空席3っていう状況なんで共和党は3人までの反対のみOKで、これはほぼ全員一致が求められるっていう厳しい状況。しかも歴史的に党内の異なる派の意見調整が困難な下院共和党の話しだ。
ルービックキューブ化する調整
日曜日夜のBudget Committee時点ではMike JohnsonがDeficit Hawk派に「Medicaid就労義務早期適用」「IRAのエネジークレジット撤廃前倒し」の2点を口約束ベースで説得しその場を凌いだ。Medicaidは就労義務とは言えそれで当然それでカバレッジを失う市民がいるんで中庸派は好まない。エネジークレジットは自分のDistrictで恩典を受けてる企業がある場合、イデオロギー的には好ましくないとか政府のバラマキって分かってても撤廃には腰が引ける。この手の「Entitlement」は一度与えると取り消すのはほぼ不可能。結局政府の歳出は増額一方。オバマケアで元々の趣旨を超えて歳出が増大したMedicaidも同じだ。SALT派の主張は、規律のない歳出を繰り返す高税率州を所得税が低い(またはない)州の市民が補填することになるんで他州の議員には評判悪いし、費用増額はもちろん歳入減に繋がるんでDeficit Hawk派の主張と真っ向から対立する。まるでルービックキューブ。
Magic Johnson
ほぼ調整不可能にも見えたこんな意見の食い違いをMike Johnsonはわずか4日で調整し切って約束通りメモリアルデー前に下院を通過させた。Johnsonは過去にも数々の危機を乗り越えて最近では「Magic」Johnson(笑)なんて言われたりするけど本当に魔法使いみたいな人だ。もともと2023年に(例によって…)下院共和党内の意見収集が付かずKevin McCarthyが下院議長の座を追われるっていうドタバタ劇後にJohnsonは議長就任したけど、その際、個人的には「この人誰?」って思ったくらい存在感が薄かった。ルイジアナの実直で信仰深い人っていう印象は受けたけどね。その後数々の政局を乗り切り、2025年には議長再選。そんなJohnsonは今回も辛抱強く調整を続けた。
振り返ってみると日曜日の夜のBudget Committee後、Deficit Hawk派とSALT派との調整が長引き、火曜日朝には絶妙のタイミングでJokerの切り札トランプカードを切った。トランプは下院共和党議員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってる場合じゃない」って強力にプッシュし、その晩というか水曜日早朝の午前1時(!)にはRules Committeeが招集され更に調整が続いていた。その間もDeficit Hawk派は「まだ手緩い」とか、SALT派は「$30,000の枠は$80,000に挙げて所得制限も撤廃がいい」とか強気の発言が続いてたよね。
ただ、これらの主張をMike Johnsonやメディア相手に主張するのは容易でも、実際に主張が聞き入れられなかったからって、税制改正、国境警備、ヘルスケア、国防、エネジー政策すべてが一つに盛り込まれてる(すなわちOne Big Beautiful Bill)一世一代と言っても過言ではない法案に反対票を投じて可決を阻止するのはチョッと時限が異なる話し。そんな風に考えると「エネジークレジット撤廃を前倒しにしました」とか「SALT費用控除枠は$40,000に増額しました」みたいな改訂は「だったら仕方なく賛成しましょう」っていうポーズには助け舟だったかもね。
Rules Committee・本会議
それにしてもRules Committeeは水曜日午前1時に始まったけど、改訂法案のMark-upが終わったのは20時間後の水曜日午後9時。そしてその後、法案を本会議投票にかけるRules可決は木曜日の午前2時40分に至った。Rules可決は結局217対212。共和党で唯一反対票を投じたのはBudget resolutionでも反対票を投じたThomas Massie(R-KY)。217対212っていうRules可決結果で本会議可決もほぼ確実になった。
本会議では結局、Thomas Massieと並びWarren Davidson(R-OH)が民主党全議員と並び反対票を投じ、Andy Harris(R-MD)は「Present」で2名の共和党院は「Absent」で無投票。結果215対214で可決。全てが終わったのは今日、木曜日午前7時だった。その後、Mike Johnson、下院Majority LeaderのSteve Scalise(R-LA)、WhipのTom Emmer(R-MN)が記者会見してたけど、Mike Johnsonとか全く疲れが出てる様子がなくてビックリ。Johnsonっていつ見ても同じなんだよね。お疲れ様でした…って感じでメモリアルデーは取り合えずゆっくりできるんだろうけど、6月には上院が休会から戻ってきて法案にはそれなりの修正が入るだろうから、またしても下院調整。Majic 2.0だね。
ちなみに常に反対のThomas Massieに関してはトランプがPrimary Challengeの可能性を示唆している。
共和党議員2人の無投票って誰?
本会議の投票に参加しなかった2人。結果OKだったから良かったものの議席数が僅差なんで場合によっては運命を分けたかもしれない。Andy Harrisの「Present」投票やBudget Committee時の4人の侍みたいに「何か深淵な戦術だったか…」って思わせてくれる動きでチョッと調べてみたんだけど、実は長時間に亘る徹夜の議論で居眠り(?)だったっていうオチ。一人はAndrew Garbarino(R-NY)。彼の側近は「チョッとだけ席を外した間に投票になってしまった。きちんと昼間に開催しないから…」みたいな説明をしてたけど、Magic Johnsonは「冗談じゃなく、彼は議会の後列で眠ってしまって投票を逃した」ってもっと正確な理由を披露している。もちろんJohnsonとGarbarinoは懇意の仲だからこそ言えること。「吊るしあげる」とも付け加えたそうだ。もう一人はDavid Schweikert(R-AZ)。Schweikertに関してJohnsonは「投票に駆け付けたのが遅すぎて票に加味するにはToo Late」って言っている。2人ともMega-Billのドラフトには尽力してたらしい。致命傷にならなくてよかったね。っていうか可決が確実になったんで2人の票は不要って判断して見切りCloseしたってことだろう。
今後のタイミングは?ちらつくX-Day
ここまで来たら何らかの形で両院通過する可能性大だけど、財務長官のScott Bessentたちが目指す独立記念日(7月4日)はどうだろうね。上院の様子を見てると際どいかもね。ただ実はMega-Billには$4TのDebt Ceiling増額が盛り込まれてて、この増額がないと「Extraordinary Measure」でのやり繰りも8月頃が限界とのこと。所謂「X-Day」。この関係で遅くとも8月初旬にはトランプの署名が終わってる必要がある。ボンドマーケットは不安定だけど、Mega-Bill可決の国家財政インパクトは既にマーケットに織り込まれてるって考えるのが自然だろう。
ここからのスピード感は上院による修正度合次第だけど、下院Ways and Means委員長のJason Smithは「上院での大きな修正は予想されない」って楽観的(希望的?)なコメント。歴史は必ずしもそうじゃないけどね。修正が多いとそれをまた下院で意見調整するんでMagic Johnsonの魔法が必要になる。いくつ魔法持ってても足りないね。
Section 899は?
下院本会議を通過したMega-BillにはそのままSection 899が入っている。InboundのTradeやCapital Flowを気にしたりするSenateがこのまま温存するかどうかは不明だけど、以前のポスティングで触れた通り、Mega-Billに盛り込まれたSection 899は上院もSurviveできるような工夫が施されてる。また$116Bの歳入は個別条文としてはおそらくトップ級なんでPay-For財源の魅力も大きいだろう。
ということでようやく次回は下院法案899の続き。
Tuesday, May 20, 2025
Mega-Bill辛うじてBudget Committee通過。次はRules Committee
OBBBって命名されたMega-Bill下院法案は前回のポスティングで触れた通り、先週金曜日にBudget Committeeをクリアすることができず、再度日曜日の午後10時に再投票が行われた。C-SPANでライブ中継してたんで西海岸に居る時差も手伝って見てたんだけど金曜日に反対票を投じた共和党Budget CommitteeメンバーのDeficit Hawk派4人の侍が次々今度は「No」ではなく「Present」って言う投票(実際には口頭)。PresentはYesにはならないけどNoにも数えられないんで一票差でBudget Committee通過って言うなかなか見せてくれる展開になった。Budget Committeeの審議をわざわざライブで見るなんてこれが最初で最後かもね。
Present投票
この「Present」っていう投票法は法案に賛成でも反対でもない「ニュートラル」っていうか、態度留保みたいな意思表示だけど、投票には参加しているんで「Abstention」と異なり定足数には加味される。金曜日のNoは戦術的だったSmuckerを除く他の議員が金曜日と同じように投票するっていう前提だと、4人の侍はPresentでもBudget Committeeはクリアできる点は当然予知できるんでDeficit Hawk派にとってもCommittee通過は予定通り。
なぜPresentっていう戦術に出たかは、投票直前まで続いたMike Johnson等との交渉で、「Medicaid」の就労義務を2年前倒しで2027年から適用する点、IRAのエネジークレジット(4人の侍言うところのGreen Scam)の撤廃の前倒し、にリーダーシップが口頭で合意したと伝えられる点が理由。それらが本当に法案に盛り込まれるのを見届ける前なんでBudget Committeeは通過させるけど、まだ賛成に回った訳じゃないぞっていう状況。MedicaidにしてもIRAのエネジークレジットにしてもこれ以上触って欲しくないって言う中庸派もいるんでこのまま法案が改訂されて下院全体を通るとは限らず、引き続き夜を徹した党内交渉が続くことになる。
Rules Committee
下院本会議投票の前の最後のステップとなるRules Committeeはナンと水曜日早朝の午前1時に招集が掛かってるっていうことなんで文字通り夜を徹する勢い。そしてナンと4人の侍のコアメンバーの2人と言えるChip Roy (R-TX)と Ralph Norman (R-SC)はRules Committeeのメンバーでもある。ただ、Rules Committeeでは数的に造反が2人までだったら通過させることができるのと、NormanはRules Committeeでは反対票は投じないってMike Johnsonに伝えたっていう話しもあり、Mike Johnson的には一旦はホッとしてんのかな。ただ仮にRules Committeeを通っても本会議が控えてる。共和党下院議長って寿命が縮まるような状況ばかり。今日の午後は共和党上院に下院の状況報告っていうイベントも入っていたとのこと。
トランプ登場
そんな中最後はトランプに登場してもらわないと収拾がつかないっていうことで、どのタイミングでMike Johnsonがトランプカードを切るかっていうタイミングが注目されていた。そしてその時がついに今日訪れ、午前8時半の下院共和党カンファレンスが行われるHC-5にトランプが乗り込んだ。Mike Johnsonや中庸派の期待としてはDeficit Hawk派を制して欲しいっていうものだったはずだけど、間が悪いことに(このタイミングは偶然じゃないっていう説もあるけど)Moody’sが米国債の格付けをトップから一段階引き下げて、ますますDeficit Hawk派の懸念の火に油を注ぐことになった。
で、トランプはDeficit Hawk派、SALT派、中庸派全員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってないで今の法案をさっさと可決させるように」ってはっぱを掛けた。Deficit Hawk派には「Medicaidとか触ってる場合じゃない(Don’t fxxx around with Medicaid)」とかSALT派のMike Lawler(R-NY)には更に厳しく「お前の選挙区のことは俺が誰よりも良く知ってるが、SALTが理由で落選するくらいだったらどっちにしても落選する」って全員の前で手厳しいコメントがあったそうだ。さすが大統領。また、いつまでも反対してる者には次の選挙でPrimary Challenge(本選挙前に党の候補を選ぶ手続きで対抗馬をあてられること)っていう罰も待ってるリスクもちらつかせたっていう話しだ。
そんな訳で間もなく午前1時のRules Committee開始だけど、ちょうどNYCに戻ってしまったしC-SPANのライブ見てる場合じゃないね。明日に掛けてどうなるでしょうか。
今日は簡単に速報でした。
Present投票
この「Present」っていう投票法は法案に賛成でも反対でもない「ニュートラル」っていうか、態度留保みたいな意思表示だけど、投票には参加しているんで「Abstention」と異なり定足数には加味される。金曜日のNoは戦術的だったSmuckerを除く他の議員が金曜日と同じように投票するっていう前提だと、4人の侍はPresentでもBudget Committeeはクリアできる点は当然予知できるんでDeficit Hawk派にとってもCommittee通過は予定通り。
なぜPresentっていう戦術に出たかは、投票直前まで続いたMike Johnson等との交渉で、「Medicaid」の就労義務を2年前倒しで2027年から適用する点、IRAのエネジークレジット(4人の侍言うところのGreen Scam)の撤廃の前倒し、にリーダーシップが口頭で合意したと伝えられる点が理由。それらが本当に法案に盛り込まれるのを見届ける前なんでBudget Committeeは通過させるけど、まだ賛成に回った訳じゃないぞっていう状況。MedicaidにしてもIRAのエネジークレジットにしてもこれ以上触って欲しくないって言う中庸派もいるんでこのまま法案が改訂されて下院全体を通るとは限らず、引き続き夜を徹した党内交渉が続くことになる。
Rules Committee
下院本会議投票の前の最後のステップとなるRules Committeeはナンと水曜日早朝の午前1時に招集が掛かってるっていうことなんで文字通り夜を徹する勢い。そしてナンと4人の侍のコアメンバーの2人と言えるChip Roy (R-TX)と Ralph Norman (R-SC)はRules Committeeのメンバーでもある。ただ、Rules Committeeでは数的に造反が2人までだったら通過させることができるのと、NormanはRules Committeeでは反対票は投じないってMike Johnsonに伝えたっていう話しもあり、Mike Johnson的には一旦はホッとしてんのかな。ただ仮にRules Committeeを通っても本会議が控えてる。共和党下院議長って寿命が縮まるような状況ばかり。今日の午後は共和党上院に下院の状況報告っていうイベントも入っていたとのこと。
トランプ登場
そんな中最後はトランプに登場してもらわないと収拾がつかないっていうことで、どのタイミングでMike Johnsonがトランプカードを切るかっていうタイミングが注目されていた。そしてその時がついに今日訪れ、午前8時半の下院共和党カンファレンスが行われるHC-5にトランプが乗り込んだ。Mike Johnsonや中庸派の期待としてはDeficit Hawk派を制して欲しいっていうものだったはずだけど、間が悪いことに(このタイミングは偶然じゃないっていう説もあるけど)Moody’sが米国債の格付けをトップから一段階引き下げて、ますますDeficit Hawk派の懸念の火に油を注ぐことになった。
で、トランプはDeficit Hawk派、SALT派、中庸派全員に「いつまでもごちゃごちゃ言ってないで今の法案をさっさと可決させるように」ってはっぱを掛けた。Deficit Hawk派には「Medicaidとか触ってる場合じゃない(Don’t fxxx around with Medicaid)」とかSALT派のMike Lawler(R-NY)には更に厳しく「お前の選挙区のことは俺が誰よりも良く知ってるが、SALTが理由で落選するくらいだったらどっちにしても落選する」って全員の前で手厳しいコメントがあったそうだ。さすが大統領。また、いつまでも反対してる者には次の選挙でPrimary Challenge(本選挙前に党の候補を選ぶ手続きで対抗馬をあてられること)っていう罰も待ってるリスクもちらつかせたっていう話しだ。
そんな訳で間もなく午前1時のRules Committee開始だけど、ちょうどNYCに戻ってしまったしC-SPANのライブ見てる場合じゃないね。明日に掛けてどうなるでしょうか。
今日は簡単に速報でした。
Saturday, May 17, 2025
Section 899下院法案バージョン
OBBB
下院法案のMega-Billは「One Big Beautiful Bill(OBBB)」って法案に名称が付されたけど、そんなMega-Billは結局、金曜日にBudget Committeeをクリアすることができなくて、再度日曜日の午後10時に再投票予定。Budget Committeeって本来、下院に11存在するCommitteeがMark-upした各法案を文字通りMega-Billに取りまとめる手続き的なステップを踏むところなんで、ここで躓くっていうのはチョッとBlack Eye。この躓きは前回のポスティングで触れたSALT派の不満もさることながら、SALT派と対極の立場にあるDeficit Hawk派の反逆による。Medicaidの就労義務導入やIRAエネジークレジットの段階的撤廃が2029年以降に先送りされてる点を問題視し、歳出減に対する規律のなさを理由に共和党Budget CommitteeメンバーのChip Roy (R-TX)、Josh Brecheen(R-OK)、Ralph Norman(R-SC)、Andrew Clyde(R-GA)の4名が反対に回った。
実は手続き的には更にもう1人のBudget Committee共和党議員Lloyd Smucker (R-PA) も反対票を投じてるんだけど、Smuckerの反対票は法案そのものに対する反対ではなくBudget Committeeとして再考のチャンスを温存するためって発言している。これは、下院規則では再考後の再投票は反対票を投じた議員のみが要求できるため。Smuckerは反対票を投じることでその後の交渉後に再度投票する機会を温存したことになる(結果、日曜日の午後10時の再投票)。
4月のBudget Resolutionの下院投票時からRoyやNormanは歳出減が手緩い点に懸念を表明してたけど、結局その時点では賛成票を投じ、当時反対に回ったのはBudget Committee外の共和党議員Thomas Massie(R-KY)とVictoria Spartz(R-IN)の2名だった。したがって仮にBudget Committeeとその際の手続きになるRules Committeeを通過したとしても3名を超える造反で可決が阻まれる下院全体の投票は例によってドラマチック。仮に何らかの妥協案に合意される場合、Budget Committeeそのものに法案を改訂する権限はないはずだから、その次のステップとなるRules Committeeで下院のフロア投票用の最終法案に反映されることになる。日曜日から週明けはどんな展開になるでしょうか。
Section 899下院法案バージョン
で、下院法案にSection 899(「下院法案Section 899」)が盛り込まれた点は前々回の「下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」」で速報した。
下院法案Section 899は以前から「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案」シリーズで触れてきたJason Smithの「Defending American Jobs and Investment Act」(従来のsection 899法案)をベースにしてるけど、いくつか特筆すべき変更が加えられている。これらの変更はランダムなものではなく、Budget Reconciliationに基づいた可決を視野に入れている、また財務省と密に連携し財務省の交渉スタンス(後述)と整合性を図った結果って考えられる。
UTPR・DST・ DPTは自動的に対抗規則対象
まずSection 899のタイトルだけど従来のsection 899法案の「Enforcement of Remedies Against Extraterritorial Taxes and Discriminatory Taxes」から「Enforcement of Remedies Against Unfair Foreign Taxes」に変更されている。以前触れた通り、条文のタイトルそのものには法的拘束力や意味はない。とは言え、条文を読むと下院法案Section 899ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesはそれらを含む総称となる「Unfair Foreign Taxes」に統一されている。下院法案section 899では、Unfair Foreign Taxesを持つ国を「Discriminatory Foreign Country」とし、そんな問題国の市民、法人等に付加税を課す、また問題国の米国子会社にはEstes法案で規定されていたSuper-BEATを適用するとしている。Super-BEATの元々の法案に関しては「ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出」で簡単に触れてるんでそちらもぜひ。
で、ここがパンチラインのひとつだけど、下院法案section 899では「UTPR、DST、DPT」の3つはそれ以上の検討は不要で自動的にUnfair Foreign Taxesに当たるって特定して明言してる。すなわち従来の法案ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを条文で定義し、その定義だったら当然それらにUTPRは含まれるねっていう結論に至ったり、財務長官がExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを持つ国がどこかとか判断することになってたけど、下院法案Section 899ではUTPR、DST、DPTに関してはそんな手続きや検討は一切不要で、これらの3つの問題措置のいずれかを持っている国はUnfair Foreign Taxesを持っている国になり、その国はDiscriminatory Foreign Countryとなり、section 899発動対象国となる。
さらにUTPR、DST、DPT以外の税制に関しては従来のsection 899法案通り、財務長官がどんな税制がExtraterritorial TaxesやDiscriminatory Taxesに当たるかを特定することができる。Extraterritorial TaxesおよびDiscriminatory Taxesの定義は従来のsection 899法案のままだけど、以前はExtraterritorialの定義はUTPRそのものだね、とか話してたけどUTPRはそんな判断を待たずして自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されるんでUTPRに関してこの定義はMoot。Discriminatoryに関しても同様にDSTは自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されてるんでMootで、後は他の類似課税が潜在的に問題になる。
IIRとかは?米国財務省の対ピラー2「Side-by-side」ポジション
IIRやQDMTは名指しされてないけど、米国財務省のピラー2に対するポジションは米国は米国で主権国家として自国の税法を米国市民が選挙で選んだ議会が決め、他国は他国でピラー2を入れるんだったらそれは勝手だけど「ピラー2は米国法人および他国の米国子会社には一切影響があってはならない」っていう「Side-by-side」アプローチ。この点から米国子会社に対する他国のIIRは問題税制のひとつになってもおかしくない。またQDMTに関してはOECDが勝手にルールを決めて各国に強制している点は受け入れられないとし、各国が主権国家して独自の法律を入れる点を認めるべきってしてる。これは具体的にはOECDはQDMTがGILTIに優先する、すなわち米国でGILTI対象になっているCFCに関してGILTI税負担をプッシュダウンする前にQDMTを計算することって強制して、各国の国家主権を侵害して米国を不利にしてる点を問題視してるものと思われる。
これらの米国財務省のスタンスは財務省Deputy Assistant Secretary for International Tax AffairsのRebecca Burch(この前までEYのNational Taxに居ました!)が再三明言していて、単なるGILTIのGrandfatherやUTPRのTransition Safe Harborの時限延長のような小手先対応では不十分としている。GILTIがこの先どんな風に変更されようと、13.125%のままだろうが全世界ブレンディングだろうが、米国が先にGILTIを策定し、CFC課税だって1962年から他国に先駆けて適用している等、自国なりにProfit Shiftingを取り締まってるんだから、それ以上、米国法人や米国子会社にピラー2などを適用する必要はないし、そんな動きは認められないっていうもの。GILTIは全世界ブレンディングだけど、FTCの枠計算時の費用配賦・案分法やQBAIに基づく減額はOECDよりも不利な規定って考えられる。これらの点をOECDやEUにもちゃんと理解してもらわないと…っていう認識もあるだろう。Rebecca Burchのこれらのスタンスは、財務省Assistant Secretary for Legislative Affairs任命確認待ちで現時点ではCounselor to the Secretaryに当たるDerek Theurer も同じコメントを出している。
Rebecca Burchは、いずれにしてもUTPRのSafe Harborは2025年までのはずだから、今年中にはピラー2は米国に何の影響もない点が明確にならないといけないとしている。
これらの発言から財務省・下院は一丸となってピラー2の米国企業への適用は一切認めないっていうスタンスが明らかになっている。ちなみに米国では、実は下院法案が歳入源が欲しいにもかかわらずGILTI税率が2026年から16%に引き上げられる現行法を改訂してまで13.125%を保ってるのはピラー2の15%に対する不快感表明っていう噂があるほどだ。
米国多国籍企業からは、自国企業のことを第一に考えてくれている財務省・議会の強固な対ピラー2姿勢を高く評価する声が多い。Microsoft、J&J等のTax Directorがこれらの対応は合理的でありがたいってカンファレンスでコメントしたと報道されている。選挙後、ピラー2に対するプッシュバックをしてくれる点は想定の範囲内だったけど、Derek TheurerやRebecca Burchのポジションは期待を上回るものと受け止められてるように思う。
財務長官リストアップ・相手国との交渉手続き要件撤廃
上述のUnfair Foreign Taxesの定義変更と整合性を持たせるため、従来の899法案で規定されていた「財務省長官による問題国のリストアップ、議会への報告、問題国への告知・交渉」にかかわる規則は撤廃されている。この変更により、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は財務省の今後の交渉時のレバレッジを確保する目的ばかりでなく、財務長官による交渉を待ってたり、どの税制がExtraterritorialやDiscriminatory Taxかっていう点が明確じゃないと歳入効果が図り難く「Scoring」困難って位置付けられてBudget reconciliationに基づく法案対象外ってキックアウトされるリスクに対応した側面がある。ちなみに下院法案ではsection 899の歳入効果はBudget Windowの10年間で$116Bと推定されている。
で、他にも下院法案section 899は従来のsection 899との比較で条約の低減税率と付加税の関係や外国政府(SWF等)の取り扱いに関してアップデートがあるんでこれらは、下院法案section 899に合体されたSuper-BEATと共に次回。その時点で下院法案の審議状況もね。
下院法案のMega-Billは「One Big Beautiful Bill(OBBB)」って法案に名称が付されたけど、そんなMega-Billは結局、金曜日にBudget Committeeをクリアすることができなくて、再度日曜日の午後10時に再投票予定。Budget Committeeって本来、下院に11存在するCommitteeがMark-upした各法案を文字通りMega-Billに取りまとめる手続き的なステップを踏むところなんで、ここで躓くっていうのはチョッとBlack Eye。この躓きは前回のポスティングで触れたSALT派の不満もさることながら、SALT派と対極の立場にあるDeficit Hawk派の反逆による。Medicaidの就労義務導入やIRAエネジークレジットの段階的撤廃が2029年以降に先送りされてる点を問題視し、歳出減に対する規律のなさを理由に共和党Budget CommitteeメンバーのChip Roy (R-TX)、Josh Brecheen(R-OK)、Ralph Norman(R-SC)、Andrew Clyde(R-GA)の4名が反対に回った。
実は手続き的には更にもう1人のBudget Committee共和党議員Lloyd Smucker (R-PA) も反対票を投じてるんだけど、Smuckerの反対票は法案そのものに対する反対ではなくBudget Committeeとして再考のチャンスを温存するためって発言している。これは、下院規則では再考後の再投票は反対票を投じた議員のみが要求できるため。Smuckerは反対票を投じることでその後の交渉後に再度投票する機会を温存したことになる(結果、日曜日の午後10時の再投票)。
4月のBudget Resolutionの下院投票時からRoyやNormanは歳出減が手緩い点に懸念を表明してたけど、結局その時点では賛成票を投じ、当時反対に回ったのはBudget Committee外の共和党議員Thomas Massie(R-KY)とVictoria Spartz(R-IN)の2名だった。したがって仮にBudget Committeeとその際の手続きになるRules Committeeを通過したとしても3名を超える造反で可決が阻まれる下院全体の投票は例によってドラマチック。仮に何らかの妥協案に合意される場合、Budget Committeeそのものに法案を改訂する権限はないはずだから、その次のステップとなるRules Committeeで下院のフロア投票用の最終法案に反映されることになる。日曜日から週明けはどんな展開になるでしょうか。
Section 899下院法案バージョン
で、下院法案にSection 899(「下院法案Section 899」)が盛り込まれた点は前々回の「下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」」で速報した。
下院法案Section 899は以前から「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案」シリーズで触れてきたJason Smithの「Defending American Jobs and Investment Act」(従来のsection 899法案)をベースにしてるけど、いくつか特筆すべき変更が加えられている。これらの変更はランダムなものではなく、Budget Reconciliationに基づいた可決を視野に入れている、また財務省と密に連携し財務省の交渉スタンス(後述)と整合性を図った結果って考えられる。
UTPR・DST・ DPTは自動的に対抗規則対象
まずSection 899のタイトルだけど従来のsection 899法案の「Enforcement of Remedies Against Extraterritorial Taxes and Discriminatory Taxes」から「Enforcement of Remedies Against Unfair Foreign Taxes」に変更されている。以前触れた通り、条文のタイトルそのものには法的拘束力や意味はない。とは言え、条文を読むと下院法案Section 899ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesはそれらを含む総称となる「Unfair Foreign Taxes」に統一されている。下院法案section 899では、Unfair Foreign Taxesを持つ国を「Discriminatory Foreign Country」とし、そんな問題国の市民、法人等に付加税を課す、また問題国の米国子会社にはEstes法案で規定されていたSuper-BEATを適用するとしている。Super-BEATの元々の法案に関しては「ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出」で簡単に触れてるんでそちらもぜひ。
で、ここがパンチラインのひとつだけど、下院法案section 899では「UTPR、DST、DPT」の3つはそれ以上の検討は不要で自動的にUnfair Foreign Taxesに当たるって特定して明言してる。すなわち従来の法案ではExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを条文で定義し、その定義だったら当然それらにUTPRは含まれるねっていう結論に至ったり、財務長官がExtraterritorial Taxes and Discriminatory Taxesを持つ国がどこかとか判断することになってたけど、下院法案Section 899ではUTPR、DST、DPTに関してはそんな手続きや検討は一切不要で、これらの3つの問題措置のいずれかを持っている国はUnfair Foreign Taxesを持っている国になり、その国はDiscriminatory Foreign Countryとなり、section 899発動対象国となる。
さらにUTPR、DST、DPT以外の税制に関しては従来のsection 899法案通り、財務長官がどんな税制がExtraterritorial TaxesやDiscriminatory Taxesに当たるかを特定することができる。Extraterritorial TaxesおよびDiscriminatory Taxesの定義は従来のsection 899法案のままだけど、以前はExtraterritorialの定義はUTPRそのものだね、とか話してたけどUTPRはそんな判断を待たずして自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されるんでUTPRに関してこの定義はMoot。Discriminatoryに関しても同様にDSTは自動的にUnfair Foreign Taxesに区分されてるんでMootで、後は他の類似課税が潜在的に問題になる。
IIRとかは?米国財務省の対ピラー2「Side-by-side」ポジション
IIRやQDMTは名指しされてないけど、米国財務省のピラー2に対するポジションは米国は米国で主権国家として自国の税法を米国市民が選挙で選んだ議会が決め、他国は他国でピラー2を入れるんだったらそれは勝手だけど「ピラー2は米国法人および他国の米国子会社には一切影響があってはならない」っていう「Side-by-side」アプローチ。この点から米国子会社に対する他国のIIRは問題税制のひとつになってもおかしくない。またQDMTに関してはOECDが勝手にルールを決めて各国に強制している点は受け入れられないとし、各国が主権国家して独自の法律を入れる点を認めるべきってしてる。これは具体的にはOECDはQDMTがGILTIに優先する、すなわち米国でGILTI対象になっているCFCに関してGILTI税負担をプッシュダウンする前にQDMTを計算することって強制して、各国の国家主権を侵害して米国を不利にしてる点を問題視してるものと思われる。
これらの米国財務省のスタンスは財務省Deputy Assistant Secretary for International Tax AffairsのRebecca Burch(この前までEYのNational Taxに居ました!)が再三明言していて、単なるGILTIのGrandfatherやUTPRのTransition Safe Harborの時限延長のような小手先対応では不十分としている。GILTIがこの先どんな風に変更されようと、13.125%のままだろうが全世界ブレンディングだろうが、米国が先にGILTIを策定し、CFC課税だって1962年から他国に先駆けて適用している等、自国なりにProfit Shiftingを取り締まってるんだから、それ以上、米国法人や米国子会社にピラー2などを適用する必要はないし、そんな動きは認められないっていうもの。GILTIは全世界ブレンディングだけど、FTCの枠計算時の費用配賦・案分法やQBAIに基づく減額はOECDよりも不利な規定って考えられる。これらの点をOECDやEUにもちゃんと理解してもらわないと…っていう認識もあるだろう。Rebecca Burchのこれらのスタンスは、財務省Assistant Secretary for Legislative Affairs任命確認待ちで現時点ではCounselor to the Secretaryに当たるDerek Theurer も同じコメントを出している。
Rebecca Burchは、いずれにしてもUTPRのSafe Harborは2025年までのはずだから、今年中にはピラー2は米国に何の影響もない点が明確にならないといけないとしている。
これらの発言から財務省・下院は一丸となってピラー2の米国企業への適用は一切認めないっていうスタンスが明らかになっている。ちなみに米国では、実は下院法案が歳入源が欲しいにもかかわらずGILTI税率が2026年から16%に引き上げられる現行法を改訂してまで13.125%を保ってるのはピラー2の15%に対する不快感表明っていう噂があるほどだ。
米国多国籍企業からは、自国企業のことを第一に考えてくれている財務省・議会の強固な対ピラー2姿勢を高く評価する声が多い。Microsoft、J&J等のTax Directorがこれらの対応は合理的でありがたいってカンファレンスでコメントしたと報道されている。選挙後、ピラー2に対するプッシュバックをしてくれる点は想定の範囲内だったけど、Derek TheurerやRebecca Burchのポジションは期待を上回るものと受け止められてるように思う。
財務長官リストアップ・相手国との交渉手続き要件撤廃
上述のUnfair Foreign Taxesの定義変更と整合性を持たせるため、従来の899法案で規定されていた「財務省長官による問題国のリストアップ、議会への報告、問題国への告知・交渉」にかかわる規則は撤廃されている。この変更により、UTPR、DST、DPTを持っている国は財務長官との交渉等のチャンスなくsection 899が可決されると対抗措置の対象になる。この変更は財務省の今後の交渉時のレバレッジを確保する目的ばかりでなく、財務長官による交渉を待ってたり、どの税制がExtraterritorialやDiscriminatory Taxかっていう点が明確じゃないと歳入効果が図り難く「Scoring」困難って位置付けられてBudget reconciliationに基づく法案対象外ってキックアウトされるリスクに対応した側面がある。ちなみに下院法案ではsection 899の歳入効果はBudget Windowの10年間で$116Bと推定されている。
で、他にも下院法案section 899は従来のsection 899との比較で条約の低減税率と付加税の関係や外国政府(SWF等)の取り扱いに関してアップデートがあるんでこれらは、下院法案section 899に合体されたSuper-BEATと共に次回。その時点で下院法案の審議状況もね。
Wednesday, May 14, 2025
下院法案アッという間に最終化
5月12日月曜日の夜にWays and Means Committeeが公表した下院税制改正法案389ページは13日午後から14日の朝まで徹夜のMark-upを経て最終化された。1~2週間前の状態に比べると電光石火みたいな進展。後述のSALT関係の確執がなんとかなればNext StepはEnergy and Commerce、Agricultureその他のCommitteeによるMark-upを含む「Mega-Bill」法案が19日にはRules Committeeに回り、直後に下院全体によるフロア採決になる。うまく行けばMike Johnsonが言っていた通りメモリアルデー(5月29日)までに下院可決で後は上院っていうタイムラインが実現することになる。
Mark-upでそれなりの修正があるんではって言われてたけど結果はNo Change。すなわち12日の389ページがそのままWays and Means Committeeによる最終Mark-upバージョンになった。カリフォルニアみたいなNYCで「どうせ修正あるしね」って思って軽く読んでたけどそのまま最終化してしまったんでもっと細かく読まないとね。ちょうど本当に西海岸に寄ってるんでNYCの気候は気にせずに数日フォーカスします。
下院全体採決とハードル
ここに来て下院共和党内で最後の争点になってるのがSALT Cap。以前もチラッと触れたけど、州個人所得税を連邦所得税を計算する際にどれだけ損金算入できるかっていう争点。カリフォルニアとかニューヨークとか規律に欠ける歳出を繰り返す州は当然税金が高いけど、それを連邦所得税で費用化するっていうことは全米の市民が高税率州の税金の2~3割を間接負担していることになる。所得税ゼロで州財政をManageしてるフロリダやテキサス州を含む9州の市民からしてみると無駄使いやBureaucracyの激しい高税率州のコストを強制的に間接負担させられるのは釈然としない。一方で高税率州の有権者に支えられるカリフォルニアやニューヨーク州の共和党議員は地元で突き上げられてるから最大限の費用化を主張する。いつも触れてる通り下院は2年毎の選挙で全議席改訂なんで接戦Districtの議員は必死だ。
TCJAでは州個人所得税(正確には州および市や学校区等の所得税、所得税がない管轄区の州民は代わりに州および郡等のSales Tax、プラス不動産税や資産の価値に基づく動産税を含む)の個別控除を$10,000(MFS申告の場合は$5,000)に制限した。これを昔みたいに制限なしにして欲しいっていうのが高税率州議員たち、いわゆるSALT Caucus(SALT派?)の希望。無制限化は歳入インパクトが大き過ぎるし他州の議員の意見もあるし、下院最終法案では妥協案として2026年からSALT Capを$30,000(MFS申告の場合は$15,000)に恒久引き上げ。ただMAGI(MAGAじゃないからね!)って言われる修正AGI(課税所得総額から特定のAbove-the-line控除を差し引いた額)が$400,000(MFS申告の場合は$200,000)を超過する場合、超過額の20%に関して恩典がフェーズアウト。
下院最終法案のこの引き上げや所得ベースのフェーズアウトはSALT派からすると「侮辱」テリトリーって言われているんでSALT派と下院リーダーシップは引き続き秘密会(Closed door meeting)や15日に予定されてる下院共和党カンファレンスで駆け引きを続ける予定。したがって法案は最終化されたとは言え、SALT部分はまだセンシティブな状態。下院法案のコストは10年のBudget Windowで$3.7~3.8Tって言われてて(逆にあれだけ全て盛り込んで$4T行ってないのが意外?)、Ways and Means以外のCommitteeによる歳出減はMedicaidで躓いてるんで$2T行かないだろうから、Ways and Meansに許容されるコストは$4TでCapされる。となると他の歳入減を見つけない限りSALT Capのこれ以上の緩和の枠はそんなに大きく残ってないよね。
小さな政府が党是の共和党で、しかもこれだけの内容を盛り込んだMega-Billの最後の争点がSALTっていうのもなんだかな~って感じはあるんだけどね。District単位の利益の問題だからしょうがないね。
上院の反応は?
SALT派と和解できて下院を通過した後は上院。既にDeficit HawkのRon Johnson(R-Wis)は歳出減が手ぬるいみたいなコメントを出してるし、逆にいつものスタンス的には意外なJosh Hawley(R-Mo)はMedicaidの就労義務に懸念を持ってたりするんで上院は上院でひと悶着あるだろう。いずれにしても上院は他にも結構な修正を入れるだろうから、修正版が上院で賛同を得られたとしても今度は修正後バージョンが下院の各派に受け入れられ、両院一致の法律にできるかどうかが争点になる。
Section 899
正式に下院法案の一部を構成することになったSection 899。昨日触れた通りUTPR対抗Estes法案のSuper-BEATも含まれる総合的な対抗条文になってる。下院法案で最終化されている899に関しては以前からの899ポスティングのラップアップも兼ねて次のポスティングで。その後は法人関係で関心が高いであろう即時償却や米国内R&D支出等に関して。
Mark-upでそれなりの修正があるんではって言われてたけど結果はNo Change。すなわち12日の389ページがそのままWays and Means Committeeによる最終Mark-upバージョンになった。カリフォルニアみたいなNYCで「どうせ修正あるしね」って思って軽く読んでたけどそのまま最終化してしまったんでもっと細かく読まないとね。ちょうど本当に西海岸に寄ってるんでNYCの気候は気にせずに数日フォーカスします。
下院全体採決とハードル
ここに来て下院共和党内で最後の争点になってるのがSALT Cap。以前もチラッと触れたけど、州個人所得税を連邦所得税を計算する際にどれだけ損金算入できるかっていう争点。カリフォルニアとかニューヨークとか規律に欠ける歳出を繰り返す州は当然税金が高いけど、それを連邦所得税で費用化するっていうことは全米の市民が高税率州の税金の2~3割を間接負担していることになる。所得税ゼロで州財政をManageしてるフロリダやテキサス州を含む9州の市民からしてみると無駄使いやBureaucracyの激しい高税率州のコストを強制的に間接負担させられるのは釈然としない。一方で高税率州の有権者に支えられるカリフォルニアやニューヨーク州の共和党議員は地元で突き上げられてるから最大限の費用化を主張する。いつも触れてる通り下院は2年毎の選挙で全議席改訂なんで接戦Districtの議員は必死だ。
TCJAでは州個人所得税(正確には州および市や学校区等の所得税、所得税がない管轄区の州民は代わりに州および郡等のSales Tax、プラス不動産税や資産の価値に基づく動産税を含む)の個別控除を$10,000(MFS申告の場合は$5,000)に制限した。これを昔みたいに制限なしにして欲しいっていうのが高税率州議員たち、いわゆるSALT Caucus(SALT派?)の希望。無制限化は歳入インパクトが大き過ぎるし他州の議員の意見もあるし、下院最終法案では妥協案として2026年からSALT Capを$30,000(MFS申告の場合は$15,000)に恒久引き上げ。ただMAGI(MAGAじゃないからね!)って言われる修正AGI(課税所得総額から特定のAbove-the-line控除を差し引いた額)が$400,000(MFS申告の場合は$200,000)を超過する場合、超過額の20%に関して恩典がフェーズアウト。
下院最終法案のこの引き上げや所得ベースのフェーズアウトはSALT派からすると「侮辱」テリトリーって言われているんでSALT派と下院リーダーシップは引き続き秘密会(Closed door meeting)や15日に予定されてる下院共和党カンファレンスで駆け引きを続ける予定。したがって法案は最終化されたとは言え、SALT部分はまだセンシティブな状態。下院法案のコストは10年のBudget Windowで$3.7~3.8Tって言われてて(逆にあれだけ全て盛り込んで$4T行ってないのが意外?)、Ways and Means以外のCommitteeによる歳出減はMedicaidで躓いてるんで$2T行かないだろうから、Ways and Meansに許容されるコストは$4TでCapされる。となると他の歳入減を見つけない限りSALT Capのこれ以上の緩和の枠はそんなに大きく残ってないよね。
小さな政府が党是の共和党で、しかもこれだけの内容を盛り込んだMega-Billの最後の争点がSALTっていうのもなんだかな~って感じはあるんだけどね。District単位の利益の問題だからしょうがないね。
上院の反応は?
SALT派と和解できて下院を通過した後は上院。既にDeficit HawkのRon Johnson(R-Wis)は歳出減が手ぬるいみたいなコメントを出してるし、逆にいつものスタンス的には意外なJosh Hawley(R-Mo)はMedicaidの就労義務に懸念を持ってたりするんで上院は上院でひと悶着あるだろう。いずれにしても上院は他にも結構な修正を入れるだろうから、修正版が上院で賛同を得られたとしても今度は修正後バージョンが下院の各派に受け入れられ、両院一致の法律にできるかどうかが争点になる。
Section 899
正式に下院法案の一部を構成することになったSection 899。昨日触れた通りUTPR対抗Estes法案のSuper-BEATも含まれる総合的な対抗条文になってる。下院法案で最終化されている899に関しては以前からの899ポスティングのラップアップも兼ねて次のポスティングで。その後は法人関係で関心が高いであろう即時償却や米国内R&D支出等に関して。
Monday, May 12, 2025
下院法案ドラフト公表「P2対抗法案899・Super-BEAT共に入選」
Wow。金曜日の夜に28ページのSkinny Versionを読み終えてまるでカリフォルニアみたいな天気のNYCをEnjoyしかけた矢先に389ページに上るWays and Means Committeeの本番税制改正ドラフトが公表された。明日(こちらの火曜日)の午後から夜を徹したMark-upに入るそう(その際に変更可能性は十分にあり)。
う~ん、これは…。もちろん今ここで詳細を語るには至ってないけど、しばらく特集してたピラー2(特にUTPR)とDST対抗法案の899とSuper-BEATが合体されて一つのsection 899として堂々ランクイン。内容は今までのポスティングでも触れたものから若干アップデートがあるみたいだけど趣旨は同じ。凄い。上院での運命は分かんないけどね。
他に目につくのは…、IRAのエネジークレジットは撤廃。とは言え相当な猶予期間が設けられてる。こんな長期の猶予期間では手緩いって既にDeficit Hawk派からはクレーム(?)が寄せられている。EVクレジットは原則今年で最後。適格の人は今年買わないとね!モデルYも新しくなったし、モデル2が近々出るって言う噂もあるし。今年中にはFSDがSuperviseナシになるっていうことで完全に自動運転だし。Carbon-wrapのMotor搭載したモデルSのPlaidバージョンとか究極将来のRoadsterとかいいけどクレジットとは無縁の世界だね。
国内R&D支出の損金算入復活。支払利息損金算入制限のEBITDAベース化も復活。
非居住者に対する送金に5%のExcise tax?とか聞いたことない条文がいきなり入っている。チップ、残業の非課税も条件付きとは言え今度こそ盛り込まれてる。SALT Capは$30Kだ。大学のEndowmentとかには厳しい規定が…。自動車ローンの金利が控除対象だったりおとといのSkinny Versionと合わせるとトランプが言ってたことが結構盛り込まれてる。
まだまだこれから読解が必要なんで取り合えずって感じでした。
う~ん、これは…。もちろん今ここで詳細を語るには至ってないけど、しばらく特集してたピラー2(特にUTPR)とDST対抗法案の899とSuper-BEATが合体されて一つのsection 899として堂々ランクイン。内容は今までのポスティングでも触れたものから若干アップデートがあるみたいだけど趣旨は同じ。凄い。上院での運命は分かんないけどね。
他に目につくのは…、IRAのエネジークレジットは撤廃。とは言え相当な猶予期間が設けられてる。こんな長期の猶予期間では手緩いって既にDeficit Hawk派からはクレーム(?)が寄せられている。EVクレジットは原則今年で最後。適格の人は今年買わないとね!モデルYも新しくなったし、モデル2が近々出るって言う噂もあるし。今年中にはFSDがSuperviseナシになるっていうことで完全に自動運転だし。Carbon-wrapのMotor搭載したモデルSのPlaidバージョンとか究極将来のRoadsterとかいいけどクレジットとは無縁の世界だね。
国内R&D支出の損金算入復活。支払利息損金算入制限のEBITDAベース化も復活。
非居住者に対する送金に5%のExcise tax?とか聞いたことない条文がいきなり入っている。チップ、残業の非課税も条件付きとは言え今度こそ盛り込まれてる。SALT Capは$30Kだ。大学のEndowmentとかには厳しい規定が…。自動車ローンの金利が控除対象だったりおとといのSkinny Versionと合わせるとトランプが言ってたことが結構盛り込まれてる。
まだまだこれから読解が必要なんで取り合えずって感じでした。
Saturday, May 10, 2025
「Mega-Bill」の議会審議動向・下院税制改正案「Skinny Version」公表
4月10日に両院でBudget resolutionが可決されてBudget reconciliationに基づく法案審議に弾みが付いて早くもひと月。この一か月間、共和党内の異なる派のPriority差異が浮き彫りに。主に下院内のDeficit Hawk派と中庸派、そして下院と上院間の意見調整が困難を極める結果になっている。ただこれらは最初からみんなが言ってた通りの展開だから、これをどう調整するかが各院リーダーのJohnson、Thune、税制改正法案の各院責任者のSmith、Crapo、そして行政府からは財務長官Bessent、Nattional Economic Councilの Hassett、いわゆるBig-6の腕の見せ所。また議員たちもMAGA共和党は米国市民の信任を得たんだから、相反する利益があるとしても各派・両院妥協するところは妥協して市民の期待に応えて成長志向の経済ポリシーを早期に法制化するっていうBig Pictureを忘れずに一枚岩になれるかどうかが試される最重要なFinal Phaseに入ってる。
以前のポスティングでも触れた通り、2026年の中間選挙を考えると今年の初夏には税制改正が通り、2025年後半から2026年前半に掛けて有権者がその恩典を実感する必要がある。中間選挙で全議席が入れ替わる下院は特にこの点にはセンシティブだ。タイミングに敏感な下院の議長JohnsonはMemorial Day(5月29日)を目標に全て可決って言ってたけど、3分の1の議席しか改選されない上院は夏までには…って下院の視点からすると少し呑気なタイムラインに言及してた。既に5月に入ってるんで財務長官のBessentは独立記念日のJuly 4thまでには達成っていう読み。結果、現時点のコンセンサス・落としどころとしてはJuly 4thってことになってる。それでも結構Aggressiveにいかないと難しい感はあるけど、逆に言えば党内派閥の意見は時間を掛けても変わらないんで結局どこかのタイミングで最大公約数的なJokerを切り札に一気に可決せざるを得ないんで、それが6月でも9月でも努力やPainは同じ気もするけどね。今年のJuly 4thは花火やバーベキューばかりでなく税制改正パッケージの解読Weekになるかな~。楽しみ?共和党だからまだ分かんないね。
Mega-Bill
4月10日のBudget resolutionでは税制、国境警備、国防、エネジー等全て一本のBudget reconciliationで制定する方向で最終化され、これはトランプがBig Beautiful Billって形容してたことから一般にもそう呼ばれていた。最近になってこの名称は長すぎるせいか、「Mega-Bill」って形容されるケースが目立ってきた。もちろん内容が多岐に亘るメガな法律っていう意味。SZA(「シィーザ」って読みます)のKill Billみたいで格好いいね!Kill Billって歌詞はチョッとダークだけど曲はいい。SZAと言えば今日(5月9日)たまたまニューヨークの(正確にはHudson River渡った向こうのNJの)MetLife Stadiumで屋外コンサートがあるけど空模様のかげんがイマイチで心配。ということで僕もこれからBig Beautiful BillはKill Bill、じゃなくてMega-Billって呼ぶことにします。
下院Committee Mark-up
下院では税法ドラフトの使命を帯びているWays and Means Committeeに先立ち、他のCommittee(下院には11のCommitteeがある)が各々割り当てられた計$1.5T~2Tの歳出減をどうやって捻出するかがフォーカス。以前のポスティングで触れた通り、下院向けのBudget Resolutionでは$2Tの歳出減が達成できない場合、未到達額分、Ways and Means Committeeに割り当てられている歳出増(すなわちTCJAの延長を含むネット減税額)が減額される。この仕組みからまずは歳出減をいくら達成できるかが判明しないと法案の税法部分を完成させることができない。
この週(米国の一般的な感覚では一週間は日曜日(7th day of the week)に終わるんで5月11日で終わる週のこと)で大概のCommitteeのMark-up(法案ドラフト)が明確になってきたんで来週(5月12日の週)からWays and Means CommitteeがMega-Billの一部を構成する税法部分のドラフト最終化に着手するっていう予定。で、その後、Memorial Day(5月26日)までに税法を含む下院バージョンのMega-Bill可決を目指すっていうタイムライン。で、それに先立ちWays and Means Committeeは噂通り「Skinny Version」って呼ばれる初期バージョンを5月9日金曜日夜に公開している。絶妙なタイミングの公開でFriday Nightが台無し?
下院税制改正法案Skinny Version
Skinny Versionはその名の通り「初めの一歩」に当たるShort Version。Mega-Bill全体がボックスセットだとすると、Skinny Versionはその中の一曲、しかもRadio Editみたいなサイズ。また物議を醸すWild Card規定は含まれてない。ただ、クロスボーダーに関してGILTI、FDII、BEATの現状維持(TCJAクリフの増税なし)が含まれてたんでWelcome。
面白いのはSubtitleが共通して「Make AmericanナントカAgain」ってMAGAテーマになってること。個人所得税の減税延長は「Make American Workers and Families Thrive Again」、GILTI、FDII、BEAT増税回避は「Make Rural America and Main Street Grow Again」, Medicare(Medicaidではない)の適格を市民やグリーンカード所有者に限定する部分は「Make America Win Again」っていう調子だ。
Skinny Version個人所得税関係
以前にも触れた通り、TCJAクリフの問題は「個人所得税」の減税が2025年を最後に失効してしまう点が最大の関心事だけど、Skinny Versionでは税率引き下げの恒久化やBracketの物価スライド調整とかのベーシック部分は含まれてる。人的控除がゼロって読めるんだけど実質撤廃?
上述の通りMega-Billは中間選挙に向けて一日も早く可決してその恩典を有権者が肌で感じる必要があるけど、Skinny Versionではその点に関する対処が見られる。まず、所得水準に基づくフェーズアウトを含む一定要件下で16歳以下の扶養子女に認められるChild Tax Credit(「CTC」)は従来の$1,000がTCJAで$2,000に増額されてたのを恒久化。しかも「2025年を含む」4年間の時限措置で更に$500上乗せで$2,500に増額(さすがにJD Vanceが選挙活動中に提唱してた$5,000じゃないけどね)。2025年から増額させるのは2025年の源泉徴収や2025年の申告を行う2026年初旬にその恩典が実感できるような配慮だろう。CTCを計上する納税者(既婚の場合は配偶者も)およびCTC適格の子女の全員がSocial Security Number(SSN)を所有していないといけない点も明記されてる。SSNは一般に市民、グリーンカード所有者、就労権のあるビザ所有者に交付される。ITINだけじゃダメってことだね。
また、標準控除(Standard Deduction)に関してもTCJAの増額が恒久化される。Standard DeductionってTCJA前は州税や不動産税が全額(総合的なフェーズアウトはあったけど)個別控除対象だったんでどちらかって言うと低所得者や州所得税のないFloridaやTexas州の納税者が利用することが多かった。TCJA増額前のStandard Deduction額は夫婦合算申告ベースで$12,700だったけど、これが一気に$30,000(2025年ベース)に増額されてた。TCJAは州税や不動産税の$10,000控除制限(後述)を導入したんで、Standard Deduction増額と相まってStandard Deductionを取る納税者が急増していた。Skinny VersionではTCJAの増額Standard Deductionを恒久化すると同時に2025年から4年間さらに$1,000~$2,000の時限増額を規定している。
もう一つ日本では馴染みは薄いだろうけど個人所得税に関して米国で注目されてるのが199Aのパススルー控除が2025年で失効するけどその温存有無。元々2017年のTCJAで法人税率が21%に引き下げられて、個人所得税は下がったとはいえ37%なんで、従来の法人vパススルーのEquationが大きく変わることになった。法人は主体レベルの法人税課税に加え株主が配当に課税されるんで二重課税だけど、2017年以前のように35%取られて残りの65%に23.8%(QDIなんで20%だけどオバマケア付加タックスで3.8%を想定)っていう連邦だけで実効税率50%強っていう状態から法人税率が21%に下がったんで二重課税だけど実効税率は39.8%になった。となるとパススルーで直接個人所得税対象になる37%との比較で、あんまり変わらないし法人が内部で資金を留保して再投資してる間はむしろ法人の方が有利?っていう新たなダイナミクスとなる。法人税率が21%に下がったのにパススルーはそのまま?っていう点の不整合を解消するため、2017年TCJAでは一定要件下でパススルーの所得に対し個人レベルで20%の想定控除が規定された。結果としてパススルー所得に対する実効税率は199A適格だと30%程度になる。ちなみにTCJA可決当時はパススルーモデルが法人モデルに変わるトレンドが生まれるんではっていうような話が聞かれたけど、体験的にパススルーから転換するケースは稀だった。民主党による法人税増税のリスクもあるし、パススルーは他の面でもフレキシブルだからね。Skinny Versionでは199Aを恒久化するばかりでなく、想定控除が20%から22%に引き上げられ、実効税率が1%弱下がってる。
Private CreditのBDCと199A
従来からREITのOrdinary Distributionが199A適格だったけど、Skinny Versionではプラスで税務上RIC区分を選択してるBusiness Development Companies(「BDC」)から受け取る「BDC Interest Dividend」も適格になる。BDCは40年投資法管轄の主体でLeverageやRelated Party取引に関して通常の40年投資法より軽めの規制下(って言っても40年投資法なんでPrivate Vehicleに比べたらかなりのRegulatory負荷)にある特別なタイプの主体。元々Retail投資家でもVenture CapitalやPrivate Equity同様のモデルに投資できるようにって制定された法律だけど、ここ何年もPrivate Creditに利用されるケースが増大してる。Skinny VersionではBDCのネット利子所得に帰する配当を199A適格としている。これは銀行による融資が容易ではない際にヘッジファンドとかのPrivate VehicleによるPrivate Credit提供に加え、BDCによるPrivate Creditの提供が急激に拡大してきた点を反映してMid-Marketへの融資をより活性化するための対策だろう。結構よく考えてるよね。Bessent財務長官は頻繁にメガバンクとそれ以外の銀行に対する異なる規制環境の必要性に言及し、Mid-Marketに対する融資拡大措置を推進しているけど、それのPrivate Credit版と言える。
ちなみにSkinny VersionのBDCのInterest Dividendが199A適格っていう取り扱いに先んじて同じような趣旨で米国外投資家によるPrivate Creditマーケットへの参入を促している法律が既に存在している。BDCって従来はRegulatory負荷が高すぎるんで、外国人LPから資金調達するPrivate CreditのスポンサーはPrivate Vehicleを利用するケースが圧倒的だったけど、単なるCo-InvestmentやSecondaryローンの取得ではなくローンをオリジネーション(多くのPrivate Creditがそう)するケースではファンドのストラクチャー的にどうしてもECIリスクが付きまとう。
Regulatory負荷に関して、大手スポンサーはいずれにしても40年投資法対象のMutual FundやETFをマネージしてるんで、そのノウハウを活かしてRegulatoryのチャレンジを克服し、Private CreditにもBDCをWrapperとして利用するトレンドが加速してきた。Regulatoryのハードルを越えてBDCを活用することができると、法人形態を採択して一定要件を満たすと税務上のRIC区分の選択ができて主体レベルで課税がない(細部は異なるけど概念はREITに似てる)。BDC自体はパススルーでもいいんだけど、RICになるには税務上法人区分じゃないといけないんでRICのBDCは外国人投資家の視点からは自ずとブロッカーになる。分配はBefore Taxで、更に2001年の税制改正(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 (「EGTRRA」)でBDCの利子所得がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たす場合、Look-throughみたいにその利子所得に帰するBDCの配当が源泉税免除になっている。上述の通り通常の40年投資法より関連者間取引の規定が若干緩和されてるんでExternally Managedの(つまりファンドスポンサーが組成する)BDCは同じスポンサーがManageするファンドコンプレック内の複数のファンドやWrapperからローンを提供することが可能っていうファンドスポンサーにとっては実に有益なストラクチャーを取ることができる。SECによるExempt Reliefにはこの手の緩和が多く開示されてる。これらの理由でRegulatory負荷を克服できる場合、BDCはPrivate CreditのVehicleとしてはBest of all worldみたいな存在だ。一点注意点は40年投資法Vehicleなんで仮に「Private BDC」(すなわち資金調達をPrivateに行うタイプのBDC)でも財務諸表は上場企業同様に常にSECにファイルしないといけない。この点は真にPrivateのPrivate REITとは異なる。
Skinny Versionに戻るけど、BDCのネット利子を源泉とする配当が199A適格になるとPrivate Credit戦略のPublic BDC(証券取引所で流通または取引所では流通はしてないけど資金調達をPublicにしてる場合)にRetailの投資がし易くなり、Mid-Marketへの融資が活性化されるような仕組み。
SALTは?
ちなみに個人所得税に関して大きな争点になっている州税の連邦課税所得計算時の損金算入制限緩和(SALT問題。SALTはお塩じゃなくてState and Local Taxです)は行先不明なんで未だ盛り込まれてない。Skinny Versionだから無難なところから始めの一歩だね…。
BEAT・クロスボーダー
Skinny Versionに先立ち、上院ではGILTI、FDII、BEATの原則現状維持に加えてCFC Look-through規定の恒久化、GILTIバスケットのFTC計算時の米国側の費用配賦ルール改訂(FTCが取りやすくなる)、等を盛り込んだ詳細法案がつい先日別途提出されたけど、Skinny VersionでもGILTIおよびFDIIの税率(理論税率13.125%)が恒久化されている。
で、クロスボーダーの規定の運命の中でも日本企業にとって関心が高いのはBEAT。特に関税対策の必要性が高まる今日この頃、製品対価からIP価値をDe-bundleしたりするとロイヤルティがBEAT対象になるの?とか、BEAT対象になるリスクがある場合の定量的なインパクト、とかの検討をすることになるんでその重要性は自ずと高まる傾向にある。BEATは税制改正で手当てされないと2026年以降かなり厳しいものになるからね。具体的にはBEATミニマム税計算時の税率が10%から12.5%(銀行と証券ディーラーは11%から13.5%)に引き上げられるのに加え、こっちの方のダメージが大きいことが多いと思うけど、BEAT暫定税額と通常法人税の比較をする際に、通常法人税はR&Dクレジットを含む全てのクレジットをマイナスした後の数字を使うようになる。現状は一定の制限下、R&D、Low Income Housing、エネジークレジットはマイナスする前の数字を比較対象にできるんで通常法人税額が高く見え、BEATミニマム税が低くなる。Skinny Versionは税率、クレジットの適用の双方に関して現状を恒久化。
GILTIやFDIIの税率は恒久化が何となく想定されてたけど、BEATはAmerica First Policy的にどうなのかなってチョッと疑問だったこともあり、BEATがGILTIやFDIIと並列に手当てされてるのはGood News。まあ、実際にはInbound規定のはずだったBEATの適用はFTCを多く計上せざるを得ない米国企業への悪影響も大きかったからかもね。ただ、Pillar 2のUTPR導入国の企業は先日チラッと触れたSuper BEAT条項の動向に注意。
Skinny Versionはあくまで今後の本格的審議の出発点なんでどんな変更が加えられるか分かんないし、その後の上院のMark-upで下院案は大きく変わることも多いんであくまで参考程度っていう点は忘れないように。さらに来週のE&Cの本格的なMark-upでエンタイトルメント系の歳出にどれだけメスを入れることができるか、その数字に基づきWays and Means Committeeがどの程度、TCJA外の減税規定や米国製造施設投資に対するSuper-Bonus償却を盛り込むことができるか、等まだまだ予断は許さない。
次回こそ899法案Wrap-upしないとね。
以前のポスティングでも触れた通り、2026年の中間選挙を考えると今年の初夏には税制改正が通り、2025年後半から2026年前半に掛けて有権者がその恩典を実感する必要がある。中間選挙で全議席が入れ替わる下院は特にこの点にはセンシティブだ。タイミングに敏感な下院の議長JohnsonはMemorial Day(5月29日)を目標に全て可決って言ってたけど、3分の1の議席しか改選されない上院は夏までには…って下院の視点からすると少し呑気なタイムラインに言及してた。既に5月に入ってるんで財務長官のBessentは独立記念日のJuly 4thまでには達成っていう読み。結果、現時点のコンセンサス・落としどころとしてはJuly 4thってことになってる。それでも結構Aggressiveにいかないと難しい感はあるけど、逆に言えば党内派閥の意見は時間を掛けても変わらないんで結局どこかのタイミングで最大公約数的なJokerを切り札に一気に可決せざるを得ないんで、それが6月でも9月でも努力やPainは同じ気もするけどね。今年のJuly 4thは花火やバーベキューばかりでなく税制改正パッケージの解読Weekになるかな~。楽しみ?共和党だからまだ分かんないね。
Mega-Bill
4月10日のBudget resolutionでは税制、国境警備、国防、エネジー等全て一本のBudget reconciliationで制定する方向で最終化され、これはトランプがBig Beautiful Billって形容してたことから一般にもそう呼ばれていた。最近になってこの名称は長すぎるせいか、「Mega-Bill」って形容されるケースが目立ってきた。もちろん内容が多岐に亘るメガな法律っていう意味。SZA(「シィーザ」って読みます)のKill Billみたいで格好いいね!Kill Billって歌詞はチョッとダークだけど曲はいい。SZAと言えば今日(5月9日)たまたまニューヨークの(正確にはHudson River渡った向こうのNJの)MetLife Stadiumで屋外コンサートがあるけど空模様のかげんがイマイチで心配。ということで僕もこれからBig Beautiful BillはKill Bill、じゃなくてMega-Billって呼ぶことにします。
下院Committee Mark-up
下院では税法ドラフトの使命を帯びているWays and Means Committeeに先立ち、他のCommittee(下院には11のCommitteeがある)が各々割り当てられた計$1.5T~2Tの歳出減をどうやって捻出するかがフォーカス。以前のポスティングで触れた通り、下院向けのBudget Resolutionでは$2Tの歳出減が達成できない場合、未到達額分、Ways and Means Committeeに割り当てられている歳出増(すなわちTCJAの延長を含むネット減税額)が減額される。この仕組みからまずは歳出減をいくら達成できるかが判明しないと法案の税法部分を完成させることができない。
この週(米国の一般的な感覚では一週間は日曜日(7th day of the week)に終わるんで5月11日で終わる週のこと)で大概のCommitteeのMark-up(法案ドラフト)が明確になってきたんで来週(5月12日の週)からWays and Means CommitteeがMega-Billの一部を構成する税法部分のドラフト最終化に着手するっていう予定。で、その後、Memorial Day(5月26日)までに税法を含む下院バージョンのMega-Bill可決を目指すっていうタイムライン。で、それに先立ちWays and Means Committeeは噂通り「Skinny Version」って呼ばれる初期バージョンを5月9日金曜日夜に公開している。絶妙なタイミングの公開でFriday Nightが台無し?
下院税制改正法案Skinny Version
Skinny Versionはその名の通り「初めの一歩」に当たるShort Version。Mega-Bill全体がボックスセットだとすると、Skinny Versionはその中の一曲、しかもRadio Editみたいなサイズ。また物議を醸すWild Card規定は含まれてない。ただ、クロスボーダーに関してGILTI、FDII、BEATの現状維持(TCJAクリフの増税なし)が含まれてたんでWelcome。
面白いのはSubtitleが共通して「Make AmericanナントカAgain」ってMAGAテーマになってること。個人所得税の減税延長は「Make American Workers and Families Thrive Again」、GILTI、FDII、BEAT増税回避は「Make Rural America and Main Street Grow Again」, Medicare(Medicaidではない)の適格を市民やグリーンカード所有者に限定する部分は「Make America Win Again」っていう調子だ。
Skinny Version個人所得税関係
以前にも触れた通り、TCJAクリフの問題は「個人所得税」の減税が2025年を最後に失効してしまう点が最大の関心事だけど、Skinny Versionでは税率引き下げの恒久化やBracketの物価スライド調整とかのベーシック部分は含まれてる。人的控除がゼロって読めるんだけど実質撤廃?
上述の通りMega-Billは中間選挙に向けて一日も早く可決してその恩典を有権者が肌で感じる必要があるけど、Skinny Versionではその点に関する対処が見られる。まず、所得水準に基づくフェーズアウトを含む一定要件下で16歳以下の扶養子女に認められるChild Tax Credit(「CTC」)は従来の$1,000がTCJAで$2,000に増額されてたのを恒久化。しかも「2025年を含む」4年間の時限措置で更に$500上乗せで$2,500に増額(さすがにJD Vanceが選挙活動中に提唱してた$5,000じゃないけどね)。2025年から増額させるのは2025年の源泉徴収や2025年の申告を行う2026年初旬にその恩典が実感できるような配慮だろう。CTCを計上する納税者(既婚の場合は配偶者も)およびCTC適格の子女の全員がSocial Security Number(SSN)を所有していないといけない点も明記されてる。SSNは一般に市民、グリーンカード所有者、就労権のあるビザ所有者に交付される。ITINだけじゃダメってことだね。
また、標準控除(Standard Deduction)に関してもTCJAの増額が恒久化される。Standard DeductionってTCJA前は州税や不動産税が全額(総合的なフェーズアウトはあったけど)個別控除対象だったんでどちらかって言うと低所得者や州所得税のないFloridaやTexas州の納税者が利用することが多かった。TCJA増額前のStandard Deduction額は夫婦合算申告ベースで$12,700だったけど、これが一気に$30,000(2025年ベース)に増額されてた。TCJAは州税や不動産税の$10,000控除制限(後述)を導入したんで、Standard Deduction増額と相まってStandard Deductionを取る納税者が急増していた。Skinny VersionではTCJAの増額Standard Deductionを恒久化すると同時に2025年から4年間さらに$1,000~$2,000の時限増額を規定している。
もう一つ日本では馴染みは薄いだろうけど個人所得税に関して米国で注目されてるのが199Aのパススルー控除が2025年で失効するけどその温存有無。元々2017年のTCJAで法人税率が21%に引き下げられて、個人所得税は下がったとはいえ37%なんで、従来の法人vパススルーのEquationが大きく変わることになった。法人は主体レベルの法人税課税に加え株主が配当に課税されるんで二重課税だけど、2017年以前のように35%取られて残りの65%に23.8%(QDIなんで20%だけどオバマケア付加タックスで3.8%を想定)っていう連邦だけで実効税率50%強っていう状態から法人税率が21%に下がったんで二重課税だけど実効税率は39.8%になった。となるとパススルーで直接個人所得税対象になる37%との比較で、あんまり変わらないし法人が内部で資金を留保して再投資してる間はむしろ法人の方が有利?っていう新たなダイナミクスとなる。法人税率が21%に下がったのにパススルーはそのまま?っていう点の不整合を解消するため、2017年TCJAでは一定要件下でパススルーの所得に対し個人レベルで20%の想定控除が規定された。結果としてパススルー所得に対する実効税率は199A適格だと30%程度になる。ちなみにTCJA可決当時はパススルーモデルが法人モデルに変わるトレンドが生まれるんではっていうような話が聞かれたけど、体験的にパススルーから転換するケースは稀だった。民主党による法人税増税のリスクもあるし、パススルーは他の面でもフレキシブルだからね。Skinny Versionでは199Aを恒久化するばかりでなく、想定控除が20%から22%に引き上げられ、実効税率が1%弱下がってる。
Private CreditのBDCと199A
従来からREITのOrdinary Distributionが199A適格だったけど、Skinny Versionではプラスで税務上RIC区分を選択してるBusiness Development Companies(「BDC」)から受け取る「BDC Interest Dividend」も適格になる。BDCは40年投資法管轄の主体でLeverageやRelated Party取引に関して通常の40年投資法より軽めの規制下(って言っても40年投資法なんでPrivate Vehicleに比べたらかなりのRegulatory負荷)にある特別なタイプの主体。元々Retail投資家でもVenture CapitalやPrivate Equity同様のモデルに投資できるようにって制定された法律だけど、ここ何年もPrivate Creditに利用されるケースが増大してる。Skinny VersionではBDCのネット利子所得に帰する配当を199A適格としている。これは銀行による融資が容易ではない際にヘッジファンドとかのPrivate VehicleによるPrivate Credit提供に加え、BDCによるPrivate Creditの提供が急激に拡大してきた点を反映してMid-Marketへの融資をより活性化するための対策だろう。結構よく考えてるよね。Bessent財務長官は頻繁にメガバンクとそれ以外の銀行に対する異なる規制環境の必要性に言及し、Mid-Marketに対する融資拡大措置を推進しているけど、それのPrivate Credit版と言える。
ちなみにSkinny VersionのBDCのInterest Dividendが199A適格っていう取り扱いに先んじて同じような趣旨で米国外投資家によるPrivate Creditマーケットへの参入を促している法律が既に存在している。BDCって従来はRegulatory負荷が高すぎるんで、外国人LPから資金調達するPrivate CreditのスポンサーはPrivate Vehicleを利用するケースが圧倒的だったけど、単なるCo-InvestmentやSecondaryローンの取得ではなくローンをオリジネーション(多くのPrivate Creditがそう)するケースではファンドのストラクチャー的にどうしてもECIリスクが付きまとう。
Regulatory負荷に関して、大手スポンサーはいずれにしても40年投資法対象のMutual FundやETFをマネージしてるんで、そのノウハウを活かしてRegulatoryのチャレンジを克服し、Private CreditにもBDCをWrapperとして利用するトレンドが加速してきた。Regulatoryのハードルを越えてBDCを活用することができると、法人形態を採択して一定要件を満たすと税務上のRIC区分の選択ができて主体レベルで課税がない(細部は異なるけど概念はREITに似てる)。BDC自体はパススルーでもいいんだけど、RICになるには税務上法人区分じゃないといけないんでRICのBDCは外国人投資家の視点からは自ずとブロッカーになる。分配はBefore Taxで、更に2001年の税制改正(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 (「EGTRRA」)でBDCの利子所得がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たす場合、Look-throughみたいにその利子所得に帰するBDCの配当が源泉税免除になっている。上述の通り通常の40年投資法より関連者間取引の規定が若干緩和されてるんでExternally Managedの(つまりファンドスポンサーが組成する)BDCは同じスポンサーがManageするファンドコンプレック内の複数のファンドやWrapperからローンを提供することが可能っていうファンドスポンサーにとっては実に有益なストラクチャーを取ることができる。SECによるExempt Reliefにはこの手の緩和が多く開示されてる。これらの理由でRegulatory負荷を克服できる場合、BDCはPrivate CreditのVehicleとしてはBest of all worldみたいな存在だ。一点注意点は40年投資法Vehicleなんで仮に「Private BDC」(すなわち資金調達をPrivateに行うタイプのBDC)でも財務諸表は上場企業同様に常にSECにファイルしないといけない。この点は真にPrivateのPrivate REITとは異なる。
Skinny Versionに戻るけど、BDCのネット利子を源泉とする配当が199A適格になるとPrivate Credit戦略のPublic BDC(証券取引所で流通または取引所では流通はしてないけど資金調達をPublicにしてる場合)にRetailの投資がし易くなり、Mid-Marketへの融資が活性化されるような仕組み。
SALTは?
ちなみに個人所得税に関して大きな争点になっている州税の連邦課税所得計算時の損金算入制限緩和(SALT問題。SALTはお塩じゃなくてState and Local Taxです)は行先不明なんで未だ盛り込まれてない。Skinny Versionだから無難なところから始めの一歩だね…。
BEAT・クロスボーダー
Skinny Versionに先立ち、上院ではGILTI、FDII、BEATの原則現状維持に加えてCFC Look-through規定の恒久化、GILTIバスケットのFTC計算時の米国側の費用配賦ルール改訂(FTCが取りやすくなる)、等を盛り込んだ詳細法案がつい先日別途提出されたけど、Skinny VersionでもGILTIおよびFDIIの税率(理論税率13.125%)が恒久化されている。
で、クロスボーダーの規定の運命の中でも日本企業にとって関心が高いのはBEAT。特に関税対策の必要性が高まる今日この頃、製品対価からIP価値をDe-bundleしたりするとロイヤルティがBEAT対象になるの?とか、BEAT対象になるリスクがある場合の定量的なインパクト、とかの検討をすることになるんでその重要性は自ずと高まる傾向にある。BEATは税制改正で手当てされないと2026年以降かなり厳しいものになるからね。具体的にはBEATミニマム税計算時の税率が10%から12.5%(銀行と証券ディーラーは11%から13.5%)に引き上げられるのに加え、こっちの方のダメージが大きいことが多いと思うけど、BEAT暫定税額と通常法人税の比較をする際に、通常法人税はR&Dクレジットを含む全てのクレジットをマイナスした後の数字を使うようになる。現状は一定の制限下、R&D、Low Income Housing、エネジークレジットはマイナスする前の数字を比較対象にできるんで通常法人税額が高く見え、BEATミニマム税が低くなる。Skinny Versionは税率、クレジットの適用の双方に関して現状を恒久化。
GILTIやFDIIの税率は恒久化が何となく想定されてたけど、BEATはAmerica First Policy的にどうなのかなってチョッと疑問だったこともあり、BEATがGILTIやFDIIと並列に手当てされてるのはGood News。まあ、実際にはInbound規定のはずだったBEATの適用はFTCを多く計上せざるを得ない米国企業への悪影響も大きかったからかもね。ただ、Pillar 2のUTPR導入国の企業は先日チラッと触れたSuper BEAT条項の動向に注意。
Skinny Versionはあくまで今後の本格的審議の出発点なんでどんな変更が加えられるか分かんないし、その後の上院のMark-upで下院案は大きく変わることも多いんであくまで参考程度っていう点は忘れないように。さらに来週のE&Cの本格的なMark-upでエンタイトルメント系の歳出にどれだけメスを入れることができるか、その数字に基づきWays and Means Committeeがどの程度、TCJA外の減税規定や米国製造施設投資に対するSuper-Bonus償却を盛り込むことができるか、等まだまだ予断は許さない。
次回こそ899法案Wrap-upしないとね。
Saturday, April 26, 2025
両院合意のConcurrent Budget Resolution
トランプ政権発足から未だ100日弱しか経過してないけど、おそらく史上まれにみる激しい政権発足100日になるだろう。メキシコとの国境はほぼ完全に封鎖されバイデン時代に一千万強の移民が流入してたのが噓のよう。その他カルチャー系の問題やエネジー政策その他公約をほぼ全て強硬に実行中。これらの政策はトランプに投票した有権者は評価してるだろうけど経済政策はどうだろうか。
規制緩和
経済的にはまず規制緩和。特に金融やクリプトに関しては規制緩和路線が明確だし、税法に関してもバイデン時代末期に滑り込みで規則策定され、行政府の権限逸脱という反論が多かったパートナーシップを使用したBasis Shifting対抗規則の撤廃が発表された。パートナーシップのBasis Shiftingって言うと洗練された、または阿漕なプラニングに聞こえるかもしれないけど、結構な部分は法的に強制される資産簿価に対して普通にやらされてる調整の適用。例えばsection 732とか734、確かに思わぬEconomicsになることがある分配時の743とかをターゲットにし、通常領域の簿価調整も含めて広範に「Transaction of Interest(「TOI」)」に指定し報告義務が課せられてた。TOI(トイって言います)は玩具じゃないからね。Basis Shift規則は対象取引、報告対象期間双方の面でOverbroadで面食らってたパートナーシップは多く、撤廃はWelcome。743とか条文に基づく取り扱いの変更は行政府じゃなく、議会が法律で策定するべき。特にLoper Bright後の世界では。実際に上院ではBasis Shiftに関係する法案が提出されたりしてる。思いつく範囲でも見直して欲しい規則は結構ある。スピンオフ、特にSecuritiesのDebt for Debtの取り扱い、自社株買いのFunding Rule規則案、DC REIT判断時のC CorpのLook-throughとか。1.385‐3のFunding規定もそろそろ何とかならないかなって思い続けて既に10年近い月日がたったね。
規制緩和でイマイチ予想を下回ってるのはLina Khanが去った後のFTC(公正取引委員会)。Andrew Ferguson傘下で一気にLiberationされるかと思ってたけど、Capital OneとDiscoveryとか金融系はスムースにSailingしているのに対し、Big TechやPharmaには引き続き厳し目。Big Techはバイデン政権傘下で言論統制や世論操作させられてた危険な存在っていう見方がトランプ政権に根強く残っている点はひとつの理由だろう。
関税で税制改正の早期可決がMustに
で、公約だった関税が現実になり、しかも関税はオンだったりオフだったり。不確実性が高いのはビジネスにとってプラニングができず一番困るだろうから一層のことUniversalに10%なんだったらそう決めてMove Onした方が分かり易かった気がするんだけどね。また、以前に何回か触れた今のままではいずれ米国は過去の大国同様に滅び行くって言う危惧に対処するためのGlobal Reorderだけど、これが狙い通りにプラス効果をもたらし、米国市民、特に製造業が多い中西部の有権者がそのメリットをいつ「体感」できるのかはもちろん不明。そんな状況で経済に不確実性が増してるんで、少なくとも短期的なショック緩和策として規制緩和に加えて国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになったっていう点は前回チラッと触れた。
税制改正の具体的な大枠はTCJAの恒久化(上院)または時限延長(下院)、そしてトランプが選挙活動中から言ってるチップ、残業代、公的年金受給非課税、米国内製造に帰する所得に対する15%減税とかのパッケージのできるだけ多くを盛り込むっていうもの。これだけでも超大型法案だけど、それに国境警備、国防、エネジー関係を盛り込むOne Packeageなんで規模は巨大で、それだけに党内調整には多くのチャレンジがある。
TCJAの延長に関しては、TCJAそのものが2017年に同じトランプ大統領下の共和党Trifectaで可決された税制だから、2025年も同じくトランプ下で共和党Trifectaっていう点からTCJAを延長したり恒久化するっていう動きはごく自然に見える。でもチョッと落ち着いて考えてみると2017年の共和党と2025年の共和党では異なるベースの党で別の党みたいだから、2017年の税法をそのまま延長しようっていうこと自体、何となく不思議な部分はあるんだけど、まあTCJA自体が元からAmerica First Policy的なトランプ1.0のSignature法案で、結果多くの所得層に恩典があったことを考えると自然な流れって整理しておくべきなんだろうね。
S. CON. RES. 7/H.Con.Res.14 Concurrent Resolution
そんな中、上院は以前に可決していた2-TrackのBudget Resolutionの代わりに下院同様に税制改正、国境警備、軍事やエネルギーの全てをOne Packageで対処する「Big Beautiful Bill」、または「Too Big to Fail」って呼ぶ人もいるけど、に変更してBudget Resolutionを可決。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式に両院(Concurrent)のBudget Resolutionが誕生した。
Budget Resolutionを含むReconciliationのプロセスはthe Congressional Budget Act of 1974に基づくもので、Reconciliationルール枠内の法案を審議すると上院でFillibusterっていう議事進行妨害の除去に必要な60議席ではなく、単純多数決の50議席超で予算案を可決できるっていう制度。その際、法案に盛り込まれる内容は歳入・歳出に関係ないといけないとか、Reconciliationの手続き自体超複雑で僕の専門分野とは言えないけど、ベーシックなところで理解してる範囲でプロセスに触れておくと、まず両院各々が2025年の予算の大枠(具体的な法案内容ではなく)をBudget Resolutionとして可決し、最終的には一つのBudget Resolutionとする必要がある。
具体的には2025年の予算に関して上院が4月5日に以前の2‐Trackバージョンではなく、一括法案を想定したBudget Resolution(これがS.Con.Res.7)を可決。下院は既に一括法案を想定して先の3月20日に独自のBudget Resolution(H.Res.258・H.Con.Res.14)を可決してたけど、4月10日に下院は上院のS.Con.Res.7に元々の下院のポリシーを加味して採択。このプロセスを経て上院のS.Con.Res.7が両院合意の最終Budget Resolutionになった。元々下院のDeficit Hawksの意向を反映するために$1.5~$2Tの歳出カットが反映されてたけど、これらの歳出カットはそのまま下院向けには残る形で最終化されている。
上院・下院で異なるInstructions
このようにBudget ResolutionがConcurrentで両院一致バージョンになったものの、面白いことに上院バージョンに元々の下院バージョンを合体させてることから上院と下院で各委員会に与えられた予算指示内容は異なるっていう複雑な構成に仕上がっている。上院と下院には各々委員会があって、個々の委員会が管轄権を持つ分野はミラーイメージじゃないけど、トータルでは結局同じ分野を取り扱うことになる。下院はEnergy & Commerceっていう委員会があると思えば上院はEnergyっていうのがあり、下院のFinancial Services委員会もどきが上院Banking委員会だったりするけど、特定分野に関して両院でどこかの委員会が予算を作成する立場にあって最終的な法律は同一じゃないといけない。税制に関してはもちろんだけど下院はWays and Means Committeeだし、上院だったらFinance Committeeだ。
歳出カット
ConcurrentのBudget Resolutionに反映されている予算指示で、上院と下院で大きく異なるのは歳出カット規模。下院ではWays and Means以外の各委員会に合計で$1.5Tの最低歳出カットが指示され、Ways and Meansには$4.5Tまでの歳入減、すなわちTCJA延長他の税制改正による減税の財源が手当てされている。歳出カットは$1.5Tが最低ラインで$2Tに届かない場合、不足額はWays and Meansの$4.5Tを減額する。逆にもし歳出カットが$2Tを超える場合には、Ways and Meansの$4.5Tを増額することができる。
一方の上院側にはこの手の歳出カットの指示はない。正確に言うと全委員会合計でナンと「$4B」(この「B」は「T」のタイポではなく本当に「B」)という実質ゼロと言ってもいいような無意味な歳出カットを指示してる。これは共和党はMedicaidをカットするつもりって民主党・メディアが市民の恐怖を煽ってるんでその対策なんだろうか。Medicaidを正当に受給しているケースはカットはしないってトランプ政権は再三にわたり強調してるけど、Medicaidの不正受給や濫用による歳出は巨額だっていう話しだからトランプ政権が着手してる政府によるWaste、Abuse、Fraud支出をなくす努力をして歳出を管理するのは当然で不正の排除はMedicaid恩典カットには当たらないはず。この辺りのメッセージングはレガシーメディアが不安を煽ってるんで一般には伝わり難いところ。
米国の仕組みって日本と違い過ぎて分かり難いと思うけど、医療保険に関して国の皆保険制度はない。Privateの保険に加入しないとなかなか病院にも行けない。医療保険にかかわる連邦政府の関与は主に2つで一つは65歳以上の高齢者および身体障碍者に対するMedicareで、もう一つは低所得者に対するMedicaid。Medicaidの方は制度導入1965年当時の趣旨は生活保護を受けてる低所得層に対する医療費援助で、州が運営し連邦がかなりのポーションのコストを負担するっていうもの。1965年から制度は拡大し、特にオバマケアで連邦の負担は増額の一途。また不正の温床のようで、DOGEが実態調査する以前にも会計検査院(GAO)がMedicaidの不正は$100B規模って指摘してるから凄い。$100Bって一年のコストだからBudget Windowの10年に置き換えると$1Tだ。
Medicaidってチョッと不思議に思うかもしれないけど、下院ではEnergy & Commerce委員会の管轄化。当委員会は憲法批准直後に憲法のInterstate Commerce条項にかかわる法的管轄権を持ったことから、連邦が司る医療プログラムは必然的にInterstateとなることが理由で当委員会が管轄権を持つ。で、上述の通りConcurrentにも反映されてる下院のBudget Resolutionは計$1.5Tの歳出カットを指示してるんだけど、そのうち半分以上の$880BがこのEnergy & Commerceに割り当てられている。もちろんこれは偶然ではなくMedicaidの正当な給付ではなく、不正をカットすることで相当な歳出カットが可能だろうっていうのが背景。
一方、上述の通り上院でMedicaidを管轄しているFinance委員会には歳出カットの指示が出てない。この点から上院がどれだけ真剣に下院委員会が可決する歳出カットを法案に取り込むかがBudget Reconciliation法案可決に向けての大きな関心になっている。下院のDeficit Hawk派が上院のBudget Resolutionに賛成票を投じたのは、上院による「歳出カットはResolutionに盛り込んではないものの、下院の$1.5Tカットには賛成で同様の努力を惜しまない」っていう口約束が理由なんで火種を先送り(英語で言うところの「Kicking the can down the road」)した感は否めず、下院法案が目標のMemorial Day(5月26日)に完成したとしても、その後の上院法案や両院共通の法案とする際の交渉がどんな風に展開するか目が離せないね。
規制緩和
経済的にはまず規制緩和。特に金融やクリプトに関しては規制緩和路線が明確だし、税法に関してもバイデン時代末期に滑り込みで規則策定され、行政府の権限逸脱という反論が多かったパートナーシップを使用したBasis Shifting対抗規則の撤廃が発表された。パートナーシップのBasis Shiftingって言うと洗練された、または阿漕なプラニングに聞こえるかもしれないけど、結構な部分は法的に強制される資産簿価に対して普通にやらされてる調整の適用。例えばsection 732とか734、確かに思わぬEconomicsになることがある分配時の743とかをターゲットにし、通常領域の簿価調整も含めて広範に「Transaction of Interest(「TOI」)」に指定し報告義務が課せられてた。TOI(トイって言います)は玩具じゃないからね。Basis Shift規則は対象取引、報告対象期間双方の面でOverbroadで面食らってたパートナーシップは多く、撤廃はWelcome。743とか条文に基づく取り扱いの変更は行政府じゃなく、議会が法律で策定するべき。特にLoper Bright後の世界では。実際に上院ではBasis Shiftに関係する法案が提出されたりしてる。思いつく範囲でも見直して欲しい規則は結構ある。スピンオフ、特にSecuritiesのDebt for Debtの取り扱い、自社株買いのFunding Rule規則案、DC REIT判断時のC CorpのLook-throughとか。1.385‐3のFunding規定もそろそろ何とかならないかなって思い続けて既に10年近い月日がたったね。
規制緩和でイマイチ予想を下回ってるのはLina Khanが去った後のFTC(公正取引委員会)。Andrew Ferguson傘下で一気にLiberationされるかと思ってたけど、Capital OneとDiscoveryとか金融系はスムースにSailingしているのに対し、Big TechやPharmaには引き続き厳し目。Big Techはバイデン政権傘下で言論統制や世論操作させられてた危険な存在っていう見方がトランプ政権に根強く残っている点はひとつの理由だろう。
関税で税制改正の早期可決がMustに
で、公約だった関税が現実になり、しかも関税はオンだったりオフだったり。不確実性が高いのはビジネスにとってプラニングができず一番困るだろうから一層のことUniversalに10%なんだったらそう決めてMove Onした方が分かり易かった気がするんだけどね。また、以前に何回か触れた今のままではいずれ米国は過去の大国同様に滅び行くって言う危惧に対処するためのGlobal Reorderだけど、これが狙い通りにプラス効果をもたらし、米国市民、特に製造業が多い中西部の有権者がそのメリットをいつ「体感」できるのかはもちろん不明。そんな状況で経済に不確実性が増してるんで、少なくとも短期的なショック緩和策として規制緩和に加えて国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになったっていう点は前回チラッと触れた。
税制改正の具体的な大枠はTCJAの恒久化(上院)または時限延長(下院)、そしてトランプが選挙活動中から言ってるチップ、残業代、公的年金受給非課税、米国内製造に帰する所得に対する15%減税とかのパッケージのできるだけ多くを盛り込むっていうもの。これだけでも超大型法案だけど、それに国境警備、国防、エネジー関係を盛り込むOne Packeageなんで規模は巨大で、それだけに党内調整には多くのチャレンジがある。
TCJAの延長に関しては、TCJAそのものが2017年に同じトランプ大統領下の共和党Trifectaで可決された税制だから、2025年も同じくトランプ下で共和党Trifectaっていう点からTCJAを延長したり恒久化するっていう動きはごく自然に見える。でもチョッと落ち着いて考えてみると2017年の共和党と2025年の共和党では異なるベースの党で別の党みたいだから、2017年の税法をそのまま延長しようっていうこと自体、何となく不思議な部分はあるんだけど、まあTCJA自体が元からAmerica First Policy的なトランプ1.0のSignature法案で、結果多くの所得層に恩典があったことを考えると自然な流れって整理しておくべきなんだろうね。
S. CON. RES. 7/H.Con.Res.14 Concurrent Resolution
そんな中、上院は以前に可決していた2-TrackのBudget Resolutionの代わりに下院同様に税制改正、国境警備、軍事やエネルギーの全てをOne Packageで対処する「Big Beautiful Bill」、または「Too Big to Fail」って呼ぶ人もいるけど、に変更してBudget Resolutionを可決。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式に両院(Concurrent)のBudget Resolutionが誕生した。
Budget Resolutionを含むReconciliationのプロセスはthe Congressional Budget Act of 1974に基づくもので、Reconciliationルール枠内の法案を審議すると上院でFillibusterっていう議事進行妨害の除去に必要な60議席ではなく、単純多数決の50議席超で予算案を可決できるっていう制度。その際、法案に盛り込まれる内容は歳入・歳出に関係ないといけないとか、Reconciliationの手続き自体超複雑で僕の専門分野とは言えないけど、ベーシックなところで理解してる範囲でプロセスに触れておくと、まず両院各々が2025年の予算の大枠(具体的な法案内容ではなく)をBudget Resolutionとして可決し、最終的には一つのBudget Resolutionとする必要がある。
具体的には2025年の予算に関して上院が4月5日に以前の2‐Trackバージョンではなく、一括法案を想定したBudget Resolution(これがS.Con.Res.7)を可決。下院は既に一括法案を想定して先の3月20日に独自のBudget Resolution(H.Res.258・H.Con.Res.14)を可決してたけど、4月10日に下院は上院のS.Con.Res.7に元々の下院のポリシーを加味して採択。このプロセスを経て上院のS.Con.Res.7が両院合意の最終Budget Resolutionになった。元々下院のDeficit Hawksの意向を反映するために$1.5~$2Tの歳出カットが反映されてたけど、これらの歳出カットはそのまま下院向けには残る形で最終化されている。
上院・下院で異なるInstructions
このようにBudget ResolutionがConcurrentで両院一致バージョンになったものの、面白いことに上院バージョンに元々の下院バージョンを合体させてることから上院と下院で各委員会に与えられた予算指示内容は異なるっていう複雑な構成に仕上がっている。上院と下院には各々委員会があって、個々の委員会が管轄権を持つ分野はミラーイメージじゃないけど、トータルでは結局同じ分野を取り扱うことになる。下院はEnergy & Commerceっていう委員会があると思えば上院はEnergyっていうのがあり、下院のFinancial Services委員会もどきが上院Banking委員会だったりするけど、特定分野に関して両院でどこかの委員会が予算を作成する立場にあって最終的な法律は同一じゃないといけない。税制に関してはもちろんだけど下院はWays and Means Committeeだし、上院だったらFinance Committeeだ。
歳出カット
ConcurrentのBudget Resolutionに反映されている予算指示で、上院と下院で大きく異なるのは歳出カット規模。下院ではWays and Means以外の各委員会に合計で$1.5Tの最低歳出カットが指示され、Ways and Meansには$4.5Tまでの歳入減、すなわちTCJA延長他の税制改正による減税の財源が手当てされている。歳出カットは$1.5Tが最低ラインで$2Tに届かない場合、不足額はWays and Meansの$4.5Tを減額する。逆にもし歳出カットが$2Tを超える場合には、Ways and Meansの$4.5Tを増額することができる。
一方の上院側にはこの手の歳出カットの指示はない。正確に言うと全委員会合計でナンと「$4B」(この「B」は「T」のタイポではなく本当に「B」)という実質ゼロと言ってもいいような無意味な歳出カットを指示してる。これは共和党はMedicaidをカットするつもりって民主党・メディアが市民の恐怖を煽ってるんでその対策なんだろうか。Medicaidを正当に受給しているケースはカットはしないってトランプ政権は再三にわたり強調してるけど、Medicaidの不正受給や濫用による歳出は巨額だっていう話しだからトランプ政権が着手してる政府によるWaste、Abuse、Fraud支出をなくす努力をして歳出を管理するのは当然で不正の排除はMedicaid恩典カットには当たらないはず。この辺りのメッセージングはレガシーメディアが不安を煽ってるんで一般には伝わり難いところ。
米国の仕組みって日本と違い過ぎて分かり難いと思うけど、医療保険に関して国の皆保険制度はない。Privateの保険に加入しないとなかなか病院にも行けない。医療保険にかかわる連邦政府の関与は主に2つで一つは65歳以上の高齢者および身体障碍者に対するMedicareで、もう一つは低所得者に対するMedicaid。Medicaidの方は制度導入1965年当時の趣旨は生活保護を受けてる低所得層に対する医療費援助で、州が運営し連邦がかなりのポーションのコストを負担するっていうもの。1965年から制度は拡大し、特にオバマケアで連邦の負担は増額の一途。また不正の温床のようで、DOGEが実態調査する以前にも会計検査院(GAO)がMedicaidの不正は$100B規模って指摘してるから凄い。$100Bって一年のコストだからBudget Windowの10年に置き換えると$1Tだ。
Medicaidってチョッと不思議に思うかもしれないけど、下院ではEnergy & Commerce委員会の管轄化。当委員会は憲法批准直後に憲法のInterstate Commerce条項にかかわる法的管轄権を持ったことから、連邦が司る医療プログラムは必然的にInterstateとなることが理由で当委員会が管轄権を持つ。で、上述の通りConcurrentにも反映されてる下院のBudget Resolutionは計$1.5Tの歳出カットを指示してるんだけど、そのうち半分以上の$880BがこのEnergy & Commerceに割り当てられている。もちろんこれは偶然ではなくMedicaidの正当な給付ではなく、不正をカットすることで相当な歳出カットが可能だろうっていうのが背景。
一方、上述の通り上院でMedicaidを管轄しているFinance委員会には歳出カットの指示が出てない。この点から上院がどれだけ真剣に下院委員会が可決する歳出カットを法案に取り込むかがBudget Reconciliation法案可決に向けての大きな関心になっている。下院のDeficit Hawk派が上院のBudget Resolutionに賛成票を投じたのは、上院による「歳出カットはResolutionに盛り込んではないものの、下院の$1.5Tカットには賛成で同様の努力を惜しまない」っていう口約束が理由なんで火種を先送り(英語で言うところの「Kicking the can down the road」)した感は否めず、下院法案が目標のMemorial Day(5月26日)に完成したとしても、その後の上院法案や両院共通の法案とする際の交渉がどんな風に展開するか目が離せないね。
Saturday, April 12, 2025
関税「Morning After」と両院一致Budget Resolution可決
Section 899法案の話しに戻りたいけど、世間は当然のことながら関税の話しでもちきりで、米国で言うところの「wall-to-wall」。そんな状況なんで、もう一回、Liberation Dayから一夜(数夜?)明けた「Morning After」特集。
Morning Afterっていうと映画ポセイドンアドベンチャーのサントラを思い出すね(そんな古い映画知らないって?)。原曲はMaureen McGovernの郷愁感ある名曲。ポセイドンアドベンチャーって言えばGene Hackmanだけど、先日のSanta Feでの出来事はビックリでした。
映画ポセイドンアドベンチャーでは「Nonnie」っていうチョッとJoni MitchellみたいなArtisticな女の子がMorning Afterを船内のラウンジみたなところでリハっぽく歌ってるシーンがあるけど(バンドメンバーのLooksが70年台前半丸出し(笑))、あれはリップシンクで声はCarol Lynleyだったということ。Maureen、Nonnie(Renee Armand)、Carolって三つ巴で結構ヤヤコシイね。
Liberation DayとGlobal Tax Deal対抗策
で、あんまり脱線しないうちに本題に戻ると、まずLiberation Dayの声明で気づいた点はReciprocalの対象となる貿易相手国の関税、VAT、非関税障壁の話しに「Global Tax Deal」が含まれてなかったこと。そもそもReciprocalの計算は、貿易相手国のエントリーコストではなく米国との貿易収支の均等に基づくRicardianモデルって言われてるんで、計算方法からも相手国がGlobal Tax Dealを導入しているかどうかは検討要素に入ってないことが分かる。関税の話しなんだけど、通商は専門外で、どうしてもまずは法人税関係に気を取られてしまう悪い癖だね。
Global Tax Dealに関しては以前のポスティング(「Global Tax Deal大統領令」と「America First Trade Policy大統領令」)で触れた通り大統領令は大別して2つ。まず一つ目のGlobal Tax Deal大統領令はピラー2を含む域外・差別的課税を可決したり、可決しようとしている国をリストアップして、行政府として法的に取ることができる対抗策オプションを3月21日までに財務長官が大統領に報告するっていうもの。この報告書は公開されてないけど、歳入委員会のポスティングに、財務長官がタイムリーに報告を終えた点を評価しているコメントが掲載されてたんでBessent長官は期日に報告を終えてるって推測される。報告書そのもののコピーは海賊版でも流出してないんで見ることはできず内容はベールに包まれたままだ。う~ん、魔法の鏡で見てみたい。もしもブルーにしてたら偶然そうに電話する?
この手の局面で行政府として法的に取ることができる対抗策の代表って言えば他でもない関税だから、Liberation Dayの公表にこの点が加味される可能性もあるのかなって思ってたんだけど、実際には特に言及はなかった。別枠で検討中かもね。トランプ政権は「やるぞ」って言ってたことはどれだけ物議を醸しても基本やってきてるんで何らかの対処は取るんだろう。OECD加盟国やIFが近々に協議するとかいう話しは聞くけど具体的には公表されてない感じ。いずれにしても仮に現時点で集まったとしても関税の話しが充満しているんでGlobal Tax Dealどころの話しじゃないしね。
もう一つのAmerica First Trade Policy大統領令でもGlobal Tax Dealに触れてるけど、こちらは他でもないsection 891の対象となり得る国を4月1日を期限に財務長官にリストアップするよう求めているもの。以前から触れている通り、section 891の認定は単に域外課税や差別的課税を制度として持っているっていう以上のものが求められるんでどんなリストになってるかこちらも魔法の鏡の世界だけど、内容はともかくこちらもリストも提出済みって考えていいだろう。ポスティング中のsection 899案はsection 891をModernizeしてるものだから、もしかしたらsection 899の立法動向、例えばScoring可否の観点からBudget Reconciliationに入るのかどうか、を見てそちらでいけそうだったらsection 899に注力するのかもね。Section 891は既に法律にあるんで、America First Trade Policyで問題国のリストアップが完了してるとすりば、直ぐにでも発動可能でバックストップ的に取ってあるのかもしれない。
税制改正動向
関税があったりなかったりして米国経済に不確実性が増している中、少なくとも短期的な関税ショックを中和するため国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになった。そんな中、上院は以前に可決していたBudget Resolutionの代わりに新たな下院のResolutionを改訂した新上院Resolutionを通している。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式にBudget Resolutionに基づく立法プロセスがキックオフ。両院Budget Resolutionの内容に関しては、今後予想される動向や関税との関係も含めて次回ポスティングで別特集してみたい。
僕の専門分野は60年台後半から80年台までのギタリストのテクニック分析と米国のIncome Taxなんで、関税の話しは専門外。なんで関税に関するコメントは米国で一般市民と暮らしている中で見えるポリティクスや、投資銀行や法曹界の集まりで聞いた話しをベースにしてるんで、総合的な分析を提供するような大それた意図はないからねって予め断っておく。ただ、日本で米国の話しを聞く限り、米国の一般トレンドの実態が伝わってないことが多いとは感じるんで肌感覚の観測として参考になればなによりです。
トランプと米国関税の歴史
トランプを語る際に、彼の意見に賛成するかどうかは別として、トランプが思ってることややりたいことをそのまま普通に(延々と)語るっていう、政局やオーディエンスを見て話しを変えたり(カマラハリスみたいにアクセントまで変えたり…)するポリティシャンとは別のAuthenticityを一つの特徴として挙げることができる。
この一貫した信念は、通商面で米国が他国にいいように利用されてて米国政府の無策も手伝い、結果として米国が凋落しているんでどこかで方向転換しないといけない、っていうスタンスも同じ。トランプ1.0の2016年どころか今から遡ること40年近く昔の1988年には当時不動産業で一躍有名になっていたヤング(って言っても40歳くらい)のトランプがthe Oprah Winfreyのショーで米国の不均衡な貿易収支を大きな問題としている。凄い若いけど言ってることは基本、Liberation DayのRose Gardenの趣旨と同じだ。トランプの通商ポリシーはRobert LighthizerやPeter Navarroに影響されて形成されたって思われてるかもしれないけど、そうじゃないのが分かる。トランプはOprahのショーでのやり取り以外にも当時から既に大手新聞に公開書簡を送りつけて米国の通商・国防ポリシーに警鐘を鳴らしていた。Oprahのショーのやり取りは最近YouTubeで多く閲覧されてるんで興味あったら見てみると面白い。
トランプの一貫性を見ることができる40年前の出来事。当時の問題国はもちろん日本。米国にあれだけ経済的に恐れられるってなんか懐かしいね。Super 301が連日新聞の一面で報道され、お茶の間に米国通商代表(USTR)っていう機能とかカーラ・ヒルズの姿が定着していたあの頃。
当時、米国と交渉したノウハウ(プラス恐怖?)は日本政府や産業界に継承されてるはずで、以前のポスティングでも触れた通り対米通商交渉に日本は「一日の長」があるって言えるかもね。そのお陰かどうか分かんないけど、Reciprocal関税に対して真っ先にトランプ政権に交渉を提案し、米国側はそれに応じてBessent財務長官とUSTRのGreer自らが交渉に関与するってことで、ここ数日、米国では同盟国の模範(?)みたいに報道されたりしてる。「中国とは違って…」っていう切り口。ただ、国家間の同盟は国家の自己利益に基づくんで相手国による称賛には要注意かもね。イスラエルのNatanyahu大統領は既にトランプ、Bessent、Greerを訪問してイスラエル側の米国製品に対する関税撤廃を提案。
ちなみに日本が当時直面してた米国側の対抗措置は上述の通りSuper 301っていう措置だったけど、Liberation Dayを含む今回のトランプ関税の根拠条文とは異なる。関税も歳入法なんで連邦憲法下では三権分立上、議会に制定の権利がある。1913年に憲法修正(16th Amendment、Mooreの世界だね)があるまで連邦政府は所得税(Income Tax)を課す権利はなかったんで(正確にはそのような税金は州の人口で負担を按分しないといけないっていうことで実質制定不可能だったんで)、それまでの連邦の歳入は主に関税、酒税、タバコ税とかだった。そのままにしておけば連邦政府の肥大化もなかったはずなんだけど、戦費の関係で1913年に憲法が修正され、その後、連邦の歳入に占める関税の比率は急激に低下した。それで議会が興味を失った訳じゃないんだろうけど、議会は複数の法律で徐々に大統領に関税策定権を委譲している。
具体的にはまず1962年の「Trade Expansion Act」。このTrade Expansion Actのsection 232は国家安全保障の視点から「特定品目」を取り締まるもの。品目単位での締め付けが特徴で、トランプの鉄鋼、アルミ、自動車に対する25%っていう関税(Liberation Dayより前に発表されてたもの)がこれだ。最近section 232っていう条文を良く耳にするけど、税法のInternal Revenue Codeでは200番台っていうとSubchapter BのPart VIIからXIまでをカバーしてて大概Deductionできる費用そうでない費用とかCapitalizationの世界だけど幸いにも今日のIRCにsection 232は存在しない。
で次は1974年の「Trade Act」。不公正な通商政策を取り締まるもので有名なのがsection 301。USTRが広範な調査権を持つ。そして1977年の「International Emergency Economic Powers Act」。国家安全保障に対する重大な脅威への対処で「IEEPA」っていう用語はまさにこれ。Liberation Dayに公表された10%のUniversalベースラインTariffも(中国以外には)90日間施行が中断されているReciprocal関税も、双方ともこのIEEPAに基づく。
日本がその昔苦しんだSuper 301っていうのは実はTrade Actのsection 301そのものではなく、 1988年のOmnibus Trade and Competitiveness Actで時限的にsection 301を強化したもの。Superっていうのは強化版っていう意味の俗語じゃないかな。
Section 232と異なりsection 301は「もちろん」IRCにも存在する。Subchapter Cのトップバッターだ。Distributionがいつ配当になるかとかを規定しているDay-to-dayに適用がある条文だけど、302との関係とかJohnsonの考え方とか実はDeep。Johnsonと言えば先日のPTEP財務省規則案でPTEPアカウントはUS Shareholderベース(しかも連結納税グループはグループ単位。これは驚き)だけど、株式簿価(961(a))はJohnsonベースなんで、異なるブロック、例えば後から追加出資とか、のCFC株式を所有するUS ShareholderはPTEPのDistributionがあると思わぬ結果になる。いつかPTEP規則案も話したいけどいつになることでしょうか。
なぜ関税?(Reprise)
インフレや米国企業のサプライチェーンに影響があるにもかかわらず、なぜここまでして関税?っていう点は以前3月9日の「トランプJoint Sessionスピーチ・税制改正・関税」の「なぜ関税?」っていう部分でチラッと米国ドルのReserve Currencyが結果「Resource Curseになり」国家として取り返しがつかないところに来てしまい、相当な無理を覚悟に大きく舵を切らないと米国は滅びるからかなって憶測的に触れたけど、Liberation Day前後の関税を取り巻く政権重鎮、特に辛抱強く背景を語る財務長官Bessent、もう少しAggressiveな商務長官Lutnickらの話しから、まさにそこに理由があるって確信が持てた気がする。
Vance副大統領が2023年に発言していた内容と同様、米国のResource Curse、すなわちドルがReserve Currencyっていうとてつもない特権に胡坐をかいてるうちに既に取り返しがつかないレベルの国家財政悪化に陥り、またその副産物として米国の製造業が空洞化してしまったっていうトレンドをどこかで反転させないと大変なことになる、っていう危機感だ。株価や物価は少なくとも短期的に未知の影響を受けるだろうから短期サイクルで動く米国ポリティクス的に通常の政権では手を付けることはできないし実行する気概はないだろう。また現状のシステムに既得権を持つ者も多いから強力なプッシュバックがある。
そんな環境で通常の政権であれば、長期的に国のためにならないって分かってても大きな混乱を伴いかねない経済政策は取れないんで、どうしてもBusiness as usualで続行となる。賃金が低く労働環境も怪しい国の製品を安いという理由で活用。Global Tradeだ。そして米国は国債を発行し続け、その間、連邦政府はどんどん大きくなり更に巨額の歳出を繰り返す。ドルがReserve Currencyでなくなるまでパーティーが続いていくような状況。財政の極端な悪化と同時に中国との比較で軍事力の低下、技術に関してはコストを掛けて先端を行っても直ぐに中国に盗まれる。物を製造できない国は国ではない(?)状態。こちらもGlobal Tradeだ。結果、ミドルクラスが縮小しアメリカンドリームは消える。このトレンドは米国企業もシステムを利用してきたっていう側面は十分にある。また政府による不干渉を好む従来の共和党プラットフォームとも相いれない。元上院リーダーのMcConnell等が関税に反対しているのはこの点を考えれば納得がいく。
Global Tradeの弊害は米国の視点からは2000年のWTO加盟以来好き勝手してる中国が主たる犯人。最初から中国対応にフォーカスして他国は一律10%とかすれば分かり易かったとは思うんだけどね。ただ、常に中国は別格扱いなんでReciprocal関税90日の中断もなく中国にはそのまま145%。
関税で時間を稼いでる間にトランプ政権が実現したいって強調しているポイントの製造業回帰は実現可能なんだろうか。製造業回帰って言っても単にアセンブリーを米国が取り返すってことじゃなくて、R&Dや技術革新は製造業に従事していないと徐々に衰退していくっていう危惧に基づきFull Fledgeな機能を米国に置くのが目標。Global Trade初期にはR&Dやエンジニアリングのハイマージンな機能は米国に残し、一方で中国の安い労働力を利用して製造するっていうモデルを想定してたかもしれないけど、いつの間にか技術も取られてしまったって言う反省。実際にどれだけ早く製造業を戻すことができるのかのひとつの問題に、長期に亘る空洞化で製造業回帰に求められるスキルがそもそも米国労働市場に存在するのかっていう問題もある。またオートメーションが徹底してる今日の工場では製造業が米国に多額の投資をしたとしても多くのポーションがロボットに費やされる。この点は国家安全保障の観点からは懸念は少ないかもしれないけど、一般市民の雇用の観点からは製造業回帰イコール爆発的な雇用っていう狙った図式にならないリスクもある。
また、国別のReciprocal関税は米国製造業回帰に必要な機械設備も対象になるリスクもあるんで関税除外品目リストは流動的なものだろう。現になかなかポスティングに至らない中、さっきPCや携帯は中国からの輸入でもReciprocal関税免除みたいな報道が流れていた。
関税はオンだったりオフになったりが激しいんで政権が目指す姿との関係がイマイチ分かり難いけど、結局10%は恒久的な財源に近く、一方Reciprocal部分は交渉材料。ただし国家安全保障の観点から中国は別枠扱いっていうのが大枠だろうか。
Global Reorderは時間との戦い
上述の通り、Global Tradeの不味いトレンドはどこかでリバースさせないと事態は悪化の一途なのは分かってるんで「どこかでリバース」させてGlobal Reorderに持ち込もうとしててそれが「今」!Van Halenいうところの「Right Now. Not tomorrow」?
今回の政策が吉とでるか凶とでるか、は前代未聞なんで誰にも分からないだろう。ただ、この20年~30年のトレンドで米国の視点から弊害が累積しているにもかかわらず、チョイスとしては大胆な施策を講じることができず、同じトレンドに乗ったまま徐々に国家として衰退していくか、前代未聞の策で一気にトレンドをリバースするよう試みるか、って2つの分かれ道。通常はポリティカルに前者になる。結果過去の大国は徐々に衰退している。英国、オランダとかが思い浮かぶけどスペインやオットマンもその部類。古くはローマ帝国もあるしね。各々異なる事情はあったにせよ、巨額の国家財政赤字、国家安全保障の低下、社会政策失敗、は共通している。
後者は…、誰もトライしたことがないんでDestination Unknown。個人的にはもちろん何が起こるか分かる術もないけど、マーケットが期待しているって思われるのは現政権の財務長官Scott Bessentのマクロヘッジファンドで為替や国債の動きを熟知している手腕。Bessentなら市場が混乱し、ヘッジファンドがマージンコールに応じるため手持ちの米国債を多額に手放すであろう点や中国所有の米国債をどう取り扱うか、等は複数のシナリオを想定しているはず。学者っぽいエコノミストはあれこれコメントが多いけど、コロナになった頃やその直後のMMTに基づく巨額の歳出に対するコメント等から見る限り、結局のところ先のことは分かってないケースが多かったんで、今回もレガシーメディアとかで報道されるコメントは確証の得られない眉唾かもしれない情報として処理しておくのがベターかもね。Scott Bessentやトランプおよびその取り巻きは、未だかつて見たことがない大国凋落のトレンドをリバースするっていう離れ業を奇想天外なGlobal Re-orderで実現する掛けで出てるってことになる。
問題は短期的混乱を政権が受け入れるとしても、それがどれほどの規模でどれだけ続くかっていう誰にも分からない問題。中間選挙とかの理由で米国ポリティクスは超短期視野に基づくんで2026年前半には一般市民が経済はTake-offしてるねっていう実感を持たないといけない。レガシーメディアはトランプ政権には統計的に90%超ネガティブ報道(民主党には逆)なんで、米国のレガシーメディアが2016年以降一般市民の多くからニュースソースとしては見捨てられつつあるとは言え、Wall-to-wallのネガティブカバレッジは耳に入るんでこれらのキャンペーンも克服しないといけない。トランプ政権はルビコン川を渡ってしまったのかもって考えると歴史に残るHigh Stakeな状況に居るんだね。
今日は余り専門じゃない通商やGlobal Reorderの話しだったんで私的なひとつのObservationとして軽く読んでおいて下さい。米国ってダイナミックなんでもっと書きたいところだったけどきりがないんでこの辺で。次回は両院一致のBudget Resolution。
Morning Afterっていうと映画ポセイドンアドベンチャーのサントラを思い出すね(そんな古い映画知らないって?)。原曲はMaureen McGovernの郷愁感ある名曲。ポセイドンアドベンチャーって言えばGene Hackmanだけど、先日のSanta Feでの出来事はビックリでした。
映画ポセイドンアドベンチャーでは「Nonnie」っていうチョッとJoni MitchellみたいなArtisticな女の子がMorning Afterを船内のラウンジみたなところでリハっぽく歌ってるシーンがあるけど(バンドメンバーのLooksが70年台前半丸出し(笑))、あれはリップシンクで声はCarol Lynleyだったということ。Maureen、Nonnie(Renee Armand)、Carolって三つ巴で結構ヤヤコシイね。
Liberation DayとGlobal Tax Deal対抗策
で、あんまり脱線しないうちに本題に戻ると、まずLiberation Dayの声明で気づいた点はReciprocalの対象となる貿易相手国の関税、VAT、非関税障壁の話しに「Global Tax Deal」が含まれてなかったこと。そもそもReciprocalの計算は、貿易相手国のエントリーコストではなく米国との貿易収支の均等に基づくRicardianモデルって言われてるんで、計算方法からも相手国がGlobal Tax Dealを導入しているかどうかは検討要素に入ってないことが分かる。関税の話しなんだけど、通商は専門外で、どうしてもまずは法人税関係に気を取られてしまう悪い癖だね。
Global Tax Dealに関しては以前のポスティング(「Global Tax Deal大統領令」と「America First Trade Policy大統領令」)で触れた通り大統領令は大別して2つ。まず一つ目のGlobal Tax Deal大統領令はピラー2を含む域外・差別的課税を可決したり、可決しようとしている国をリストアップして、行政府として法的に取ることができる対抗策オプションを3月21日までに財務長官が大統領に報告するっていうもの。この報告書は公開されてないけど、歳入委員会のポスティングに、財務長官がタイムリーに報告を終えた点を評価しているコメントが掲載されてたんでBessent長官は期日に報告を終えてるって推測される。報告書そのもののコピーは海賊版でも流出してないんで見ることはできず内容はベールに包まれたままだ。う~ん、魔法の鏡で見てみたい。もしもブルーにしてたら偶然そうに電話する?
この手の局面で行政府として法的に取ることができる対抗策の代表って言えば他でもない関税だから、Liberation Dayの公表にこの点が加味される可能性もあるのかなって思ってたんだけど、実際には特に言及はなかった。別枠で検討中かもね。トランプ政権は「やるぞ」って言ってたことはどれだけ物議を醸しても基本やってきてるんで何らかの対処は取るんだろう。OECD加盟国やIFが近々に協議するとかいう話しは聞くけど具体的には公表されてない感じ。いずれにしても仮に現時点で集まったとしても関税の話しが充満しているんでGlobal Tax Dealどころの話しじゃないしね。
もう一つのAmerica First Trade Policy大統領令でもGlobal Tax Dealに触れてるけど、こちらは他でもないsection 891の対象となり得る国を4月1日を期限に財務長官にリストアップするよう求めているもの。以前から触れている通り、section 891の認定は単に域外課税や差別的課税を制度として持っているっていう以上のものが求められるんでどんなリストになってるかこちらも魔法の鏡の世界だけど、内容はともかくこちらもリストも提出済みって考えていいだろう。ポスティング中のsection 899案はsection 891をModernizeしてるものだから、もしかしたらsection 899の立法動向、例えばScoring可否の観点からBudget Reconciliationに入るのかどうか、を見てそちらでいけそうだったらsection 899に注力するのかもね。Section 891は既に法律にあるんで、America First Trade Policyで問題国のリストアップが完了してるとすりば、直ぐにでも発動可能でバックストップ的に取ってあるのかもしれない。
税制改正動向
関税があったりなかったりして米国経済に不確実性が増している中、少なくとも短期的な関税ショックを中和するため国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになった。そんな中、上院は以前に可決していたBudget Resolutionの代わりに新たな下院のResolutionを改訂した新上院Resolutionを通している。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式にBudget Resolutionに基づく立法プロセスがキックオフ。両院Budget Resolutionの内容に関しては、今後予想される動向や関税との関係も含めて次回ポスティングで別特集してみたい。
僕の専門分野は60年台後半から80年台までのギタリストのテクニック分析と米国のIncome Taxなんで、関税の話しは専門外。なんで関税に関するコメントは米国で一般市民と暮らしている中で見えるポリティクスや、投資銀行や法曹界の集まりで聞いた話しをベースにしてるんで、総合的な分析を提供するような大それた意図はないからねって予め断っておく。ただ、日本で米国の話しを聞く限り、米国の一般トレンドの実態が伝わってないことが多いとは感じるんで肌感覚の観測として参考になればなによりです。
トランプと米国関税の歴史
トランプを語る際に、彼の意見に賛成するかどうかは別として、トランプが思ってることややりたいことをそのまま普通に(延々と)語るっていう、政局やオーディエンスを見て話しを変えたり(カマラハリスみたいにアクセントまで変えたり…)するポリティシャンとは別のAuthenticityを一つの特徴として挙げることができる。
この一貫した信念は、通商面で米国が他国にいいように利用されてて米国政府の無策も手伝い、結果として米国が凋落しているんでどこかで方向転換しないといけない、っていうスタンスも同じ。トランプ1.0の2016年どころか今から遡ること40年近く昔の1988年には当時不動産業で一躍有名になっていたヤング(って言っても40歳くらい)のトランプがthe Oprah Winfreyのショーで米国の不均衡な貿易収支を大きな問題としている。凄い若いけど言ってることは基本、Liberation DayのRose Gardenの趣旨と同じだ。トランプの通商ポリシーはRobert LighthizerやPeter Navarroに影響されて形成されたって思われてるかもしれないけど、そうじゃないのが分かる。トランプはOprahのショーでのやり取り以外にも当時から既に大手新聞に公開書簡を送りつけて米国の通商・国防ポリシーに警鐘を鳴らしていた。Oprahのショーのやり取りは最近YouTubeで多く閲覧されてるんで興味あったら見てみると面白い。
トランプの一貫性を見ることができる40年前の出来事。当時の問題国はもちろん日本。米国にあれだけ経済的に恐れられるってなんか懐かしいね。Super 301が連日新聞の一面で報道され、お茶の間に米国通商代表(USTR)っていう機能とかカーラ・ヒルズの姿が定着していたあの頃。
当時、米国と交渉したノウハウ(プラス恐怖?)は日本政府や産業界に継承されてるはずで、以前のポスティングでも触れた通り対米通商交渉に日本は「一日の長」があるって言えるかもね。そのお陰かどうか分かんないけど、Reciprocal関税に対して真っ先にトランプ政権に交渉を提案し、米国側はそれに応じてBessent財務長官とUSTRのGreer自らが交渉に関与するってことで、ここ数日、米国では同盟国の模範(?)みたいに報道されたりしてる。「中国とは違って…」っていう切り口。ただ、国家間の同盟は国家の自己利益に基づくんで相手国による称賛には要注意かもね。イスラエルのNatanyahu大統領は既にトランプ、Bessent、Greerを訪問してイスラエル側の米国製品に対する関税撤廃を提案。
ちなみに日本が当時直面してた米国側の対抗措置は上述の通りSuper 301っていう措置だったけど、Liberation Dayを含む今回のトランプ関税の根拠条文とは異なる。関税も歳入法なんで連邦憲法下では三権分立上、議会に制定の権利がある。1913年に憲法修正(16th Amendment、Mooreの世界だね)があるまで連邦政府は所得税(Income Tax)を課す権利はなかったんで(正確にはそのような税金は州の人口で負担を按分しないといけないっていうことで実質制定不可能だったんで)、それまでの連邦の歳入は主に関税、酒税、タバコ税とかだった。そのままにしておけば連邦政府の肥大化もなかったはずなんだけど、戦費の関係で1913年に憲法が修正され、その後、連邦の歳入に占める関税の比率は急激に低下した。それで議会が興味を失った訳じゃないんだろうけど、議会は複数の法律で徐々に大統領に関税策定権を委譲している。
具体的にはまず1962年の「Trade Expansion Act」。このTrade Expansion Actのsection 232は国家安全保障の視点から「特定品目」を取り締まるもの。品目単位での締め付けが特徴で、トランプの鉄鋼、アルミ、自動車に対する25%っていう関税(Liberation Dayより前に発表されてたもの)がこれだ。最近section 232っていう条文を良く耳にするけど、税法のInternal Revenue Codeでは200番台っていうとSubchapter BのPart VIIからXIまでをカバーしてて大概Deductionできる費用そうでない費用とかCapitalizationの世界だけど幸いにも今日のIRCにsection 232は存在しない。
で次は1974年の「Trade Act」。不公正な通商政策を取り締まるもので有名なのがsection 301。USTRが広範な調査権を持つ。そして1977年の「International Emergency Economic Powers Act」。国家安全保障に対する重大な脅威への対処で「IEEPA」っていう用語はまさにこれ。Liberation Dayに公表された10%のUniversalベースラインTariffも(中国以外には)90日間施行が中断されているReciprocal関税も、双方ともこのIEEPAに基づく。
日本がその昔苦しんだSuper 301っていうのは実はTrade Actのsection 301そのものではなく、 1988年のOmnibus Trade and Competitiveness Actで時限的にsection 301を強化したもの。Superっていうのは強化版っていう意味の俗語じゃないかな。
Section 232と異なりsection 301は「もちろん」IRCにも存在する。Subchapter Cのトップバッターだ。Distributionがいつ配当になるかとかを規定しているDay-to-dayに適用がある条文だけど、302との関係とかJohnsonの考え方とか実はDeep。Johnsonと言えば先日のPTEP財務省規則案でPTEPアカウントはUS Shareholderベース(しかも連結納税グループはグループ単位。これは驚き)だけど、株式簿価(961(a))はJohnsonベースなんで、異なるブロック、例えば後から追加出資とか、のCFC株式を所有するUS ShareholderはPTEPのDistributionがあると思わぬ結果になる。いつかPTEP規則案も話したいけどいつになることでしょうか。
なぜ関税?(Reprise)
インフレや米国企業のサプライチェーンに影響があるにもかかわらず、なぜここまでして関税?っていう点は以前3月9日の「トランプJoint Sessionスピーチ・税制改正・関税」の「なぜ関税?」っていう部分でチラッと米国ドルのReserve Currencyが結果「Resource Curseになり」国家として取り返しがつかないところに来てしまい、相当な無理を覚悟に大きく舵を切らないと米国は滅びるからかなって憶測的に触れたけど、Liberation Day前後の関税を取り巻く政権重鎮、特に辛抱強く背景を語る財務長官Bessent、もう少しAggressiveな商務長官Lutnickらの話しから、まさにそこに理由があるって確信が持てた気がする。
Vance副大統領が2023年に発言していた内容と同様、米国のResource Curse、すなわちドルがReserve Currencyっていうとてつもない特権に胡坐をかいてるうちに既に取り返しがつかないレベルの国家財政悪化に陥り、またその副産物として米国の製造業が空洞化してしまったっていうトレンドをどこかで反転させないと大変なことになる、っていう危機感だ。株価や物価は少なくとも短期的に未知の影響を受けるだろうから短期サイクルで動く米国ポリティクス的に通常の政権では手を付けることはできないし実行する気概はないだろう。また現状のシステムに既得権を持つ者も多いから強力なプッシュバックがある。
そんな環境で通常の政権であれば、長期的に国のためにならないって分かってても大きな混乱を伴いかねない経済政策は取れないんで、どうしてもBusiness as usualで続行となる。賃金が低く労働環境も怪しい国の製品を安いという理由で活用。Global Tradeだ。そして米国は国債を発行し続け、その間、連邦政府はどんどん大きくなり更に巨額の歳出を繰り返す。ドルがReserve Currencyでなくなるまでパーティーが続いていくような状況。財政の極端な悪化と同時に中国との比較で軍事力の低下、技術に関してはコストを掛けて先端を行っても直ぐに中国に盗まれる。物を製造できない国は国ではない(?)状態。こちらもGlobal Tradeだ。結果、ミドルクラスが縮小しアメリカンドリームは消える。このトレンドは米国企業もシステムを利用してきたっていう側面は十分にある。また政府による不干渉を好む従来の共和党プラットフォームとも相いれない。元上院リーダーのMcConnell等が関税に反対しているのはこの点を考えれば納得がいく。
Global Tradeの弊害は米国の視点からは2000年のWTO加盟以来好き勝手してる中国が主たる犯人。最初から中国対応にフォーカスして他国は一律10%とかすれば分かり易かったとは思うんだけどね。ただ、常に中国は別格扱いなんでReciprocal関税90日の中断もなく中国にはそのまま145%。
関税で時間を稼いでる間にトランプ政権が実現したいって強調しているポイントの製造業回帰は実現可能なんだろうか。製造業回帰って言っても単にアセンブリーを米国が取り返すってことじゃなくて、R&Dや技術革新は製造業に従事していないと徐々に衰退していくっていう危惧に基づきFull Fledgeな機能を米国に置くのが目標。Global Trade初期にはR&Dやエンジニアリングのハイマージンな機能は米国に残し、一方で中国の安い労働力を利用して製造するっていうモデルを想定してたかもしれないけど、いつの間にか技術も取られてしまったって言う反省。実際にどれだけ早く製造業を戻すことができるのかのひとつの問題に、長期に亘る空洞化で製造業回帰に求められるスキルがそもそも米国労働市場に存在するのかっていう問題もある。またオートメーションが徹底してる今日の工場では製造業が米国に多額の投資をしたとしても多くのポーションがロボットに費やされる。この点は国家安全保障の観点からは懸念は少ないかもしれないけど、一般市民の雇用の観点からは製造業回帰イコール爆発的な雇用っていう狙った図式にならないリスクもある。
また、国別のReciprocal関税は米国製造業回帰に必要な機械設備も対象になるリスクもあるんで関税除外品目リストは流動的なものだろう。現になかなかポスティングに至らない中、さっきPCや携帯は中国からの輸入でもReciprocal関税免除みたいな報道が流れていた。
関税はオンだったりオフになったりが激しいんで政権が目指す姿との関係がイマイチ分かり難いけど、結局10%は恒久的な財源に近く、一方Reciprocal部分は交渉材料。ただし国家安全保障の観点から中国は別枠扱いっていうのが大枠だろうか。
Global Reorderは時間との戦い
上述の通り、Global Tradeの不味いトレンドはどこかでリバースさせないと事態は悪化の一途なのは分かってるんで「どこかでリバース」させてGlobal Reorderに持ち込もうとしててそれが「今」!Van Halenいうところの「Right Now. Not tomorrow」?
今回の政策が吉とでるか凶とでるか、は前代未聞なんで誰にも分からないだろう。ただ、この20年~30年のトレンドで米国の視点から弊害が累積しているにもかかわらず、チョイスとしては大胆な施策を講じることができず、同じトレンドに乗ったまま徐々に国家として衰退していくか、前代未聞の策で一気にトレンドをリバースするよう試みるか、って2つの分かれ道。通常はポリティカルに前者になる。結果過去の大国は徐々に衰退している。英国、オランダとかが思い浮かぶけどスペインやオットマンもその部類。古くはローマ帝国もあるしね。各々異なる事情はあったにせよ、巨額の国家財政赤字、国家安全保障の低下、社会政策失敗、は共通している。
後者は…、誰もトライしたことがないんでDestination Unknown。個人的にはもちろん何が起こるか分かる術もないけど、マーケットが期待しているって思われるのは現政権の財務長官Scott Bessentのマクロヘッジファンドで為替や国債の動きを熟知している手腕。Bessentなら市場が混乱し、ヘッジファンドがマージンコールに応じるため手持ちの米国債を多額に手放すであろう点や中国所有の米国債をどう取り扱うか、等は複数のシナリオを想定しているはず。学者っぽいエコノミストはあれこれコメントが多いけど、コロナになった頃やその直後のMMTに基づく巨額の歳出に対するコメント等から見る限り、結局のところ先のことは分かってないケースが多かったんで、今回もレガシーメディアとかで報道されるコメントは確証の得られない眉唾かもしれない情報として処理しておくのがベターかもね。Scott Bessentやトランプおよびその取り巻きは、未だかつて見たことがない大国凋落のトレンドをリバースするっていう離れ業を奇想天外なGlobal Re-orderで実現する掛けで出てるってことになる。
問題は短期的混乱を政権が受け入れるとしても、それがどれほどの規模でどれだけ続くかっていう誰にも分からない問題。中間選挙とかの理由で米国ポリティクスは超短期視野に基づくんで2026年前半には一般市民が経済はTake-offしてるねっていう実感を持たないといけない。レガシーメディアはトランプ政権には統計的に90%超ネガティブ報道(民主党には逆)なんで、米国のレガシーメディアが2016年以降一般市民の多くからニュースソースとしては見捨てられつつあるとは言え、Wall-to-wallのネガティブカバレッジは耳に入るんでこれらのキャンペーンも克服しないといけない。トランプ政権はルビコン川を渡ってしまったのかもって考えると歴史に残るHigh Stakeな状況に居るんだね。
今日は余り専門じゃない通商やGlobal Reorderの話しだったんで私的なひとつのObservationとして軽く読んでおいて下さい。米国ってダイナミックなんでもっと書きたいところだったけどきりがないんでこの辺で。次回は両院一致のBudget Resolution。
Wednesday, April 2, 2025
(号外♯2) 「Liberation Day」の関税大統領令
またしてもsection 899案の進展を妨たげるかのようなニュースがあるんで短いけど特番。今日、4月2日は輸入関税強化に基づき米国製造業が復活するのを記念する「Liberation Day」ってことで午後4時のホワイトハウスの発表を聞いた。発表を聞いたり大統領令を読むまでは、なんだかんだ言って今回もセコ目の関税でお茶を濁す、なんてことはないよねって半信半疑だったんだけど蓋を開けてみたらナンと今度こそ本当に10%のUniversal関税および国別の報復関税が公表された。
大統領令出たばっかりで結構長くてチラッとななめ読みしただけなんだけど、間違い覚悟で速報しておくとまず4月5日から全世界10%一律関税。4月9日からは各国の関税・非関税障壁を加味して国別の報復関税適用開始。日本は24%。ちなみにEUは20%で中国は34%だ。ただし、既に2月10日に公表され、3月12日から25%の関税が適用されている鉄鋼・アルミは25%のまま。自動車も同様に3月26日に公表され、明日の4月3日から25%の関税が適用されるんでそちらの関税が敢行され、Liberation Dayの税率適用はない。また結構な品目が免除されている。目立つところでは製薬は免除みたい。他にも銅、セミコン、木材、重要な鉱物、資源等が免除されているように見える。Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)に基づく免除品目リストは37ページに渡るんで結構長いね。
超取り急ぎ、でした。
大統領令出たばっかりで結構長くてチラッとななめ読みしただけなんだけど、間違い覚悟で速報しておくとまず4月5日から全世界10%一律関税。4月9日からは各国の関税・非関税障壁を加味して国別の報復関税適用開始。日本は24%。ちなみにEUは20%で中国は34%だ。ただし、既に2月10日に公表され、3月12日から25%の関税が適用されている鉄鋼・アルミは25%のまま。自動車も同様に3月26日に公表され、明日の4月3日から25%の関税が適用されるんでそちらの関税が敢行され、Liberation Dayの税率適用はない。また結構な品目が免除されている。目立つところでは製薬は免除みたい。他にも銅、セミコン、木材、重要な鉱物、資源等が免除されているように見える。Harmonized Tariff Schedule of the United States (HTSUS)に基づく免除品目リストは37ページに渡るんで結構長いね。
超取り急ぎ、でした。
Friday, March 28, 2025
(号外)ナントUTPR追加対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」も下院再提出
Section 899法案の話しもそろそろ大詰めで、終わったら税制改正が本格化する前の隙間を縫ってインバウンドPracticeとしては欠かすことができないYA Globalの話しでもとか思ってワクワクしてたら、ナントSection 899法案(「the Defending American Jobs and Investment Act」)に加えて、さらなるGlobal Tax Deal対抗法案「The Unfair Tax Prevention Act」が下院に再提出された。この法案はどうなっちゃうんだろうって注意はしてたけど急な再提出でビックリ。
このthe Unfair Tax Prevention Actは先の899法案同様に2023年7月に一度H.R.4695 (118th)として提出されて、提出当時はその厳しい内容に驚きだったけど、それが昨日3月27日に下院に今度はH.R. 2423 (119th)として再提出された。法案のスポンサーは以前も今回も下院歳入委員の一人Ron Estes(R-KA)だけど、下院歳入委員会共和党議員全員が賛同している。ちょうど899法案が元々提出されたのも2023年5月だから2か月空けて時間差攻撃するフォーメーションなのかな。
2023年バージョンと同様の内容って想定されるけど、899法案がsection 899を新設するのに対し、the Unfair Tax Prevention ActはBEATをSuper-chargeする規定。したがって新たなSectionが生まれるんじゃなくて、既存のBEAT、すなわちsection 59Aに追加Subsectionが加えられる形で規定される。そのSuper-chargeぶりがなかなか激しい。従来のBEATをChargePointやblinkとかの「Destination Charger」だとするとthe Unfair Tax Prevention Actは純正のTesla Supercharger級。
899法案のポスティングが終わったら、続いてこのSuper-chargeのBEATに関しては詳細に触れたいけど、チラッと頭出ししておくとUTPRを含むExtraterritorial Taxを導入している国の主体に支配される主体は「Foreign-Owned Extraterritorial Tax Regime Entities(「FETR Entities」)って認定される。国際紛争時の制裁対象国やバッテリー製造時の鉱物輸入時に指定される懸念国(FCOC)、またはテロリスト団体みたいな勢い。で、このFETR EntitiesにはBase Erosion Benefitが3%かどうかとか売上高が$500MかにかかわらずBEATを適用し、従来のBEAT法で免除されてる支払い、例えばSCM適格のサービスFeeその他もBase Erosion Benefitと取り扱うっていうもの。ここからが凄いけど、ナント禁じ手のCOGSの50%もBase Erosion Benefit扱い。COGSの否認は憲法的に問題があり得る点は「バイデン政権「グリーンブック」で増税案詳細公表(4) COGSとSHIELD」で以前触れたけど(SHIELDとか存在自体忘れてました)、実は現状のBEATもInversionした法人にはCOGSもBase Erosion Benefitとするっていう懲罰規定がある。って考えると半分で済んで御の字なのかな?
再提出に共催している下院歳入委員メンバーには委員長でsection 899法案のスポンサーのJason Smithも当然入ってることから、section 899と相互排他的な関係にあるのではなく、補完関係にあり両方一気に立法化を目指すっていうアプローチに見える。Section 891や899と大きく異なるのはUTPRを導入した国に所有される「米国法人」がFETR EntitiesとしてSuper-charge BEATの対象になる点。ついに本丸に攻め入られた感じだ。金利、ロイヤルティ、配当の源泉税が50%で、仕入れに25%関税かかってその上仕入れ半分がBEAT目的で損金不算入じゃ商売にならないよね。
という訳でProvocativeな展開だったんで取り急ぎ号外でポスティングしておきます。
このthe Unfair Tax Prevention Actは先の899法案同様に2023年7月に一度H.R.4695 (118th)として提出されて、提出当時はその厳しい内容に驚きだったけど、それが昨日3月27日に下院に今度はH.R. 2423 (119th)として再提出された。法案のスポンサーは以前も今回も下院歳入委員の一人Ron Estes(R-KA)だけど、下院歳入委員会共和党議員全員が賛同している。ちょうど899法案が元々提出されたのも2023年5月だから2か月空けて時間差攻撃するフォーメーションなのかな。
2023年バージョンと同様の内容って想定されるけど、899法案がsection 899を新設するのに対し、the Unfair Tax Prevention ActはBEATをSuper-chargeする規定。したがって新たなSectionが生まれるんじゃなくて、既存のBEAT、すなわちsection 59Aに追加Subsectionが加えられる形で規定される。そのSuper-chargeぶりがなかなか激しい。従来のBEATをChargePointやblinkとかの「Destination Charger」だとするとthe Unfair Tax Prevention Actは純正のTesla Supercharger級。
899法案のポスティングが終わったら、続いてこのSuper-chargeのBEATに関しては詳細に触れたいけど、チラッと頭出ししておくとUTPRを含むExtraterritorial Taxを導入している国の主体に支配される主体は「Foreign-Owned Extraterritorial Tax Regime Entities(「FETR Entities」)って認定される。国際紛争時の制裁対象国やバッテリー製造時の鉱物輸入時に指定される懸念国(FCOC)、またはテロリスト団体みたいな勢い。で、このFETR EntitiesにはBase Erosion Benefitが3%かどうかとか売上高が$500MかにかかわらずBEATを適用し、従来のBEAT法で免除されてる支払い、例えばSCM適格のサービスFeeその他もBase Erosion Benefitと取り扱うっていうもの。ここからが凄いけど、ナント禁じ手のCOGSの50%もBase Erosion Benefit扱い。COGSの否認は憲法的に問題があり得る点は「バイデン政権「グリーンブック」で増税案詳細公表(4) COGSとSHIELD」で以前触れたけど(SHIELDとか存在自体忘れてました)、実は現状のBEATもInversionした法人にはCOGSもBase Erosion Benefitとするっていう懲罰規定がある。って考えると半分で済んで御の字なのかな?
再提出に共催している下院歳入委員メンバーには委員長でsection 899法案のスポンサーのJason Smithも当然入ってることから、section 899と相互排他的な関係にあるのではなく、補完関係にあり両方一気に立法化を目指すっていうアプローチに見える。Section 891や899と大きく異なるのはUTPRを導入した国に所有される「米国法人」がFETR EntitiesとしてSuper-charge BEATの対象になる点。ついに本丸に攻め入られた感じだ。金利、ロイヤルティ、配当の源泉税が50%で、仕入れに25%関税かかってその上仕入れ半分がBEAT目的で損金不算入じゃ商売にならないよね。
という訳でProvocativeな展開だったんで取り急ぎ号外でポスティングしておきます。
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (8)
前回のポスティングでは、Section 899法案に規定される域外課税や差別的課税のうち「Extraterritorial Tax」の定義に触れた。その定義はGlobal Tax DealのUTPRをReverse Engineeringしたと思われるほどUTPRにピッタリくるもの。域外課税「または」差別的課税のいずれかの税法があるとSection 899の対抗措置の適用対象国になるんで、結果としてUTPRを持ってるとほぼ自動的に域外課税制度を持っていると取り扱われてGame Over。
で、今日はもう一方の差別的課税の定義に行くけど、その前に例によってVan HalenのSecond Albumに収録されているギターの凄さ、じゃなくて税制改正動向について。
Budget Resolutionアップデート
相変わらず下院・上院間で意見調整On-Going。でも、さすがにいつまでも意見調整ばかりじゃ不味いっていうプレッシャーが日に日に強くなる中、3月25日に「Big 6」首脳会談が行われた。Bix 6って一昔前(相当前?)の会計事務所みたい。僕が初めてGlobal Accounting Firmの存在を知ったころはBig 8って言われててどこもFirm名がExoticで「どんなとこなんだろう~」って思ったりしてた。Waterhouseは水槽の家か…とか。その後、確かToucheとDHSが合併してDT(日本で「デトロイト・タッチ」とか読み間違えられたり(苦笑))になり、EWとAYが合併してBig 6になったんだよね。さらにPWとCoopersが合併してBig 5時代が訪れ、AAが消滅して今日のBig 4になってる。これ以上減ると独禁法とかで問題なるって言われててBig 1になることはない。
で、米国議会・大統領府のBig 6では従来から下院が希望している1‐Trackの「One Big Beautiful Bill」(会計事務所と違ってBig 1)の早期可決に向けての党内戦略が話し合われたらしい。ちなみにこのBig 6って下院議長(Mike Johnson)、上院リーダー(John Thune)、下院Ways and Means Committee委員長(Jason Smith)、上院Finance Committee委員長(Mike Crapo)、そして行政府から財務長官(Scott Bessent)、National Economic Council Director(Kevin Hassett)っていう陣容。タイムラインとしてはここ3週間以内に両院一致のBudget Resolutionを可決しその後は速攻で税制改正そのものも可決するっていうもの。
両院で意見調整しないといけない重要ポイントは複数あるけど、代表的もののひとつはTCJAの失効規定延長を恒久化するのか(上院)、基本10年のBudget Window内の時限延長とするのか(下院)っていう争点。そのサブセットの議論として失効前のTCJA規定の延長はコストと数えない「Current Policy Baseline」の適用がBudget Reconciliationルールに違反しないかどうかっていう検討がある。これは過半数で予算案を通す上院側の問題で、どんな法律をBudget Reconciliationの枠内で通すことができるかを判断する「Parliamentary」っていう者と意見調整してる最中。これが可能になると少なくとも「見た目」はTCJA失効規定恒久延長にBudget Reconciliation目的でコストが掛からないことになり、恒久化に加えてトランプが言っている米国製造業15%税率、チップ、残業代、公的年金受給非課税とかの追加Goodiesを盛り込む道が開ける。ただ、実際に歳入が減る点はCurrent Policy Baselineでも従来のCurrent Law Baseline(Budget Reconciliation目的で延長コストを歳入減として加算する考え方)でも変わらないんで下院のDeficit Hawk派には当然受けが悪い。
これってまだBudget Resolutionの話しなんで、個別の法案以前の問題で両院一致のBudget Resolutionが可決できても、それで調整は終わりじゃないし、むしろそれから本番の調整が始まるって言う方が正しい。逆に言えばBudget Resolutionも両院一致のものがでないようじゃスタートラインにも立ってないってことになる。ということでまだまだDestination Unknown(Missing Persons!)
差別的課税(Discriminatory Tax)
前回チラッと頭出しした通り、section 899法案のDiscriminatory Taxは4タイプあって、それに5つの例外が規定されている。Extraterritorial Tax同様、条文の定義なんで英語で説明する。 まず一つ目は「if such tax applies to items of income that would not be considered to be from sources within the foreign country under the rules of part I of this subchapter if such part were applied by treating such foreign country as though it were the United States」というもの。この条文はsection 899の一部なんで「this subchapter」っていうのは899が属するSubchapterのこと。Internal Revenue Codeは連邦法のTitle 26だけど、その傘下にSubtitle、Chapter、Subchapter、Part、Subpart…って続いていく構成。で、section 899はSubtitle A、Chapter 1のSubchapter Nに属する。IRCのストラクチャーに明るい読者は分かると思うけど、Subchapter NはIRCの中でもクロスボーダー系の法律が規定されている部分。Sub F、GILTI、FTC全てSubchapter N傘下の規則だ。このSubchapter NはPart IからPart Vで構成されsection番号で言うと861~1,000までをカバーしてる。で、上の定義の「Part I」っていうのはsection 861から865まで。つまりSourcing(所得の源泉地)規定だ。クロスボーダータックスやっている人はsection 865(e)(2)とか大好きなのでは…?。え~大嫌いって?かもね。
これらのことから上の定義が言おうとしてるのは「仮に米国のSourcing規定を適用してみて、所得の源泉地が課税国でないにもかかわらず課税を行使する税制」はDiscriminatoryというもの。したがってこの定義を正確に理解するには米国税法のSubchapter NのPart I、すなわちSourcing規定を知る必要があるよね。実はこの定義、2022年に一旦最終化されてその後実質撤回されたFTC規則の「Jurisdictional Nexus」(これは規則案時の名称で後に「Attribution Rule」って改名されてるけどJurisdictional Nexusの方が分かり易い)に似てる。どちらもDSTを念頭に置いたもの。DSTって名前がついてなくても類似する税制はこれに属する。インドのEqualizationタックスとか。
で、2つ目は「if such tax is imposed on a base other than net income and is not computed by permitting recovery of costs and expenses」。これもクラシックなFTCの対象として認められる「Income Tax」の定義そのもの。昔から「US senseでincome taxか?」っていう概念があったけど、2022年のFTC最終規則ではそれをRefineして「Net Gain」要件って言ってて、まさにそれ。グロス所得に課税するのはNGってことで、これもDSTがターゲット。
3つ目は「if such tax is exclusively or predominantly applicable, in practice or by its terms, to nonresident individuals and foreign corporations or partnerships (as determined under rules similar to paragraphs (4) and (5) of section 7701(a) by treating the foreign country as though it were the United States) because of the application of revenue thresholds, exemptions or exclusions for taxpayers subject to such foreign country’s corporate income tax, or restrictions of scope that ensure that substantially all residents (other than foreign corporations and partnerships (as so determined)) supplying comparable goods or services are excluded from the application of such tax」。結構長いけど、法的に外国人・外国法人のみに適用があったり、売上基準や自国の法人税対象者は免除とかの条件で大概において自国の納税者には課税が及ばないよう意図されている税制のこと。米国のテックをターゲットにしてるような税制が典型になる。つまりこれもDSTがターゲットだろう。
そして最後の4つ目は「if such tax is not treated as an income tax under the laws of such foreign country or is otherwise treated by such foreign country as outside the scope of any agreements that are in force between such foreign country and one or more other jurisdictions for the avoidance of double taxation with respect to taxes on income」。これは課税国が「この税金はIncome Taxではないんで条約でカバーされるタイプの税金ではないんで条約違反ではありません」っていうような税金が対象。 これら4つのうち一つにでも抵触すると(後述の例外にならなければ)Discriminatory Taxになる。で、例外だけど長くなってきたんでここから次回。
で、今日はもう一方の差別的課税の定義に行くけど、その前に例によってVan HalenのSecond Albumに収録されているギターの凄さ、じゃなくて税制改正動向について。
Budget Resolutionアップデート
相変わらず下院・上院間で意見調整On-Going。でも、さすがにいつまでも意見調整ばかりじゃ不味いっていうプレッシャーが日に日に強くなる中、3月25日に「Big 6」首脳会談が行われた。Bix 6って一昔前(相当前?)の会計事務所みたい。僕が初めてGlobal Accounting Firmの存在を知ったころはBig 8って言われててどこもFirm名がExoticで「どんなとこなんだろう~」って思ったりしてた。Waterhouseは水槽の家か…とか。その後、確かToucheとDHSが合併してDT(日本で「デトロイト・タッチ」とか読み間違えられたり(苦笑))になり、EWとAYが合併してBig 6になったんだよね。さらにPWとCoopersが合併してBig 5時代が訪れ、AAが消滅して今日のBig 4になってる。これ以上減ると独禁法とかで問題なるって言われててBig 1になることはない。
で、米国議会・大統領府のBig 6では従来から下院が希望している1‐Trackの「One Big Beautiful Bill」(会計事務所と違ってBig 1)の早期可決に向けての党内戦略が話し合われたらしい。ちなみにこのBig 6って下院議長(Mike Johnson)、上院リーダー(John Thune)、下院Ways and Means Committee委員長(Jason Smith)、上院Finance Committee委員長(Mike Crapo)、そして行政府から財務長官(Scott Bessent)、National Economic Council Director(Kevin Hassett)っていう陣容。タイムラインとしてはここ3週間以内に両院一致のBudget Resolutionを可決しその後は速攻で税制改正そのものも可決するっていうもの。
両院で意見調整しないといけない重要ポイントは複数あるけど、代表的もののひとつはTCJAの失効規定延長を恒久化するのか(上院)、基本10年のBudget Window内の時限延長とするのか(下院)っていう争点。そのサブセットの議論として失効前のTCJA規定の延長はコストと数えない「Current Policy Baseline」の適用がBudget Reconciliationルールに違反しないかどうかっていう検討がある。これは過半数で予算案を通す上院側の問題で、どんな法律をBudget Reconciliationの枠内で通すことができるかを判断する「Parliamentary」っていう者と意見調整してる最中。これが可能になると少なくとも「見た目」はTCJA失効規定恒久延長にBudget Reconciliation目的でコストが掛からないことになり、恒久化に加えてトランプが言っている米国製造業15%税率、チップ、残業代、公的年金受給非課税とかの追加Goodiesを盛り込む道が開ける。ただ、実際に歳入が減る点はCurrent Policy Baselineでも従来のCurrent Law Baseline(Budget Reconciliation目的で延長コストを歳入減として加算する考え方)でも変わらないんで下院のDeficit Hawk派には当然受けが悪い。
これってまだBudget Resolutionの話しなんで、個別の法案以前の問題で両院一致のBudget Resolutionが可決できても、それで調整は終わりじゃないし、むしろそれから本番の調整が始まるって言う方が正しい。逆に言えばBudget Resolutionも両院一致のものがでないようじゃスタートラインにも立ってないってことになる。ということでまだまだDestination Unknown(Missing Persons!)
差別的課税(Discriminatory Tax)
前回チラッと頭出しした通り、section 899法案のDiscriminatory Taxは4タイプあって、それに5つの例外が規定されている。Extraterritorial Tax同様、条文の定義なんで英語で説明する。 まず一つ目は「if such tax applies to items of income that would not be considered to be from sources within the foreign country under the rules of part I of this subchapter if such part were applied by treating such foreign country as though it were the United States」というもの。この条文はsection 899の一部なんで「this subchapter」っていうのは899が属するSubchapterのこと。Internal Revenue Codeは連邦法のTitle 26だけど、その傘下にSubtitle、Chapter、Subchapter、Part、Subpart…って続いていく構成。で、section 899はSubtitle A、Chapter 1のSubchapter Nに属する。IRCのストラクチャーに明るい読者は分かると思うけど、Subchapter NはIRCの中でもクロスボーダー系の法律が規定されている部分。Sub F、GILTI、FTC全てSubchapter N傘下の規則だ。このSubchapter NはPart IからPart Vで構成されsection番号で言うと861~1,000までをカバーしてる。で、上の定義の「Part I」っていうのはsection 861から865まで。つまりSourcing(所得の源泉地)規定だ。クロスボーダータックスやっている人はsection 865(e)(2)とか大好きなのでは…?。え~大嫌いって?かもね。
これらのことから上の定義が言おうとしてるのは「仮に米国のSourcing規定を適用してみて、所得の源泉地が課税国でないにもかかわらず課税を行使する税制」はDiscriminatoryというもの。したがってこの定義を正確に理解するには米国税法のSubchapter NのPart I、すなわちSourcing規定を知る必要があるよね。実はこの定義、2022年に一旦最終化されてその後実質撤回されたFTC規則の「Jurisdictional Nexus」(これは規則案時の名称で後に「Attribution Rule」って改名されてるけどJurisdictional Nexusの方が分かり易い)に似てる。どちらもDSTを念頭に置いたもの。DSTって名前がついてなくても類似する税制はこれに属する。インドのEqualizationタックスとか。
で、2つ目は「if such tax is imposed on a base other than net income and is not computed by permitting recovery of costs and expenses」。これもクラシックなFTCの対象として認められる「Income Tax」の定義そのもの。昔から「US senseでincome taxか?」っていう概念があったけど、2022年のFTC最終規則ではそれをRefineして「Net Gain」要件って言ってて、まさにそれ。グロス所得に課税するのはNGってことで、これもDSTがターゲット。
3つ目は「if such tax is exclusively or predominantly applicable, in practice or by its terms, to nonresident individuals and foreign corporations or partnerships (as determined under rules similar to paragraphs (4) and (5) of section 7701(a) by treating the foreign country as though it were the United States) because of the application of revenue thresholds, exemptions or exclusions for taxpayers subject to such foreign country’s corporate income tax, or restrictions of scope that ensure that substantially all residents (other than foreign corporations and partnerships (as so determined)) supplying comparable goods or services are excluded from the application of such tax」。結構長いけど、法的に外国人・外国法人のみに適用があったり、売上基準や自国の法人税対象者は免除とかの条件で大概において自国の納税者には課税が及ばないよう意図されている税制のこと。米国のテックをターゲットにしてるような税制が典型になる。つまりこれもDSTがターゲットだろう。
そして最後の4つ目は「if such tax is not treated as an income tax under the laws of such foreign country or is otherwise treated by such foreign country as outside the scope of any agreements that are in force between such foreign country and one or more other jurisdictions for the avoidance of double taxation with respect to taxes on income」。これは課税国が「この税金はIncome Taxではないんで条約でカバーされるタイプの税金ではないんで条約違反ではありません」っていうような税金が対象。 これら4つのうち一つにでも抵触すると(後述の例外にならなければ)Discriminatory Taxになる。で、例外だけど長くなってきたんでここから次回。
Tuesday, March 25, 2025
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (7)
前回は寄り道もなく真面目に(?)CRのドタバタ劇とsection 899の適用対象者および適用日に触れた。適用日は当然ながら適用開始タイミングが主たるフォーカスだけど、一応適用終了タイミングも規定されているんで付け加えておく。終了タイミングは予想通りで驚きはない。Section 899の趣旨的にいつまでも懲罰課税を続けるよりも問題税制を是正してもらって適用終了に至ればそれがベストだから重要なタイミングだけどね。で、最初の頃のポスティングで触れた通り、section 899は財務長官に定期的に問題税制を持つ国を特定し議会への報告を義務付けている。義務付けられる報告内容には特定の国による域外課税や差別的課税の導入と並び、問題税制の恒久的撤廃の有無が含まる。Section 899の懲罰課税は、恒久的撤廃が盛り込まれた議会報告の翌日以降に開始する課税年度(所得税・法人税)や支払い(源泉税)に関して停止されることになる。法文では「以前の報告(すなわち域外課税や差別的課税制度を持っているって言う報告)はなかったものと取り扱う」って意味ありげに回りくどい表現を使用してるけど要は適用停止ってことだろう。
で、ここから今回の本題に当たる域外課税や差別的課税の定義。Section 899法案の元祖に当たる1934年から存在するsection 891も同様に差別的課税や域外課税(この順序の違いに関しては以前触れたね)への対抗規則だけど、section 891にはどんな税制が差別的または域外課税に当たるかっていう定義はなかった。一方のsection 899法案はこれらを結構詳細に定義している。90年を経て何のことだったのか分かるって感無量。90年ってほぼ一世紀だもんね。Internal Revenue Codeの上にも3年どころか100年級だ!
域外課税(Extraterritorial Tax)
まずは域外課税。条文の定義なんで訳しても意味がないんでまずは原文で行くけど、Extraterritorial Taxは「any tax imposed by a foreign country on a corporation (including any trade or business of such corporation) which is determined by reference to any income or profits received by any person (including any trade or business of any person) by reason of such person being connected to such corporation through any chain of ownership, determined without regard to the ownership interests of any individual, and other than by reason of such corporation having a direct or indirect ownership interest in such person.」って規定される。
チョッと難しいけど、この定義のキーは「any chain…other than by reason of such corporation having a direct or indirect ownership interest in such person」ってところかになるのかな。つまり特定の国が法人課税する際に、対象法人そのものや、その法人が直接・間接に持分を持つ傘下の主体ではなく、直接・間接傘下にあるかどうかにかかわらず何らかの資本関係で結ばれているっている主体の所得を、そんな資本関係にあるっていう点のみを理由に課税するっていう制度。これってUTPRそのもの?
しかもご丁寧に「Extraterritorial Tax」に関しては「Tax」っていう用語も「any increase in tax whether effectuated by an increase in the rate or base of a tax, by a denial of deductions or credits, or otherwise」ってしっかり特別に定義されてる。OECDのモデルルールにあるUTPRは「a denial of deductions」で達成されることが多いだろうからこの点もピッタリ!
っていうことはUTPRを法制化している国はほぼ自動的にsection 899目的で「Extraterritorial Tax」を持っていることになる。上述の通り、元祖section 891には何を持って域外課税や差別的課税かは定義されてないけど、同じ用語なんでsection 891目的でもUTPRはExtraterritorial Taxに当たると解釈されるだろう。Section 899は税制改正の一環で審議されるはずだから未だ実際に配当やロイヤルティの源泉税が35%になる訳じゃないけど、section 891目的でExtraterritorial Taxありっていう認定を受け、米国法人が差別的な課税に晒されると自動的に税率が倍。クイズダービーの最後の問題みたい(古~。だけど実は結構な読者が知ってるはず?)。Section 891に言及してる大統領令、America First Trade Policyに基づく報告義務は一応4月1日だ。
で、次に差別的課税(Discriminatory Tax)。こちらはExtraterritorial Taxと違って4つのタイプのどれかに当たるとDiscriminatory Taxになる。またDiscriminatory Taxの定義には例外が規定されている。4つもあるんでここからは次回。
で、ここから今回の本題に当たる域外課税や差別的課税の定義。Section 899法案の元祖に当たる1934年から存在するsection 891も同様に差別的課税や域外課税(この順序の違いに関しては以前触れたね)への対抗規則だけど、section 891にはどんな税制が差別的または域外課税に当たるかっていう定義はなかった。一方のsection 899法案はこれらを結構詳細に定義している。90年を経て何のことだったのか分かるって感無量。90年ってほぼ一世紀だもんね。Internal Revenue Codeの上にも3年どころか100年級だ!
域外課税(Extraterritorial Tax)
まずは域外課税。条文の定義なんで訳しても意味がないんでまずは原文で行くけど、Extraterritorial Taxは「any tax imposed by a foreign country on a corporation (including any trade or business of such corporation) which is determined by reference to any income or profits received by any person (including any trade or business of any person) by reason of such person being connected to such corporation through any chain of ownership, determined without regard to the ownership interests of any individual, and other than by reason of such corporation having a direct or indirect ownership interest in such person.」って規定される。
チョッと難しいけど、この定義のキーは「any chain…other than by reason of such corporation having a direct or indirect ownership interest in such person」ってところかになるのかな。つまり特定の国が法人課税する際に、対象法人そのものや、その法人が直接・間接に持分を持つ傘下の主体ではなく、直接・間接傘下にあるかどうかにかかわらず何らかの資本関係で結ばれているっている主体の所得を、そんな資本関係にあるっていう点のみを理由に課税するっていう制度。これってUTPRそのもの?
しかもご丁寧に「Extraterritorial Tax」に関しては「Tax」っていう用語も「any increase in tax whether effectuated by an increase in the rate or base of a tax, by a denial of deductions or credits, or otherwise」ってしっかり特別に定義されてる。OECDのモデルルールにあるUTPRは「a denial of deductions」で達成されることが多いだろうからこの点もピッタリ!
っていうことはUTPRを法制化している国はほぼ自動的にsection 899目的で「Extraterritorial Tax」を持っていることになる。上述の通り、元祖section 891には何を持って域外課税や差別的課税かは定義されてないけど、同じ用語なんでsection 891目的でもUTPRはExtraterritorial Taxに当たると解釈されるだろう。Section 899は税制改正の一環で審議されるはずだから未だ実際に配当やロイヤルティの源泉税が35%になる訳じゃないけど、section 891目的でExtraterritorial Taxありっていう認定を受け、米国法人が差別的な課税に晒されると自動的に税率が倍。クイズダービーの最後の問題みたい(古~。だけど実は結構な読者が知ってるはず?)。Section 891に言及してる大統領令、America First Trade Policyに基づく報告義務は一応4月1日だ。
で、次に差別的課税(Discriminatory Tax)。こちらはExtraterritorial Taxと違って4つのタイプのどれかに当たるとDiscriminatory Taxになる。またDiscriminatory Taxの定義には例外が規定されている。4つもあるんでここからは次回。
Sunday, March 16, 2025
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (6)
前回はJoint Session等だったけどチョッと(大分?)話しが逸れてモーツァルトとかアウトバーンとかで盛り上がり過ぎて反省中。今回は余計な話題が頭を過る前に議会動向にチラッと触れて即座に(?)本題のsection 899に戻りたい。
Continuing Resolutionドラマ
2025年国家会計年度(2025年9月期)の予算(Annual Appropriation)が未だ可決していないんで連邦政府を活動を支えるため、付焼刃的に短期間、予算なしで歳出を認める法律が必要になる。これができないと連邦政府は「Shutdown」され、Annual Appropriationが不要な強制歳出(例、SSN)、軍とか空港管制塔を含む「Essential」な歳出、を除き機能不全となる。
この短期付け焼刃法をContinuing Resolution(「CR」)っていうけど、ここ何年も予算がタイムリーに可決されることはないんで、本来バックストップ的な存在であるべきCRが年間数回単位で乱発される。さらにCRにチャッカリとプラスの歳出を盛り込んで結局のところCRという名を借りた実質Omnibus Billに仕上がるケースが後を絶たない。「2025年謹賀新年「119会期米国議会」」で触れた通り、2024年9月に可決されたCRが12月20日に期限切れになる直前に2回目のCRが可決され3月14日まで歳出が認められてた。で、3月14日になったんで3回目のCRが必要になった。
で、結局のところ滑り込みセーフで可決されたんだけど(CRは上院60票必要)、その内容や細かい動向はさておき、注目するべき点は2つ。まず共和党が珍しく下院内および両院で一枚岩になれた点。そしてもう一点は民主党が党内調整できないまま上院でChuck Schumerの指示で10議員がCR賛成に回り党内の亀裂を露呈した点。共和党としてはトランプ傘下CRで一体になれたっていうモメンタムで税制改正も一気に対処したいところだろう。下院のWays and Means Committeeは既に法案ドラフトを開始してるって話しなんで今後数週間の動きが見もの。下院が税制改正可決目標日としてるMemorial Day(5月26日)に間に合わせるにはそろそろ具体化させないとね。タイミング的に上院は「Memorial Dayね…。夏が現実的じゃない?」っていうのが本音だと思うけどね。タイミングの政局的なインパクト、両院の温度差に関しては昨年末の「予算調整法2回どう使い分ける?」で触れてるんで忘れちゃってたら日本ではなかなか伝わり難いポイントになるんでぜひもう一回読んでみて欲しい。
Section 899適用納税者
Section 899法案に関して前回までのポスティングでは、その大枠、財務省長官による継続的な問題税制を持つ国の特定・アップデート義務、それらの国と行うべき交渉内容、そしてsection 899適用者に課せられる付加税率、等をまとめてきた。
で、section 899の対抗規定が適用される納税者の特定は、もちろんだけど財務長官が認定する「域外課税や差別的課税制度を持つ国」が基となる。説明を分かり易くするため、財務長官にそう認定された国をここでは「問題税制を持つ国」って言っとくね。
適用納税者は大別して3つのカテゴリーで構成される。まず問題税制を持つ国の市民(Citizen)。ただし米国市民および米国税法上の米国居住者(グリーンカード所有者およびSubstantial Presence Testを満たす者)は除外される。Section 899法案には明記されてないけど、Substantial Presence Testを満たす米国Non-Citizen(税法で言うところの「Alien Individual」)が外国の法令でも当該国の居住者になってて(=Dual Resident)、租税条約にTie-Breaker条項が存在し、条約ポジションとして外国の居住者を選択している場合は、除外対象にはならず適用納税者になるって考えるのが自然だろう。グリーンカード所有者はテクニカルにはTie-Breakerの適用は可能だけど、Tie-Breaker適用は米国継続居住はしない意思表示になりグリーンカード没収の理由のひとつになり兼ねないんでグリーンカードStatusを維持したい者による適用は稀だと思う。
次は問題税制を持つ国の法令で組成されているまたはそんな国の法人税が適用される米国外法人。米国法人、すなわちDelawareやTexas州等の米国州会社法で組成される法人は米国外法人じゃないんで定義的に対象外。また米国外法人でも外国源泉配当が米国株主側で100%所得控除の対象になる「a specified 10-percent owned foreign corporation」は除外される。具体的には、Sub FやGILTI適用時の定義で「United States Shareholder」に当たる米国法人、すなわち米国外法人の議決権または価値に関して10%以上の株式を持つ米国法人、が一社でも存在する米国外法人は対象外になる。その際、PFICにかかわる例外がどんな風にInteractするかは法案からは必ずしも明確じゃない。
最後に源泉税に関しては、財務省規則が規定する範囲で、問題税制を持つ国の個人パートナーが存在する米国税法上パートナーシップに区分される米国外主体も含むとされる。そもそも源泉税率判断時に条約の適用は無視されるっていうルールになってることから、Foreign Reverse Hybridを含むパートナーの所在国の法律で主体がFiscally Transparentになってるかどうかはsection 899目的では関係ないって考えられる。
Section 899適用日
付加税率に関するポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」およびその後のポスティングでは、どの課税年度またはどの支払いから付加税率が適用されるのか、またその後、どんな風に5%~20%徐々に税率アップになるかっていうタイミングはsection 899の「適用日」を軸に考えるっていう点に触れた。すなわち、法人・所得税に関しては「適用日」の後に開始する課税年度、源泉税に関しては、適用日後の源泉税対象支払いが付加税率の対象になるっていう点だ。
適用日は財務長官が特定の国が問題税制を持つ国に当たるっていうレポートを議会に提出した日から数えて180日経過した次の日(つまり181日後)と規定される。適用日は各納税者に個別に決められるんじゃなくて、問題税制を持つ国単位で決まる。これを付加税率がトリガーされるタイミングに当てはめてみると、財務長官が議会に「この国は弊害税制を持つ国です」ってレポートを提出すると、まずその国に関してそこから181日数える(「181経過日」)。所得税や法人税に関してはこの181経過日の後に始まる課税年度から付加税率が課せられる。ちなみに米国税法目的では個人の所得税課税年度は常に暦年。源泉税に関しては課税年度単位じゃなくて、181経過日後に行われる源泉税対象との支払いから付加税率の対象になる。以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」でチラッと触れたけど、問題税制を持つ国は、そんな税制が可決された日または効力が生じる日のいずれか「早い方」から税制が撤廃された日または失効した日のいずれか「遅い方」までの期間、問題税制を有しているって取り扱われる。このルールと適用日は異なるんで、仮に問題税制を持っている期間が早く開始していても、付加税率の適用開始は「適用日」ベースになる。
例えば予算調整法に基づく税制改正が2025年5月末に可決され、そこにsection 899が盛り込まれるとする。5月31日から90日以内に財務長官は問題税制を持つ国のリストを議会に提出する法的義務が生じる。仮に90日まるまる掛けてリストを提出したとすると8月29日になる(合ってる?)。でその最初の財務長官レポートで問題税制を持つと認定された国に関しては181日経過日は2026年2月26日となり、翌日の2月27日以降に開始する課税年度の所得税・法人税、また2月27日以降に支払われる配当、利子、ロイヤルティーが付加税率の対象になる。
で、次はいよいよ域外課税や差別的課税の定義。ここからは次回。
Continuing Resolutionドラマ
2025年国家会計年度(2025年9月期)の予算(Annual Appropriation)が未だ可決していないんで連邦政府を活動を支えるため、付焼刃的に短期間、予算なしで歳出を認める法律が必要になる。これができないと連邦政府は「Shutdown」され、Annual Appropriationが不要な強制歳出(例、SSN)、軍とか空港管制塔を含む「Essential」な歳出、を除き機能不全となる。
この短期付け焼刃法をContinuing Resolution(「CR」)っていうけど、ここ何年も予算がタイムリーに可決されることはないんで、本来バックストップ的な存在であるべきCRが年間数回単位で乱発される。さらにCRにチャッカリとプラスの歳出を盛り込んで結局のところCRという名を借りた実質Omnibus Billに仕上がるケースが後を絶たない。「2025年謹賀新年「119会期米国議会」」で触れた通り、2024年9月に可決されたCRが12月20日に期限切れになる直前に2回目のCRが可決され3月14日まで歳出が認められてた。で、3月14日になったんで3回目のCRが必要になった。
で、結局のところ滑り込みセーフで可決されたんだけど(CRは上院60票必要)、その内容や細かい動向はさておき、注目するべき点は2つ。まず共和党が珍しく下院内および両院で一枚岩になれた点。そしてもう一点は民主党が党内調整できないまま上院でChuck Schumerの指示で10議員がCR賛成に回り党内の亀裂を露呈した点。共和党としてはトランプ傘下CRで一体になれたっていうモメンタムで税制改正も一気に対処したいところだろう。下院のWays and Means Committeeは既に法案ドラフトを開始してるって話しなんで今後数週間の動きが見もの。下院が税制改正可決目標日としてるMemorial Day(5月26日)に間に合わせるにはそろそろ具体化させないとね。タイミング的に上院は「Memorial Dayね…。夏が現実的じゃない?」っていうのが本音だと思うけどね。タイミングの政局的なインパクト、両院の温度差に関しては昨年末の「予算調整法2回どう使い分ける?」で触れてるんで忘れちゃってたら日本ではなかなか伝わり難いポイントになるんでぜひもう一回読んでみて欲しい。
Section 899適用納税者
Section 899法案に関して前回までのポスティングでは、その大枠、財務省長官による継続的な問題税制を持つ国の特定・アップデート義務、それらの国と行うべき交渉内容、そしてsection 899適用者に課せられる付加税率、等をまとめてきた。
で、section 899の対抗規定が適用される納税者の特定は、もちろんだけど財務長官が認定する「域外課税や差別的課税制度を持つ国」が基となる。説明を分かり易くするため、財務長官にそう認定された国をここでは「問題税制を持つ国」って言っとくね。
適用納税者は大別して3つのカテゴリーで構成される。まず問題税制を持つ国の市民(Citizen)。ただし米国市民および米国税法上の米国居住者(グリーンカード所有者およびSubstantial Presence Testを満たす者)は除外される。Section 899法案には明記されてないけど、Substantial Presence Testを満たす米国Non-Citizen(税法で言うところの「Alien Individual」)が外国の法令でも当該国の居住者になってて(=Dual Resident)、租税条約にTie-Breaker条項が存在し、条約ポジションとして外国の居住者を選択している場合は、除外対象にはならず適用納税者になるって考えるのが自然だろう。グリーンカード所有者はテクニカルにはTie-Breakerの適用は可能だけど、Tie-Breaker適用は米国継続居住はしない意思表示になりグリーンカード没収の理由のひとつになり兼ねないんでグリーンカードStatusを維持したい者による適用は稀だと思う。
次は問題税制を持つ国の法令で組成されているまたはそんな国の法人税が適用される米国外法人。米国法人、すなわちDelawareやTexas州等の米国州会社法で組成される法人は米国外法人じゃないんで定義的に対象外。また米国外法人でも外国源泉配当が米国株主側で100%所得控除の対象になる「a specified 10-percent owned foreign corporation」は除外される。具体的には、Sub FやGILTI適用時の定義で「United States Shareholder」に当たる米国法人、すなわち米国外法人の議決権または価値に関して10%以上の株式を持つ米国法人、が一社でも存在する米国外法人は対象外になる。その際、PFICにかかわる例外がどんな風にInteractするかは法案からは必ずしも明確じゃない。
最後に源泉税に関しては、財務省規則が規定する範囲で、問題税制を持つ国の個人パートナーが存在する米国税法上パートナーシップに区分される米国外主体も含むとされる。そもそも源泉税率判断時に条約の適用は無視されるっていうルールになってることから、Foreign Reverse Hybridを含むパートナーの所在国の法律で主体がFiscally Transparentになってるかどうかはsection 899目的では関係ないって考えられる。
Section 899適用日
付加税率に関するポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」およびその後のポスティングでは、どの課税年度またはどの支払いから付加税率が適用されるのか、またその後、どんな風に5%~20%徐々に税率アップになるかっていうタイミングはsection 899の「適用日」を軸に考えるっていう点に触れた。すなわち、法人・所得税に関しては「適用日」の後に開始する課税年度、源泉税に関しては、適用日後の源泉税対象支払いが付加税率の対象になるっていう点だ。
適用日は財務長官が特定の国が問題税制を持つ国に当たるっていうレポートを議会に提出した日から数えて180日経過した次の日(つまり181日後)と規定される。適用日は各納税者に個別に決められるんじゃなくて、問題税制を持つ国単位で決まる。これを付加税率がトリガーされるタイミングに当てはめてみると、財務長官が議会に「この国は弊害税制を持つ国です」ってレポートを提出すると、まずその国に関してそこから181日数える(「181経過日」)。所得税や法人税に関してはこの181経過日の後に始まる課税年度から付加税率が課せられる。ちなみに米国税法目的では個人の所得税課税年度は常に暦年。源泉税に関しては課税年度単位じゃなくて、181経過日後に行われる源泉税対象との支払いから付加税率の対象になる。以前のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (2)」でチラッと触れたけど、問題税制を持つ国は、そんな税制が可決された日または効力が生じる日のいずれか「早い方」から税制が撤廃された日または失効した日のいずれか「遅い方」までの期間、問題税制を有しているって取り扱われる。このルールと適用日は異なるんで、仮に問題税制を持っている期間が早く開始していても、付加税率の適用開始は「適用日」ベースになる。
例えば予算調整法に基づく税制改正が2025年5月末に可決され、そこにsection 899が盛り込まれるとする。5月31日から90日以内に財務長官は問題税制を持つ国のリストを議会に提出する法的義務が生じる。仮に90日まるまる掛けてリストを提出したとすると8月29日になる(合ってる?)。でその最初の財務長官レポートで問題税制を持つと認定された国に関しては181日経過日は2026年2月26日となり、翌日の2月27日以降に開始する課税年度の所得税・法人税、また2月27日以降に支払われる配当、利子、ロイヤルティーが付加税率の対象になる。
で、次はいよいよ域外課税や差別的課税の定義。ここからは次回。
Sunday, March 9, 2025
トランプJoint Sessionスピーチ・税制改正・関税
議会によるGlobal Tax Deal対抗・報復措置のひとつ「Section 899」法案のポスティング中だけど、今日はチョッとBreakして税制改正や関税その他に関して。
Budget Resolution
上院・下院の双方が異なるBudget Resolutionを可決させた後、本来なら速やかに両院一致のResolutionを可決して実際の立法に進むべきなんだけど、相変わらず上院と下院のPriority温度差がくすぶっている状況。TCJAの2025年末失効(一部は2022年や2023年で既に失効済み)規定をBudget Window内の時限延長とするか、恒久化するのか、それに対応して$2Tの歳出カットをどこから手当てするか、Current Base Lineで予算調整法はクリアするのか、みたいな基本的なところで未だ意見調整中。
トランプは最近、上院の2-Trackよりも下院の1-Trackを押してる発言が目立つ。以前から触れてるけど、上院としては下院が一枚岩になって早々に1-Trackの法案を上院の意向も加味して策定できるんだったらそれはそれで問題ないけど、その点がイマイチはっきりしないんで、だったらまずは争点の少ない国境警備、国防、エネルギー政策にかかわる最初の法案を通してしまいたいっていうアプローチで、これはあくまでプランBっていう状態が続いている。
Joint Session of Congress
そんな中、3月4日の夜、トランプは「Joint Session of Congress」で100分に亘るNon-Stopパフォーマンスで、例によって息つく暇もなく次々と政権発足1か月強の実績を披露。未だにTDS(「Trump Derangement Syndrome」)の激しい(Fox以外の)レガシーメディアの反応は予想通りだけど、少なくともテレプロンプター棒読みのアンドロイドみたいなスピーチと違って、自分が「思ってること」を自分の言葉で表現するAuthenticityが感じられた。相変わらずの体力とエネルギー全開で100分あっという間。多岐に亘るトピックをこれでもかこれでもかって連打する姿を見てると、ふと映画Amadeusでモーツァルトがオーストリア皇帝Joseph II (マリー・アントワネットのお兄さん!)を前にブルク劇場でオペラ「The Abduction from the Seraglio」を指揮演奏してるシーンを思い出してしまった。「The Abduction from the Seraglio」みたいな複雑かつ難解な音楽を気楽な娯楽かのようにパッケージして音の洪水で圧倒するモーツァルトの姿だ。映画では、複雑な楽曲を何の苦も無くNaturalに表現している姿をギャラリーからサリエリが観察していて、同じ音楽家だからこそ分かるその才能、すなわち苦労なくそんな作品を創作できるモーツァルトの恐ろしさに驚愕すると同時に怒りすら感じていた(実際に何があったかは知る術もないけど、あの映画、サリエリにはチョッと不名誉だよね)。演奏終了後に皇帝が「余りに凄すぎて人間が消化できるレベルの音数を超えてる」みたいなコメントをすると、モーツァルトが「具体的にどの音が過度なんでしょうか?必要な音のみを使って曲はできてて、それ以上でも以下でもない」と歯向かったりしてる。映画だから実際にあった会話じゃないとは思うけどね。なんかFlood the zoneのトランプに似てるよね。
ちなみにこの「The Abduction from the Seraglio」は、大作のオペラとしては初のドイツ語作品って言われてて、映画ではオペラにドイツ語を使うかどうかにかかわる伏線がある。オペラを依頼(Commission)するために皇帝がモーツァルトを宮廷に招いた際のやり取りだ。サリエリがモーツァルト歓迎のために特別に作曲したマーチを皇帝が気に入り、皇帝が自らそれを弾いてる中モーツァルトが登場するんだけど、モーツァルトは一回初めて聴いただけのサリエリのマーチを暗記してしまい、その場で暗譜でパーフェクトに再現して一同を驚かせる。さらに再現するだけでは終わらず「この曲これで終わりで後は一緒なんだよね?」、「ここんところチョッとイマイチだよね」、「こんな風にしようって考えなかった?」、「だいぶマシになったでしょ?」とか言いながらアドリブで複雑かつ華麗な全く別の作品(アレってフィガロの「Non più andrai」だよね)に仕手てしまったあのシーンだ。
その際、モーツァルトに依頼するオペラをイタリア語にするかドイツ語にするか、に関して皇帝が取り巻き達と議論する場面がある。モーツァルトは「ドイツ語でしょ」って言ってイタリア派の顰蹙を買うけど、その後に「まあ、トルコ語(トルコはThe Abduction from the Seraglioの舞台)でもいいけどね~」とか惚けたこと言って軽く流してる。当時のウイーンの音楽界はイタリア派の影響力が強く、それに対して皇帝はドイツ語を国語に定めようとしたりドイツ主義だったらしい。結果「ドイツ語で行く」と鶴の一声となり、イタリア系の取り巻きは目を丸くしたっていうことになっている。
まあオーストリアとドイツ(当時はまだHRE?)だったら、アルプス越えのイタリアと比べると行き来は楽だっただろうし、モーツァルト生地のSalzburgとかからだとウイーン行くよりミュンヘンに行く方が断然近いもんね。夜中にSalzburg市街を出て真っ暗(本当に真っ暗)なA1から国境超えてアウトバーン8に入るとスピード制限ないから結構飛ばしてる車も多い。EU内の移動だけど、自動車だと一応国境検問みたいなのがあってPolizeiってジャケット来た長身のポリスにドイツ語チックな英語で「どこに行くのか」とか質問されるとチョッと怖い感じ。
そう言えば、むかし東京でCGとか読んでた高校生くらいの頃、「アウトバーンってスピード制限ないって知っている?」みたいな話しで友人と盛り上がり、どの車でアウトバーン走りたい?みたいな空想の世界の話しになり、大別するとまずは「メルセデスのSL派」。多分アメリカンジゴロとか見過ぎの一派。あれ再現するんだったらアウトバーンじゃなくてPCHだけどね。当時のアルマーニの細めのタイしめて。その後大人(?)になってから「Call Me」大音量で炸裂させてPCH走ったりしてみたけど(SLじゃなくて…SLKで)髪の毛は逆立つし、砂の飛散とかで散々。アルマーニって言えば アメリカンジゴロでアルマーニってブランドを知った読者も多いのでは? 当時はもちろんデパートとかにはあんまり置かれてなかった記憶があり、ホテルニューオータニの本館と新館をコネクトしてたCorridorにあった品揃えブティックの一つでタイとか売ってたよね。で、車種の話しに戻ると他には「Porsche Carrera派」、オペラ同様ドイツ派とイタリア派の戦いになるけど「Ferrari Dino派」とかに分かれてた。で、僕は何だったかというと何と言ってもFirst Generationの「BMW 635CSi」!。当時の感覚だと美し過ぎる流線形であれ格好良かったよね。首都高とかで走ってるの見かけるとどんな人が乗ってんだろう?って。当時は635CSi乗れなかったら代わりにFiatのMidship「X1/9」、しかも黄緑(49th Junko Shimadaボディコン(笑)の蛍光カマキリ色みたいなやつ)でもいいな~みたいなバブルっぽい夢見る時代だった。ちなみにCSiの「i」ってInjection(Fuel Injection)なんだよね。CSはスポーツクーペだけど、「i」は「俺はキャブレターじゃないぞ」ってことだから時代を物語ってるよね。キャブレターの車ってChokeボタンが付いてて、たまに引っ張ったまま走って冗談で「Auto Drive」とかにしたりね。昔のドイツ車って別格だったけど、最近はドイツの産業ポリシーのせいでなんか元気ないよね。
実は米国も1973年のオイルショック前はスピード制限はInterstateでも完全に州の管轄で、州によるけどスピード制限はなかったり、単に「Reasonable and Prudent」基準だったところも多い。建国のSpiritが残っている感じでいいね。ところがオイルショックを受けて1974年に連邦レベルで初の「National Maximum Speed Law (55 mph)」 が可決。もちろん連邦法なんでFederalism的に法的管轄権があるのは主にInterstate Highway(Route 66みたいな旧道含む)。スピード制限っていうと安全対策っていうイメージが強いけど、National Maximum Speed Lawは燃料節約のための法律。この法律導入・撤廃(後述)前後等で安全性に関する明確はトレンドは認知できなかったっていう話し。導入当初から多くの州で不評で取り締まり度合いはまちまちだったっていう話し。その後、1987年には市街地を除き65 mphに制限が緩和され、1995年には連邦法は撤廃され、再び米国のあるべき姿、すなわち連邦ではなく各州が制限スピードを決めることができるようになって今に至る。結果、州によって80 mphなんて区間もあるけど、残念なことに(?)スピード違反のチケットからの歳入がバカにならないってことでスピード制限のない区間はないらしい。スピード出したいっていうよりも、ガラガラのInterstateで対向車線との間にある藪で覆われてて遠くからは見えない空き地みたいなところで(住んでる人なら分かるね!)ネズミ捕りしてたりするポリスカー気にしながら走ったり、バックミラーでFordのTaurasとかSUV見てドキっとしたりって感じが面倒。
う~ん、ミュンヘン行きのアウトバーンの話しから何でこんな話しになってるんだっけ...。ミュンヘンと言えば最近、JDバンスの欧州の言論統制を叱責した演説が思い出されるけど、その話しはなかなかDeepで米国もElon MuskがTwitter(X)を$44Bで買収しなかったらどうなってしまったんだろうとか、他人事じゃないけどね。すなわち民主主義っていうのは、少なくとも米国では一般市民(We the People)の意思が反映されるはずの制度だったんだけど、グローバルエリートの民主主義の定義はクリントン・ブレアの頃からチョッと違ってきて、ダメ押しは2016年の第一次トランプ政権誕生やBrexitで、一般Peopleは教養がないから自由に議論したりそれらの者が選挙でリーダーを選んだりするとグローバル「リーダー」たちが思う理想の姿と異なる世界になり兼ねない、っていうRedefineされた感じの民主主義アプローチ。従来の民主主義は一般Peopleが決めるんでその定義からPopulismだと思うんだけど、グローバルエリートやレガシーメディアがPopulismって使う際は何か少し知的レベルが低いっていうニュアンスになったり、Far-Rightってどんな過激な思想なのかなって思って聞いてみると一般Peopleが自分の身近な生活、すなわち自国の政策を闊達な議論・選挙を通じて決めていきたいって考えてる姿だったりする。この手のトレンドは大きな流れとしては振り子だから、グローバル主義から今は逆にPopulismに振り戻し傾向がところどころで見られる。Global Tax Dealなんかもこういうメガトレンド的に観察すると単なる税法っていうGeekyな世界以上のものがあるね。
で、皇帝はドイツ語派だったかもしれないけど、Joint Sessionスピーチに先立つ3月1日にトランプは大統領令で「英語」を米国の国語に指定してる。米国に今まで国語がなかったっていう方が意外な感はあるけど、連邦はさておいて州レベルでは多くの州で英語が公用語に指定されている。連邦レベルでは明確な規則は存在しなかったみたいだけど、スパニッシュや中国語の併記があることはあっても、実際には税法を含む連邦法とか全部英語だから実態としては国語同然だったように思うけどね。
Joint Sessionのスピーチに戻るけど、税制に関してはTCJAの恒久化とチップや残業代非課税に簡単に触れるだけ。ただ、その際、トランプの後ろに座ってた下院議長Mike Johnsonの方に振り向きプレッシャーを掛けるのは忘れなかった。で、相変わらず「関税」は素晴らしいって言ってた。
なぜ関税?
この関税、選挙で争点のひとつだったインフレとかの観点から考えたらあんまりMake Senseしない。おかげで株式市場も乱高下だけど、トランプの周りに居るScott Bessent、先日承認された商務長官Howard LutnickやUSTRのJamieson Greer、DOGEのElon Muskを含む取り巻きは相当なやり手揃いだから何かの考えがあってのはず。それが何なんだろうってしばらく考えてた時に、2023年にJDバンスが Senate Banking CommitteeでFRB ChairmanのPowellとやり取りした際の話しがフラッシュバックしてきて、う~ん、もしかしたら・・・短期的な損得は別として米国の将来を本気で考えてるのかもねって思うようになった。
JD Vanceって以前、VP候補に任命された頃は個人的になぜ?って思ったっていう話しは当時のポスティングに書いたけど、それは僕の感覚の鈍さおよび従来からの(RINOとまでは言わないけど)どちらかっていうと旧来のEstablishmentの共和党の姿が頭から離れてなかったからだ。その後、Tim Walzとの討論会や多くの演説、Podcastとかを通じてArticulateでImpressiveな人物だっていう認識に至ると同時に党名は同じ共和党とは言え、今では全く別の基盤で成り立ってる党だっていう点を再認識してようやくJD Vanceの位置づけが分かってきた気がする。この人選は今後の米国に与える影響は少なくなかったかも。
そんなJD Vanceが上述の2023年の Senate Banking CommitteeでPowellに対して発言した内容骨子は、米国はUSDがReserve Currencyっていう俗にいう「Exorbitant Privilege」に長年胡坐をかいてるうちにとんでもないことになり、今となってはIrreversibleに近い不味い状況に陥っているというもの。この状態は「Resource Curse」。すなわち例えばサウジとかが石油が出るんでそれがバレル90ドルとかで売れるんだったら他の産業は不要も同然なんで、そのために他の産業が育成される土壌がなくなる(そんなことではだめって言うことで壮大なVision 2030で「Neom」プロジェクトとかの企画に至ってる)。
米国はこれの通貨版。Reserve Currencyなんでどれだけ財政赤字になっても直近には問題なく、金融業やワシントンがぼろ儲けできるんで、産業空洞化が進み製造業や一般PeopleのWorking Classはその犠牲になってる状況。もちろんハイテクとかサービス業とかは強いんで単に金融だけって訳じゃないけど多くの製造業は米国外に行ってしまった。USDのReserve Currency Statusが傾いたら石油が出なくなった産油国みたいで米国は終わり。長年こんな状況が続いた結果、ウクライナに援助するものも含め武器の資材の多くは中国頼み、しかも国家財政は大赤字だから中国から資材を買うために中国から借金(国債)という超間抜けかつ脆弱な構造になってしまったというもの。JD Vanceの自伝 Hillbilly Elegyを読むと極貧の中、米国中西部の製造業が衰退し、Everyday Peopleが取り残されていく姿を目の当たりにした実体験があることがよく分かる。こんなトレンドをリバースするには関税と国内減税を組み合わせて企業の行動規範を変える必要があるけど、短期的な視野では難しいんで通常の政府や政治家では手を付け難い。そこでトランプ2.0のMAGAがAll-Inでこれを実行するっていう勢いなんじゃないだろうか。Elon MuskのDOGEによる明日はないかのような連邦政府の縮小・削減(歳出削減)も米国がSurviveする最後のチャンスっていう覚悟がある感じがする。先日Scott Bessentは「(海外の低賃金を利用した輸入に頼って)安価な商品にアクセスがあることは必ずしもアメリカンドリームではない」と言ってたし、トランプも第一期と異なり株価や直近の景気を最大限化することに対するフォーカスは低く、本当にMake America Great Againを目指してるのかな~って思うことがある。でも関税は課すぞって言っては撤回したり、その辺はこの手のマクロのテーマとどう関連しているのか個人的には不可解に映る。
っていうことで次回はSection 899法案の続きに戻りたい。
Budget Resolution
上院・下院の双方が異なるBudget Resolutionを可決させた後、本来なら速やかに両院一致のResolutionを可決して実際の立法に進むべきなんだけど、相変わらず上院と下院のPriority温度差がくすぶっている状況。TCJAの2025年末失効(一部は2022年や2023年で既に失効済み)規定をBudget Window内の時限延長とするか、恒久化するのか、それに対応して$2Tの歳出カットをどこから手当てするか、Current Base Lineで予算調整法はクリアするのか、みたいな基本的なところで未だ意見調整中。
トランプは最近、上院の2-Trackよりも下院の1-Trackを押してる発言が目立つ。以前から触れてるけど、上院としては下院が一枚岩になって早々に1-Trackの法案を上院の意向も加味して策定できるんだったらそれはそれで問題ないけど、その点がイマイチはっきりしないんで、だったらまずは争点の少ない国境警備、国防、エネルギー政策にかかわる最初の法案を通してしまいたいっていうアプローチで、これはあくまでプランBっていう状態が続いている。
Joint Session of Congress
そんな中、3月4日の夜、トランプは「Joint Session of Congress」で100分に亘るNon-Stopパフォーマンスで、例によって息つく暇もなく次々と政権発足1か月強の実績を披露。未だにTDS(「Trump Derangement Syndrome」)の激しい(Fox以外の)レガシーメディアの反応は予想通りだけど、少なくともテレプロンプター棒読みのアンドロイドみたいなスピーチと違って、自分が「思ってること」を自分の言葉で表現するAuthenticityが感じられた。相変わらずの体力とエネルギー全開で100分あっという間。多岐に亘るトピックをこれでもかこれでもかって連打する姿を見てると、ふと映画Amadeusでモーツァルトがオーストリア皇帝Joseph II (マリー・アントワネットのお兄さん!)を前にブルク劇場でオペラ「The Abduction from the Seraglio」を指揮演奏してるシーンを思い出してしまった。「The Abduction from the Seraglio」みたいな複雑かつ難解な音楽を気楽な娯楽かのようにパッケージして音の洪水で圧倒するモーツァルトの姿だ。映画では、複雑な楽曲を何の苦も無くNaturalに表現している姿をギャラリーからサリエリが観察していて、同じ音楽家だからこそ分かるその才能、すなわち苦労なくそんな作品を創作できるモーツァルトの恐ろしさに驚愕すると同時に怒りすら感じていた(実際に何があったかは知る術もないけど、あの映画、サリエリにはチョッと不名誉だよね)。演奏終了後に皇帝が「余りに凄すぎて人間が消化できるレベルの音数を超えてる」みたいなコメントをすると、モーツァルトが「具体的にどの音が過度なんでしょうか?必要な音のみを使って曲はできてて、それ以上でも以下でもない」と歯向かったりしてる。映画だから実際にあった会話じゃないとは思うけどね。なんかFlood the zoneのトランプに似てるよね。
ちなみにこの「The Abduction from the Seraglio」は、大作のオペラとしては初のドイツ語作品って言われてて、映画ではオペラにドイツ語を使うかどうかにかかわる伏線がある。オペラを依頼(Commission)するために皇帝がモーツァルトを宮廷に招いた際のやり取りだ。サリエリがモーツァルト歓迎のために特別に作曲したマーチを皇帝が気に入り、皇帝が自らそれを弾いてる中モーツァルトが登場するんだけど、モーツァルトは一回初めて聴いただけのサリエリのマーチを暗記してしまい、その場で暗譜でパーフェクトに再現して一同を驚かせる。さらに再現するだけでは終わらず「この曲これで終わりで後は一緒なんだよね?」、「ここんところチョッとイマイチだよね」、「こんな風にしようって考えなかった?」、「だいぶマシになったでしょ?」とか言いながらアドリブで複雑かつ華麗な全く別の作品(アレってフィガロの「Non più andrai」だよね)に仕手てしまったあのシーンだ。
その際、モーツァルトに依頼するオペラをイタリア語にするかドイツ語にするか、に関して皇帝が取り巻き達と議論する場面がある。モーツァルトは「ドイツ語でしょ」って言ってイタリア派の顰蹙を買うけど、その後に「まあ、トルコ語(トルコはThe Abduction from the Seraglioの舞台)でもいいけどね~」とか惚けたこと言って軽く流してる。当時のウイーンの音楽界はイタリア派の影響力が強く、それに対して皇帝はドイツ語を国語に定めようとしたりドイツ主義だったらしい。結果「ドイツ語で行く」と鶴の一声となり、イタリア系の取り巻きは目を丸くしたっていうことになっている。
まあオーストリアとドイツ(当時はまだHRE?)だったら、アルプス越えのイタリアと比べると行き来は楽だっただろうし、モーツァルト生地のSalzburgとかからだとウイーン行くよりミュンヘンに行く方が断然近いもんね。夜中にSalzburg市街を出て真っ暗(本当に真っ暗)なA1から国境超えてアウトバーン8に入るとスピード制限ないから結構飛ばしてる車も多い。EU内の移動だけど、自動車だと一応国境検問みたいなのがあってPolizeiってジャケット来た長身のポリスにドイツ語チックな英語で「どこに行くのか」とか質問されるとチョッと怖い感じ。
そう言えば、むかし東京でCGとか読んでた高校生くらいの頃、「アウトバーンってスピード制限ないって知っている?」みたいな話しで友人と盛り上がり、どの車でアウトバーン走りたい?みたいな空想の世界の話しになり、大別するとまずは「メルセデスのSL派」。多分アメリカンジゴロとか見過ぎの一派。あれ再現するんだったらアウトバーンじゃなくてPCHだけどね。当時のアルマーニの細めのタイしめて。その後大人(?)になってから「Call Me」大音量で炸裂させてPCH走ったりしてみたけど(SLじゃなくて…SLKで)髪の毛は逆立つし、砂の飛散とかで散々。アルマーニって言えば アメリカンジゴロでアルマーニってブランドを知った読者も多いのでは? 当時はもちろんデパートとかにはあんまり置かれてなかった記憶があり、ホテルニューオータニの本館と新館をコネクトしてたCorridorにあった品揃えブティックの一つでタイとか売ってたよね。で、車種の話しに戻ると他には「Porsche Carrera派」、オペラ同様ドイツ派とイタリア派の戦いになるけど「Ferrari Dino派」とかに分かれてた。で、僕は何だったかというと何と言ってもFirst Generationの「BMW 635CSi」!。当時の感覚だと美し過ぎる流線形であれ格好良かったよね。首都高とかで走ってるの見かけるとどんな人が乗ってんだろう?って。当時は635CSi乗れなかったら代わりにFiatのMidship「X1/9」、しかも黄緑(49th Junko Shimadaボディコン(笑)の蛍光カマキリ色みたいなやつ)でもいいな~みたいなバブルっぽい夢見る時代だった。ちなみにCSiの「i」ってInjection(Fuel Injection)なんだよね。CSはスポーツクーペだけど、「i」は「俺はキャブレターじゃないぞ」ってことだから時代を物語ってるよね。キャブレターの車ってChokeボタンが付いてて、たまに引っ張ったまま走って冗談で「Auto Drive」とかにしたりね。昔のドイツ車って別格だったけど、最近はドイツの産業ポリシーのせいでなんか元気ないよね。
実は米国も1973年のオイルショック前はスピード制限はInterstateでも完全に州の管轄で、州によるけどスピード制限はなかったり、単に「Reasonable and Prudent」基準だったところも多い。建国のSpiritが残っている感じでいいね。ところがオイルショックを受けて1974年に連邦レベルで初の「National Maximum Speed Law (55 mph)」 が可決。もちろん連邦法なんでFederalism的に法的管轄権があるのは主にInterstate Highway(Route 66みたいな旧道含む)。スピード制限っていうと安全対策っていうイメージが強いけど、National Maximum Speed Lawは燃料節約のための法律。この法律導入・撤廃(後述)前後等で安全性に関する明確はトレンドは認知できなかったっていう話し。導入当初から多くの州で不評で取り締まり度合いはまちまちだったっていう話し。その後、1987年には市街地を除き65 mphに制限が緩和され、1995年には連邦法は撤廃され、再び米国のあるべき姿、すなわち連邦ではなく各州が制限スピードを決めることができるようになって今に至る。結果、州によって80 mphなんて区間もあるけど、残念なことに(?)スピード違反のチケットからの歳入がバカにならないってことでスピード制限のない区間はないらしい。スピード出したいっていうよりも、ガラガラのInterstateで対向車線との間にある藪で覆われてて遠くからは見えない空き地みたいなところで(住んでる人なら分かるね!)ネズミ捕りしてたりするポリスカー気にしながら走ったり、バックミラーでFordのTaurasとかSUV見てドキっとしたりって感じが面倒。
う~ん、ミュンヘン行きのアウトバーンの話しから何でこんな話しになってるんだっけ...。ミュンヘンと言えば最近、JDバンスの欧州の言論統制を叱責した演説が思い出されるけど、その話しはなかなかDeepで米国もElon MuskがTwitter(X)を$44Bで買収しなかったらどうなってしまったんだろうとか、他人事じゃないけどね。すなわち民主主義っていうのは、少なくとも米国では一般市民(We the People)の意思が反映されるはずの制度だったんだけど、グローバルエリートの民主主義の定義はクリントン・ブレアの頃からチョッと違ってきて、ダメ押しは2016年の第一次トランプ政権誕生やBrexitで、一般Peopleは教養がないから自由に議論したりそれらの者が選挙でリーダーを選んだりするとグローバル「リーダー」たちが思う理想の姿と異なる世界になり兼ねない、っていうRedefineされた感じの民主主義アプローチ。従来の民主主義は一般Peopleが決めるんでその定義からPopulismだと思うんだけど、グローバルエリートやレガシーメディアがPopulismって使う際は何か少し知的レベルが低いっていうニュアンスになったり、Far-Rightってどんな過激な思想なのかなって思って聞いてみると一般Peopleが自分の身近な生活、すなわち自国の政策を闊達な議論・選挙を通じて決めていきたいって考えてる姿だったりする。この手のトレンドは大きな流れとしては振り子だから、グローバル主義から今は逆にPopulismに振り戻し傾向がところどころで見られる。Global Tax Dealなんかもこういうメガトレンド的に観察すると単なる税法っていうGeekyな世界以上のものがあるね。
で、皇帝はドイツ語派だったかもしれないけど、Joint Sessionスピーチに先立つ3月1日にトランプは大統領令で「英語」を米国の国語に指定してる。米国に今まで国語がなかったっていう方が意外な感はあるけど、連邦はさておいて州レベルでは多くの州で英語が公用語に指定されている。連邦レベルでは明確な規則は存在しなかったみたいだけど、スパニッシュや中国語の併記があることはあっても、実際には税法を含む連邦法とか全部英語だから実態としては国語同然だったように思うけどね。
Joint Sessionのスピーチに戻るけど、税制に関してはTCJAの恒久化とチップや残業代非課税に簡単に触れるだけ。ただ、その際、トランプの後ろに座ってた下院議長Mike Johnsonの方に振り向きプレッシャーを掛けるのは忘れなかった。で、相変わらず「関税」は素晴らしいって言ってた。
なぜ関税?
この関税、選挙で争点のひとつだったインフレとかの観点から考えたらあんまりMake Senseしない。おかげで株式市場も乱高下だけど、トランプの周りに居るScott Bessent、先日承認された商務長官Howard LutnickやUSTRのJamieson Greer、DOGEのElon Muskを含む取り巻きは相当なやり手揃いだから何かの考えがあってのはず。それが何なんだろうってしばらく考えてた時に、2023年にJDバンスが Senate Banking CommitteeでFRB ChairmanのPowellとやり取りした際の話しがフラッシュバックしてきて、う~ん、もしかしたら・・・短期的な損得は別として米国の将来を本気で考えてるのかもねって思うようになった。
JD Vanceって以前、VP候補に任命された頃は個人的になぜ?って思ったっていう話しは当時のポスティングに書いたけど、それは僕の感覚の鈍さおよび従来からの(RINOとまでは言わないけど)どちらかっていうと旧来のEstablishmentの共和党の姿が頭から離れてなかったからだ。その後、Tim Walzとの討論会や多くの演説、Podcastとかを通じてArticulateでImpressiveな人物だっていう認識に至ると同時に党名は同じ共和党とは言え、今では全く別の基盤で成り立ってる党だっていう点を再認識してようやくJD Vanceの位置づけが分かってきた気がする。この人選は今後の米国に与える影響は少なくなかったかも。
そんなJD Vanceが上述の2023年の Senate Banking CommitteeでPowellに対して発言した内容骨子は、米国はUSDがReserve Currencyっていう俗にいう「Exorbitant Privilege」に長年胡坐をかいてるうちにとんでもないことになり、今となってはIrreversibleに近い不味い状況に陥っているというもの。この状態は「Resource Curse」。すなわち例えばサウジとかが石油が出るんでそれがバレル90ドルとかで売れるんだったら他の産業は不要も同然なんで、そのために他の産業が育成される土壌がなくなる(そんなことではだめって言うことで壮大なVision 2030で「Neom」プロジェクトとかの企画に至ってる)。
米国はこれの通貨版。Reserve Currencyなんでどれだけ財政赤字になっても直近には問題なく、金融業やワシントンがぼろ儲けできるんで、産業空洞化が進み製造業や一般PeopleのWorking Classはその犠牲になってる状況。もちろんハイテクとかサービス業とかは強いんで単に金融だけって訳じゃないけど多くの製造業は米国外に行ってしまった。USDのReserve Currency Statusが傾いたら石油が出なくなった産油国みたいで米国は終わり。長年こんな状況が続いた結果、ウクライナに援助するものも含め武器の資材の多くは中国頼み、しかも国家財政は大赤字だから中国から資材を買うために中国から借金(国債)という超間抜けかつ脆弱な構造になってしまったというもの。JD Vanceの自伝 Hillbilly Elegyを読むと極貧の中、米国中西部の製造業が衰退し、Everyday Peopleが取り残されていく姿を目の当たりにした実体験があることがよく分かる。こんなトレンドをリバースするには関税と国内減税を組み合わせて企業の行動規範を変える必要があるけど、短期的な視野では難しいんで通常の政府や政治家では手を付け難い。そこでトランプ2.0のMAGAがAll-Inでこれを実行するっていう勢いなんじゃないだろうか。Elon MuskのDOGEによる明日はないかのような連邦政府の縮小・削減(歳出削減)も米国がSurviveする最後のチャンスっていう覚悟がある感じがする。先日Scott Bessentは「(海外の低賃金を利用した輸入に頼って)安価な商品にアクセスがあることは必ずしもアメリカンドリームではない」と言ってたし、トランプも第一期と異なり株価や直近の景気を最大限化することに対するフォーカスは低く、本当にMake America Great Againを目指してるのかな~って思うことがある。でも関税は課すぞって言っては撤回したり、その辺はこの手のマクロのテーマとどう関連しているのか個人的には不可解に映る。
っていうことで次回はSection 899法案の続きに戻りたい。
Tuesday, February 25, 2025
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (5) + Budget Resolution下院可決
今晩の一番のニュースは火曜日午後の時点でもまだ下院共和党が可決できるかどうか不明だったBudget Resolutionがさきほど(火曜夜)予定通り何とか可決された点。元々議席数が僅少だからしょうがないけど217 -215。結局のところ最後の最後まで歳出規模に難色を示してたTim Burchett(R-TN)等の3人のうち、Thomas Massie(R-KY)のみがNoで解決をみた。
ただ、これってBudget Resolutionの話しなんで本当の議論はこれから。すなわち税制改正担当のWays and Means Committeeには10年間のBudget Windowで$4.5Tの歳出を認め、他のCommitteesには$2Tの歳出減を予定するっていう大枠が決定されたに過ぎない。下院議長Mike Johnsonの苦労は計り知れないけど、最後はBudget Resolutionは「手続き的な話しでまだ本当の議論の前段階」って説得してたっていう話しだから、本当の審議ではMedicaid、SALT Capその他の火種に関してどのように調整できるんでしょうか。また上院はTCJA恒久延長プラスその他の減税も盛り込んで「All-In」っていうスタンスなんで、下院内の調整に加え、両院の調整もチャレンジングだろう。
付加税率パーセント
で、Global Tax Deal対抗・報復措置のsection 899法案の続き。前回までのポスティングでどんな税金に対して税率が上乗せになるのかっていう点、またその際、条約の低減は最初から認められない点とかは分かったと思うけど、今日は一体いつから何パーセント高くなるのかって言う規定に関して。いきなり税率が倍になるsection 891と異なり、section 899法案では徐々に上がっていく仕組み。後述の適用開始日からも読み取れるけど、税率の上乗せが徐々に上がる設計は一気に懲らしめるよりも段々プレッシャーを掛けて早期に域外課税や差別的課税を相手国に取り消させる点に重きが置かれていることが分かる。
税率上乗せパーセントは各国に割り当てられる適用日(後述)を基に国単位で決まる。原則、適用日から最初の1年目は5%、その後2年目は10%、3年目は15%、それ以降は20%となるけど、法人・所得税に適用される上乗せパーセントは課税年度単位で、課税年度の「期首」がこれらのどの年(1年目、2年目…)に属しているかで決まる。混合税率の計算はしなくてもいいみたいだ。源泉税に適用される上乗せパーセントはその基となる取引、分配や譲渡、がいつ行われたかによる。
こうなると弊害税制を持つ各国各々に特定される適用日がキーになるよね。今日はBudget Resolution下院通過で号外だったんでここからは次回。
ただ、これってBudget Resolutionの話しなんで本当の議論はこれから。すなわち税制改正担当のWays and Means Committeeには10年間のBudget Windowで$4.5Tの歳出を認め、他のCommitteesには$2Tの歳出減を予定するっていう大枠が決定されたに過ぎない。下院議長Mike Johnsonの苦労は計り知れないけど、最後はBudget Resolutionは「手続き的な話しでまだ本当の議論の前段階」って説得してたっていう話しだから、本当の審議ではMedicaid、SALT Capその他の火種に関してどのように調整できるんでしょうか。また上院はTCJA恒久延長プラスその他の減税も盛り込んで「All-In」っていうスタンスなんで、下院内の調整に加え、両院の調整もチャレンジングだろう。
付加税率パーセント
で、Global Tax Deal対抗・報復措置のsection 899法案の続き。前回までのポスティングでどんな税金に対して税率が上乗せになるのかっていう点、またその際、条約の低減は最初から認められない点とかは分かったと思うけど、今日は一体いつから何パーセント高くなるのかって言う規定に関して。いきなり税率が倍になるsection 891と異なり、section 899法案では徐々に上がっていく仕組み。後述の適用開始日からも読み取れるけど、税率の上乗せが徐々に上がる設計は一気に懲らしめるよりも段々プレッシャーを掛けて早期に域外課税や差別的課税を相手国に取り消させる点に重きが置かれていることが分かる。
税率上乗せパーセントは各国に割り当てられる適用日(後述)を基に国単位で決まる。原則、適用日から最初の1年目は5%、その後2年目は10%、3年目は15%、それ以降は20%となるけど、法人・所得税に適用される上乗せパーセントは課税年度単位で、課税年度の「期首」がこれらのどの年(1年目、2年目…)に属しているかで決まる。混合税率の計算はしなくてもいいみたいだ。源泉税に適用される上乗せパーセントはその基となる取引、分配や譲渡、がいつ行われたかによる。
こうなると弊害税制を持つ各国各々に特定される適用日がキーになるよね。今日はBudget Resolution下院通過で号外だったんでここからは次回。
Sunday, February 23, 2025
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (4)「最新条文はやっぱりさらに強化」
今回も引き続きGlobal Tax Deal対抗・報復措置のsection 899法案なんだけど、このタイミングで遂に2025年版の「Defending American Jobs and Investment Act」(H.R. 591 119th Congress)の条文がCongress.govに正式公表された。前回までのsection 899法案の話しは2023年に提出されていた同名のオリジナルバージョン(H.R. 3665 118th Congress)の条文を基にしてたんだけど、最新バージョンは構成等基本的なところは変わんないけど、噂通り一部強化および明確化されてる。それまでの業界でいろいろ言われていた海賊版じゃなくてオフィシャル条文だからね。
う~ん、Nakedの「the Long and Winding Road」と長い間こっちがオリジナルって信じてたPhil Spectorにより「Wall of Sound」化された元々のLP(Let It Be)バージョン程は違わないけど、シングルのGet BackとLPのGet Backくらいの差はあるね。シングルのGet BackはGeorge Martinの手によるProduceなんでPhil SpectorのLPバージョンに比べてもちろん加工が少なく微量なエコーでライブ感が出てて格好いい。LPのLet It Be全体にPhil SpectorのProductionは好みの問題だけど音も構成もToo Muchな感じはあるよね。特に「Get Back」プロジェクトのWhole Pointは(RevolverとかPepperの)スタジオProductionに基づくステージでは再現困難なArtからライブロックへの回帰(この反動はWhite Albumで既に達成されてた観はあるんだけどね)がテーマだったことを考えるとね。同じProductionでもLet It Beの後(幼いころはよく理解していなかったけど、Rooftopの直後なんだよね、あのRecording)に収録されたAbbey RoadはGeorge Martinの手によるものでthe Beatles本人たちの意思が反映されてた大傑作だけど、Let It BeのProduction版は必ずしもそうじゃないんでRubber Soul以降のthe BeatlesのLPとしてはチョッと趣が異なるね。「Get BackのJohn Lennonによるギターソロは難しいソロじゃないけど、一カ所John Lennonらしい(I Feel Fineのリフみたいにコードを押さえて上から小指でみないな指の使い方に順じる)普通ではそんな弾き方思いつかないみたいな手が大きめじゃないと弾き難いフレーズ部分があって・・・」とかまたしても不味い流れになりそうなんで、ここからは気を取り直して最新バージョンのSection 899法案に基づいたポスティング。今日は今まで触れた規定で最新バージョンがアップデートしてる部分。
個人納税者のECI
前回のポスティングで税率上乗せ対象の税金の話しをした際に、個人納税者に関しては複雑な言い回しで、FIRPTA以外のECIには上乗せはないって読める点に触れた。新バージョンでも同じ規定なんだけど、法文の構成が少し改善されててよりこの点が明確に表示されている。ただ、なんで個人のECIだけ救済されてるのかっていう理由は未だ不明のまま。
源泉税は条約適用ナシ+上乗せ税率
源泉税に対する税率上乗せにかかわる新バージョンのClarificationは超Deep Impact。まず源泉税のベース税率、すなわち上乗せ前の税率、は条約は加味しない点を明確にしてる。具体的には条約の適用を規定しているsection 894(このsection、ケイマンLPSをCheck-the-Boxする「オフショアフィーダー」経由のヘッジファンド投資とかストラクチャーしている人は良く知ってるね?)や憲法のArticle VI Supremacy Clauseを税法と条約に関して条文化しているsection 7852(d)にかかわらず、条約の適用は認められず源泉税率は米国内法の30%になる。
FIRPTA源泉にも同様の条約適用不可が規定されてるけど、こちらはそもそも条約のオーバーライドは通常ないんで特に条約の特典を否認するまでもない。
で、税率上乗せ前の税率には条約の適用がないっていうことで、結果源泉税率は30%にプラス上乗せ税率になる。この点はオリジナルのSection 899案では必ずしも明確ではなく、上乗せはあるとしても条約レートにプラスされることになるのかなっていう感覚だった。日米の例だと配当は6か月所有期間・50%以上持分とか条件を満たせば源泉税0%だけど、仮に上乗せが20%だとして、section 899の適用後は20%になるのかなと期待してたところ実は50%になることが明確になった。
米国非関連者に対するローン利息に関しては多くのケースで条約ではなく米国内法のPortfolio Interest Exemptionで源泉税はゼロになる。Portfolio Interest Exemptionを適用してるケースと上乗せ税率の関係はどうなるんだろうか。おそらく、源泉税にかかわるsection 899上乗せ対象税金はsection 1441(a)(個人)とsection 1442(a)(法人)を参照して規定されてて、section 1441に関してはPortfolio Interest Exemptionを含む源泉税免除部分のsection 1441(c) はsection 1441(a)に「Except as otherwise provided in subsection (c)…」ってBuilt-Inされてるんで上乗せ対象にならないだろう。法人側のsection 1442も同様で、section 1442自体に源泉税は「in the same manner and on the same items of income as is provided in section 1441」と明記され、さらに「the references in section 1441(c)(9) to sections 871(h) and 871(h)(3) or (4) shall be treated as referring to sections 881(c) and 881(c)(3) or (4)…」、すなわち普通の言語に直すとsection 1441が源泉税免除対象として言及している個人が受け取るPortfolio Interest Exemption部分はsection 1442の法人目的でも同じ扱いってことになる。
「でも源泉税と外国人に対するSubstantiveな課税はパラレルな規定だけど、テクニカルには課税と徴収を規定した別の税法なんで、源泉税の対象にならなくても外国人側のSubstantiveな課税が上乗せだったら意味ないじゃん」って思った読者は偉い。座布団5枚。その通りなんだけど、その点に関しては、Substantiveな課税にかかわる投資所得に対するsection 899上乗せ対象税金はsection 871(a)(1)と(2)(個人)とsection 881(a)(法人)を参照して規定されてて、Portfolio Interest Exemptionを含む例外部分の871(h)や881(c)は各々871(a)(1)と881(a)に「…except as provided in subsection (h)」、「…except as provided in subsection (c)」ってBuilt-Inされてるんでこっちも上乗せ対象にならないだろう。
Portfolio Interest Exemptionは超パワフルだけど、今までは仮にLPS経由で気づいたらVotingアレンジ的に議決権10%になっちゃったり、持分に対するUpwardやDownward Attributionを繰り返すうちに騙し船みたいに貸し手がCFCになっちゃりしても、源泉税に関して条約にアクセスできるストラクチャー、例えばForeign Reverse Hybrid、だったら「最悪条約があるからいいね!」っていうバックストップがあって安心してECIではない(受け取り利息がいつECIになるかは超Deepなんでいつか特集したいけどね)Private Creditとかに投資できてた。ところがsection 899の適用納税者になる外国人投資家はPortfolio Interest Exemption適格だったら源泉税ゼロ(上の理論でsection 899の適用はないっていう前提)、不適格だと源泉税35~50%だから、この差異はイコール投資するかしないかの判断になる。ヘッジファンド等がいくら高い利率のDebtを「Structure」してても(もちろんその分リスクは高い)、35~50%源泉税取られたんじゃリターンに与える悪影響大き過ぎだもんね。
ということで前回のポスティングで付加税率の対象となる税金に細かく触れたんで、同様の規定をsection 891が一行足らずで片づけてるのに対しsection 899では漏れがないように徹底して規定を明確化しようとしてる点は分かってもらえたと思うけど、最新バージョンではそれがさらに強化されたことになる。この手の法律はその性格から外国人に対する課税の話しなんで、SubstantiveなTaxと徴収メカニズムとしての源泉税や源泉徴収の双方を漏れなく個々にカバーする必要があるから複雑にならざるを得ないよね。
で、次回からはsection 899の具体的な付加税率パーセントその他の話しの続き。
う~ん、Nakedの「the Long and Winding Road」と長い間こっちがオリジナルって信じてたPhil Spectorにより「Wall of Sound」化された元々のLP(Let It Be)バージョン程は違わないけど、シングルのGet BackとLPのGet Backくらいの差はあるね。シングルのGet BackはGeorge Martinの手によるProduceなんでPhil SpectorのLPバージョンに比べてもちろん加工が少なく微量なエコーでライブ感が出てて格好いい。LPのLet It Be全体にPhil SpectorのProductionは好みの問題だけど音も構成もToo Muchな感じはあるよね。特に「Get Back」プロジェクトのWhole Pointは(RevolverとかPepperの)スタジオProductionに基づくステージでは再現困難なArtからライブロックへの回帰(この反動はWhite Albumで既に達成されてた観はあるんだけどね)がテーマだったことを考えるとね。同じProductionでもLet It Beの後(幼いころはよく理解していなかったけど、Rooftopの直後なんだよね、あのRecording)に収録されたAbbey RoadはGeorge Martinの手によるものでthe Beatles本人たちの意思が反映されてた大傑作だけど、Let It BeのProduction版は必ずしもそうじゃないんでRubber Soul以降のthe BeatlesのLPとしてはチョッと趣が異なるね。「Get BackのJohn Lennonによるギターソロは難しいソロじゃないけど、一カ所John Lennonらしい(I Feel Fineのリフみたいにコードを押さえて上から小指でみないな指の使い方に順じる)普通ではそんな弾き方思いつかないみたいな手が大きめじゃないと弾き難いフレーズ部分があって・・・」とかまたしても不味い流れになりそうなんで、ここからは気を取り直して最新バージョンのSection 899法案に基づいたポスティング。今日は今まで触れた規定で最新バージョンがアップデートしてる部分。
個人納税者のECI
前回のポスティングで税率上乗せ対象の税金の話しをした際に、個人納税者に関しては複雑な言い回しで、FIRPTA以外のECIには上乗せはないって読める点に触れた。新バージョンでも同じ規定なんだけど、法文の構成が少し改善されててよりこの点が明確に表示されている。ただ、なんで個人のECIだけ救済されてるのかっていう理由は未だ不明のまま。
源泉税は条約適用ナシ+上乗せ税率
源泉税に対する税率上乗せにかかわる新バージョンのClarificationは超Deep Impact。まず源泉税のベース税率、すなわち上乗せ前の税率、は条約は加味しない点を明確にしてる。具体的には条約の適用を規定しているsection 894(このsection、ケイマンLPSをCheck-the-Boxする「オフショアフィーダー」経由のヘッジファンド投資とかストラクチャーしている人は良く知ってるね?)や憲法のArticle VI Supremacy Clauseを税法と条約に関して条文化しているsection 7852(d)にかかわらず、条約の適用は認められず源泉税率は米国内法の30%になる。
FIRPTA源泉にも同様の条約適用不可が規定されてるけど、こちらはそもそも条約のオーバーライドは通常ないんで特に条約の特典を否認するまでもない。
で、税率上乗せ前の税率には条約の適用がないっていうことで、結果源泉税率は30%にプラス上乗せ税率になる。この点はオリジナルのSection 899案では必ずしも明確ではなく、上乗せはあるとしても条約レートにプラスされることになるのかなっていう感覚だった。日米の例だと配当は6か月所有期間・50%以上持分とか条件を満たせば源泉税0%だけど、仮に上乗せが20%だとして、section 899の適用後は20%になるのかなと期待してたところ実は50%になることが明確になった。
米国非関連者に対するローン利息に関しては多くのケースで条約ではなく米国内法のPortfolio Interest Exemptionで源泉税はゼロになる。Portfolio Interest Exemptionを適用してるケースと上乗せ税率の関係はどうなるんだろうか。おそらく、源泉税にかかわるsection 899上乗せ対象税金はsection 1441(a)(個人)とsection 1442(a)(法人)を参照して規定されてて、section 1441に関してはPortfolio Interest Exemptionを含む源泉税免除部分のsection 1441(c) はsection 1441(a)に「Except as otherwise provided in subsection (c)…」ってBuilt-Inされてるんで上乗せ対象にならないだろう。法人側のsection 1442も同様で、section 1442自体に源泉税は「in the same manner and on the same items of income as is provided in section 1441」と明記され、さらに「the references in section 1441(c)(9) to sections 871(h) and 871(h)(3) or (4) shall be treated as referring to sections 881(c) and 881(c)(3) or (4)…」、すなわち普通の言語に直すとsection 1441が源泉税免除対象として言及している個人が受け取るPortfolio Interest Exemption部分はsection 1442の法人目的でも同じ扱いってことになる。
「でも源泉税と外国人に対するSubstantiveな課税はパラレルな規定だけど、テクニカルには課税と徴収を規定した別の税法なんで、源泉税の対象にならなくても外国人側のSubstantiveな課税が上乗せだったら意味ないじゃん」って思った読者は偉い。座布団5枚。その通りなんだけど、その点に関しては、Substantiveな課税にかかわる投資所得に対するsection 899上乗せ対象税金はsection 871(a)(1)と(2)(個人)とsection 881(a)(法人)を参照して規定されてて、Portfolio Interest Exemptionを含む例外部分の871(h)や881(c)は各々871(a)(1)と881(a)に「…except as provided in subsection (h)」、「…except as provided in subsection (c)」ってBuilt-Inされてるんでこっちも上乗せ対象にならないだろう。
Portfolio Interest Exemptionは超パワフルだけど、今までは仮にLPS経由で気づいたらVotingアレンジ的に議決権10%になっちゃったり、持分に対するUpwardやDownward Attributionを繰り返すうちに騙し船みたいに貸し手がCFCになっちゃりしても、源泉税に関して条約にアクセスできるストラクチャー、例えばForeign Reverse Hybrid、だったら「最悪条約があるからいいね!」っていうバックストップがあって安心してECIではない(受け取り利息がいつECIになるかは超Deepなんでいつか特集したいけどね)Private Creditとかに投資できてた。ところがsection 899の適用納税者になる外国人投資家はPortfolio Interest Exemption適格だったら源泉税ゼロ(上の理論でsection 899の適用はないっていう前提)、不適格だと源泉税35~50%だから、この差異はイコール投資するかしないかの判断になる。ヘッジファンド等がいくら高い利率のDebtを「Structure」してても(もちろんその分リスクは高い)、35~50%源泉税取られたんじゃリターンに与える悪影響大き過ぎだもんね。
ということで前回のポスティングで付加税率の対象となる税金に細かく触れたんで、同様の規定をsection 891が一行足らずで片づけてるのに対しsection 899では漏れがないように徹底して規定を明確化しようとしてる点は分かってもらえたと思うけど、最新バージョンではそれがさらに強化されたことになる。この手の法律はその性格から外国人に対する課税の話しなんで、SubstantiveなTaxと徴収メカニズムとしての源泉税や源泉徴収の双方を漏れなく個々にカバーする必要があるから複雑にならざるを得ないよね。
で、次回からはsection 899の具体的な付加税率パーセントその他の話しの続き。
Friday, February 21, 2025
Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)
前回はGlobal Tax Deal対抗・報復措置のひとつsection 899法案の話しを続けた。特にsection 899の発動メカニズムや財務長官に法的に課せられる詳細なレポート・相手国との交渉義務に触れた。今日はsection 899が規定する具体的な対抗・報復措置に触れ、その後、section 899がどのような税法を域外課税や差別的課税と定義しているかに移りたい。域外課税や差別的課税の定義は多分、今日のポスティングでは辿り着かないと思うけど、section 899がターゲットしてる多国税法の詳細だから楽しみにしててね。
で、その前にまずは簡単に議会の立法動向。
下院 v 上院Budget Resolution
前回も触れた通り、下院がようやくBudget Resolutionに漕ぎつけた後も下院1-Track案と上院の2-Track案のどちらで進めるのか不確実な状況が続いていた。下院の進展にもかかわらず、上院は未だに下院の動向は不確実っていう読みで独自の2-Trackアプローチのうちの1つ目の国境警備、国防、エネジー生産にかかわるBudget Resolutionの可決を敢行した。民主党が決議を遅らせるために提出する多くの修正提案を尽く否決しないといけない「Vote-a-Rama」が10時間続き徹夜の勢いになった後の金曜日早朝に可決したんだけど、「どっちでもいいから可決させるように」的なスタンスを貫いてたトランプが上院審議の直前になって「下院のBudget Resolutionは一発で全てやりたいことが盛り込まれてるんでそっちの方が優れてる」って言いだした。とは言え、上院としては取り合えず独自のBudget Resolutionを用意しておいて、万一(?)下院共和党内で歳出減の対象や規模に関して一枚岩になれないケースに「プランB」で備えた状況。また上院が希望している2-Track第二弾のBudget ResolutionはTCJAを10年とかの時限立法ではなく恒久的に延長、さらにトランプが選挙活動中に言及していたチップ非課税その他の減税もフルに盛り込みたいということでもっとお金が掛かる。下院のBudget Resolutionではその点保守的な歳出上限に合意されてて上院の目から見ると物足りないってところでも意見が割れてる。
ここにきてトランプが下院1-Track案支持を表明したことで、下院議長のMike JohnsonはMedicaidの運命とかTouchyな議論が尾を引いている下院共和党内の調整に少しはレバレッジができたんだろうけど、今後の党内調整の先行きは引き続き余談を許さない。MarylandのNational Harborで開催されているCPACは従来から保守っていうか今ではMAGAのWho’s Whoイベントだけど、Mike Johnsonも昨日CPACでスピーチしてた。国境警備、減税、規制緩和、米国エネジー生産拡大、等の共和党のPriorityを一気に実現する現世代最大のチャンスを活用しないといけないって間接的に1-Trackを匂わせるテーマだったけど、1‐Track案進展に具体的に触れることはなかった。この1~2週間は下院の動向から目が離せないね。
Section 899法案対抗・報復措置
対抗・報復措置は当然だけどSection 899法案の神髄部分に当たるんで法案18ページのうち10ページを割いて詳細に規定されている。措置は大別して「付加税率」と「その他の措置」の2つで構成される。付加税率の方は元祖section 891の税率ダブルに通じるものがあるけど、規定の詳細度合いは比較にならない。
付加税率
Section 899法案の付加税率は更に「法人・所得税(Income Tax)」と「源泉税(Withholding Tax)」に区分されて規定されてる。これは、源泉税の最終的な負担者は外国人だけど徴収義務は支払い側、多くのケースで米国人、に課せられてるんで、通常の法人・所得税と区分して規定することで源泉徴収を行う者が源泉時に付加税率を上乗せする義務がある点を明確にするため。
で、法人・所得税に関しては、「適用日」の後に開始する課税年度に「適用納税者」に課される法人・所得税の計算は「適用パーセント」上乗せした税率を適用して行うっていうもの。カッコで表示している各用語はSection 899法案で定義されてて、これらは各々後述する。
付加税率の対象となる税金は1) 米国投資所得(ECIでないFDAPおよびほぼあり得ないに近いSituationでも個人のCapital Gain)に対する30%課税(原則、源泉税で徴収されるタイプの税金だけど、税法的にSubstantiveなChargeは投資所得を受け取る外国人が対象で、源泉が不十分な場合に正確には外国人が1120Fや1040NRで自ら支払う義務がある)、2) ECIに対する法人・所得税、および法人に対するBranch Profits Tax、の2タイプとなる。
ただ、個人納税者に関しては軽減措置(?)が複雑な言い回しで規定されていて、FIRPTA以外のECIに関しては付加税率の上乗せはない、としか読めない面白い緩和策がある。すなわち個人納税者はFIRPTA課税(=みなしECI)に対する所得税は付加税率が上乗せされた懲罰税率に基づいて税金を計算するけど、それ以外の通常のECIは付加税率は加味しない普通の税率がそのまま適用されるってことみたい。条文の構成が複雑で条文何回か読んだんだけどチョッと唐突な緩和で、おそらく法人だったら多くのケースで子会社を介して米国で事業してるんで米国事業所得には付加税率の上乗せがないっていう情状を酌量してのご厚意(?)かもね。でも、現地法人の取り扱いとパラレルにするっていう意図だとしたら(現時点では個人的な推測に過ぎない)、法人でも支店だったら上乗せが税率対象だし、逆に個人でも米国法人組成できるから個人的にイマイチに謎。もっと別に奥深い理由があるのかもね。
源泉税
源泉税に関しては、まず適用日後に適用納税者向けの投資所得支払いに課せられる源泉税は税率上乗せ対象。さらに適用日後の適用納税者による米国不動産持分(USRPI)譲渡に関して譲受人がFIRPTA源泉徴収する際の税率も上乗せとなる。最初の投資所得に対する源泉税は、納めるのは支払主だけど、税金としては受け手の外国人の税金。ただし、正しく源泉されてる限り源泉税をもって納税義務終了なんで、上述の投資所得に対する法人・所得税に適用される上乗せ後の税金は、源泉税もきちんと上乗せ後の税率に基づいて行われてる場合、それ以上の作業はない。万一、支払主が上乗せ前の通常の税率で源泉税を徴収してしまったケースは、受け手の外国人が申告書を提出して差額を納付する義務が生じる。源泉税徴収の時点で税率を上乗せしないといけないってことは、支払主は相手がsection 899の適用納税者かどうかをW-8とかから把握しないといけなくなる。法的には源泉が過小だとその分源泉税徴収義務者にも差額支払責任が課せられるからね。ただでさえ源泉税を徴収する側はコンサバなポジションを取ることが多いんで、怪しきは…みたいにやたらめったら上乗せ税率で源泉されたりしたら大変そう~。
FIRPTA源泉
投資所得に対する源泉税と異なり、FIRPTAに適用される源泉徴収は、源泉「税」ではなく仮払いの性格。最終的にUSRPI譲渡人の外国人はいずれにしても別途譲渡益をECIとして申告する。その際に源泉済みの金額は前納の予定納税同様に申告時のクレジットになる。FIRPTAの源泉徴収額は原則、譲渡益とは関係ないグロスの譲渡対価の15%なんで最終的に譲渡人の外国人が申告する時点で大概還付になる。上乗せでグロスの譲渡対価に対する源泉徴収が20%だの35%だのになると、いくら実際のFIRPTA課税も連動して25%だの40%だのになるとしても、両者の乖離はますます大きくなるだろうから、そんな時にはIRSにAdvance Withholding Certificateの交付申請をしないとね。あれもなかなか交付されなかったりして結構面倒だよね。Elon MuskのDOGEチームがAIとかで自動化してくれて瞬時に交付されるような日が来るかもね!
FIRPTAの源泉はそのルール自体が複雑なんで、上乗せ対象の税金の説明も複雑。具体的には次の一連の源泉徴収時の税率が上乗せ対象となる。
適用納税者パートナーがいる米国内パートナーシップがUSRPIを譲渡する場合(不動産ファンドに投資してるようなケース)FIRPTA源泉徴収は譲受人ではなくパートナーシップが行うんだけど、その際の源泉徴収税率。ちなみにこのストラクチャーに適用されるFIRPTA源泉はグロス対価の15%のではなく、譲渡益に通常の法人・所得税率を適用して計算するっていう合理的なもの。もちろん源泉する者が譲渡損益の計算をできる立場にあるからこそ可能な規則だけど、この理由だけでも直接USRPI所有するよりパートナーシップ経由で所有するのが有利だよね。
FIRPTA関係の源泉徴収はまだまだいろいろある。一点大枠の話しだけど、以前にFIRPTA大特集を何か月か掛けてポスティングした際にも触れた通り、FIRPTA課税(USRPIを譲渡する外国人に対する申告課税)とFIRPTA源泉(譲受人や分配人に義務付けられる前納)は個々に別の規定と考えておく方が安全。ここでもFIRPTA課税の方は源泉税ではなく通常の法人・所得税に対する上乗せが規定されてて、ここではFIRPTA課税のバックストップみたいな役割を果たすFIRPTA源泉時に適用する税率に対する上乗せの話しっていう点を覚えておくようにね。
で、上乗せ税率対象となるその他のFIRPTA源泉を列挙しておくと、適用納税者に当たる外国法人による含み益を持つUSRPIの分配。これはFIRPTA源泉徴収対象だけど、分配する法人自体のFIRPTA課税に対する源泉だから実態としては自分の税金の予定納税。株式がUSRPIと取り扱われる米国内法人による適用納税者への償還分配、清算分配、E&Pを超える分配に対する源泉徴収。米国・外国パートナーシップ等によるUSRPIの適用納税者に対する分配に対する源泉徴収。財務省規則で規定される範囲でUSRPIを所有するパートナーシップ持分等譲渡。RICやREITによる適用納税者への分配。
よくここまで詳細にFIRPTA源泉カバーしてるよね。次回は適用納税者と以外に難しい適用日について。
で、その前にまずは簡単に議会の立法動向。
下院 v 上院Budget Resolution
前回も触れた通り、下院がようやくBudget Resolutionに漕ぎつけた後も下院1-Track案と上院の2-Track案のどちらで進めるのか不確実な状況が続いていた。下院の進展にもかかわらず、上院は未だに下院の動向は不確実っていう読みで独自の2-Trackアプローチのうちの1つ目の国境警備、国防、エネジー生産にかかわるBudget Resolutionの可決を敢行した。民主党が決議を遅らせるために提出する多くの修正提案を尽く否決しないといけない「Vote-a-Rama」が10時間続き徹夜の勢いになった後の金曜日早朝に可決したんだけど、「どっちでもいいから可決させるように」的なスタンスを貫いてたトランプが上院審議の直前になって「下院のBudget Resolutionは一発で全てやりたいことが盛り込まれてるんでそっちの方が優れてる」って言いだした。とは言え、上院としては取り合えず独自のBudget Resolutionを用意しておいて、万一(?)下院共和党内で歳出減の対象や規模に関して一枚岩になれないケースに「プランB」で備えた状況。また上院が希望している2-Track第二弾のBudget ResolutionはTCJAを10年とかの時限立法ではなく恒久的に延長、さらにトランプが選挙活動中に言及していたチップ非課税その他の減税もフルに盛り込みたいということでもっとお金が掛かる。下院のBudget Resolutionではその点保守的な歳出上限に合意されてて上院の目から見ると物足りないってところでも意見が割れてる。
ここにきてトランプが下院1-Track案支持を表明したことで、下院議長のMike JohnsonはMedicaidの運命とかTouchyな議論が尾を引いている下院共和党内の調整に少しはレバレッジができたんだろうけど、今後の党内調整の先行きは引き続き余談を許さない。MarylandのNational Harborで開催されているCPACは従来から保守っていうか今ではMAGAのWho’s Whoイベントだけど、Mike Johnsonも昨日CPACでスピーチしてた。国境警備、減税、規制緩和、米国エネジー生産拡大、等の共和党のPriorityを一気に実現する現世代最大のチャンスを活用しないといけないって間接的に1-Trackを匂わせるテーマだったけど、1‐Track案進展に具体的に触れることはなかった。この1~2週間は下院の動向から目が離せないね。
Section 899法案対抗・報復措置
対抗・報復措置は当然だけどSection 899法案の神髄部分に当たるんで法案18ページのうち10ページを割いて詳細に規定されている。措置は大別して「付加税率」と「その他の措置」の2つで構成される。付加税率の方は元祖section 891の税率ダブルに通じるものがあるけど、規定の詳細度合いは比較にならない。
付加税率
Section 899法案の付加税率は更に「法人・所得税(Income Tax)」と「源泉税(Withholding Tax)」に区分されて規定されてる。これは、源泉税の最終的な負担者は外国人だけど徴収義務は支払い側、多くのケースで米国人、に課せられてるんで、通常の法人・所得税と区分して規定することで源泉徴収を行う者が源泉時に付加税率を上乗せする義務がある点を明確にするため。
で、法人・所得税に関しては、「適用日」の後に開始する課税年度に「適用納税者」に課される法人・所得税の計算は「適用パーセント」上乗せした税率を適用して行うっていうもの。カッコで表示している各用語はSection 899法案で定義されてて、これらは各々後述する。
付加税率の対象となる税金は1) 米国投資所得(ECIでないFDAPおよびほぼあり得ないに近いSituationでも個人のCapital Gain)に対する30%課税(原則、源泉税で徴収されるタイプの税金だけど、税法的にSubstantiveなChargeは投資所得を受け取る外国人が対象で、源泉が不十分な場合に正確には外国人が1120Fや1040NRで自ら支払う義務がある)、2) ECIに対する法人・所得税、および法人に対するBranch Profits Tax、の2タイプとなる。
ただ、個人納税者に関しては軽減措置(?)が複雑な言い回しで規定されていて、FIRPTA以外のECIに関しては付加税率の上乗せはない、としか読めない面白い緩和策がある。すなわち個人納税者はFIRPTA課税(=みなしECI)に対する所得税は付加税率が上乗せされた懲罰税率に基づいて税金を計算するけど、それ以外の通常のECIは付加税率は加味しない普通の税率がそのまま適用されるってことみたい。条文の構成が複雑で条文何回か読んだんだけどチョッと唐突な緩和で、おそらく法人だったら多くのケースで子会社を介して米国で事業してるんで米国事業所得には付加税率の上乗せがないっていう情状を酌量してのご厚意(?)かもね。でも、現地法人の取り扱いとパラレルにするっていう意図だとしたら(現時点では個人的な推測に過ぎない)、法人でも支店だったら上乗せが税率対象だし、逆に個人でも米国法人組成できるから個人的にイマイチに謎。もっと別に奥深い理由があるのかもね。
源泉税
源泉税に関しては、まず適用日後に適用納税者向けの投資所得支払いに課せられる源泉税は税率上乗せ対象。さらに適用日後の適用納税者による米国不動産持分(USRPI)譲渡に関して譲受人がFIRPTA源泉徴収する際の税率も上乗せとなる。最初の投資所得に対する源泉税は、納めるのは支払主だけど、税金としては受け手の外国人の税金。ただし、正しく源泉されてる限り源泉税をもって納税義務終了なんで、上述の投資所得に対する法人・所得税に適用される上乗せ後の税金は、源泉税もきちんと上乗せ後の税率に基づいて行われてる場合、それ以上の作業はない。万一、支払主が上乗せ前の通常の税率で源泉税を徴収してしまったケースは、受け手の外国人が申告書を提出して差額を納付する義務が生じる。源泉税徴収の時点で税率を上乗せしないといけないってことは、支払主は相手がsection 899の適用納税者かどうかをW-8とかから把握しないといけなくなる。法的には源泉が過小だとその分源泉税徴収義務者にも差額支払責任が課せられるからね。ただでさえ源泉税を徴収する側はコンサバなポジションを取ることが多いんで、怪しきは…みたいにやたらめったら上乗せ税率で源泉されたりしたら大変そう~。
FIRPTA源泉
投資所得に対する源泉税と異なり、FIRPTAに適用される源泉徴収は、源泉「税」ではなく仮払いの性格。最終的にUSRPI譲渡人の外国人はいずれにしても別途譲渡益をECIとして申告する。その際に源泉済みの金額は前納の予定納税同様に申告時のクレジットになる。FIRPTAの源泉徴収額は原則、譲渡益とは関係ないグロスの譲渡対価の15%なんで最終的に譲渡人の外国人が申告する時点で大概還付になる。上乗せでグロスの譲渡対価に対する源泉徴収が20%だの35%だのになると、いくら実際のFIRPTA課税も連動して25%だの40%だのになるとしても、両者の乖離はますます大きくなるだろうから、そんな時にはIRSにAdvance Withholding Certificateの交付申請をしないとね。あれもなかなか交付されなかったりして結構面倒だよね。Elon MuskのDOGEチームがAIとかで自動化してくれて瞬時に交付されるような日が来るかもね!
FIRPTAの源泉はそのルール自体が複雑なんで、上乗せ対象の税金の説明も複雑。具体的には次の一連の源泉徴収時の税率が上乗せ対象となる。
適用納税者パートナーがいる米国内パートナーシップがUSRPIを譲渡する場合(不動産ファンドに投資してるようなケース)FIRPTA源泉徴収は譲受人ではなくパートナーシップが行うんだけど、その際の源泉徴収税率。ちなみにこのストラクチャーに適用されるFIRPTA源泉はグロス対価の15%のではなく、譲渡益に通常の法人・所得税率を適用して計算するっていう合理的なもの。もちろん源泉する者が譲渡損益の計算をできる立場にあるからこそ可能な規則だけど、この理由だけでも直接USRPI所有するよりパートナーシップ経由で所有するのが有利だよね。
FIRPTA関係の源泉徴収はまだまだいろいろある。一点大枠の話しだけど、以前にFIRPTA大特集を何か月か掛けてポスティングした際にも触れた通り、FIRPTA課税(USRPIを譲渡する外国人に対する申告課税)とFIRPTA源泉(譲受人や分配人に義務付けられる前納)は個々に別の規定と考えておく方が安全。ここでもFIRPTA課税の方は源泉税ではなく通常の法人・所得税に対する上乗せが規定されてて、ここではFIRPTA課税のバックストップみたいな役割を果たすFIRPTA源泉時に適用する税率に対する上乗せの話しっていう点を覚えておくようにね。
で、上乗せ税率対象となるその他のFIRPTA源泉を列挙しておくと、適用納税者に当たる外国法人による含み益を持つUSRPIの分配。これはFIRPTA源泉徴収対象だけど、分配する法人自体のFIRPTA課税に対する源泉だから実態としては自分の税金の予定納税。株式がUSRPIと取り扱われる米国内法人による適用納税者への償還分配、清算分配、E&Pを超える分配に対する源泉徴収。米国・外国パートナーシップ等によるUSRPIの適用納税者に対する分配に対する源泉徴収。財務省規則で規定される範囲でUSRPIを所有するパートナーシップ持分等譲渡。RICやREITによる適用納税者への分配。
よくここまで詳細にFIRPTA源泉カバーしてるよね。次回は適用納税者と以外に難しい適用日について。
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