Wednesday, June 18, 2025

Mega-Bill上院法案「Morning After」

上院法案公表から一夜明けたMorning After。再度法案に目を通したけどsection 899は公表直後に書いた昨日のポスティングで合ってると思う。Super-BEATはBEATそのものが大きく変わってるんでNew BEATの話しも一緒にしないとSuper-BEATの理解が進まないんで次回にでも。

で、Big Beautiful Bil(「BBB」)上院法案公開から一夜明けてDCサークルはBBB三昧。

BBB

っていうのは本当なんだけど、実は話題のBBBは「Bunker-Buster Bomb」のこと。イスラエルがイランの対空ディフェンス能力を除去して制空権を確保していて自由に飛んでいけるっていう信じられない展開で地上に露出している戦略施設は既に破壊したらしいんだけど、イランの核施設の一つが山奥の地下深くにあるのが分かっていてそれを破壊できるのは米国が持つBBBのみらしい(全くの専門外なんで全部聞いた話し)。でもトランプ・MAGAは米国外のConflictには関与しないっていうのが原則ポリシー。そこがネオコンやDCのEstablishmentと違うところ。

ただトランプ派内でも意見が割れるところで、America FirstポリシーはAmerica Onlyではなく、米国を敵視している国の核施設を破壊できる千載一遇のチャンスなんだから国防はAmerica Firstポリシーに合致するっていう派がいたり。BBBを打ち込むにはUS Air ForceのB-2 Bomberがこっそり飛んで行く必要があってB-2 BomberはMissouriのベースに居るらしいんで片道15時間(JFKから東京出張行くのとあんまり変わんないね!)給油を繰り返しながら誰にも探知されずに飛んでいくのだそう。MAGAとしては国外のConflictに関与しないのが原則だけどBBBだけ打ち込みに行くんだったらいい?って思う派もあるんだけど、その後の混乱に引きずり込まれるのは必至っていう話しもありイラクやアフガンの二の舞だけは避けないとっていうところでここは我慢どころっていう派もいたり喧々囂々。どうなるでしょうか。

Last Minuteロビー活動

で、それに比べるとSALTが...とかの戦いは平和な話しって感謝を禁じ得ない(?)Mega-BillのBBB。まあ大概において下院法案を踏襲して両院一致バージョンの早期可決を考慮したんだろうな、っていう内容とは言えやはりSALT、Medicaid、エネジークレジット等は未だに調整中。SALTくらいでって思うけど、NYの17th District(日本人の駐在の方にもお馴染みのWestchesterを含むDistrict)の共和党下院議員Mike LawlerとかはSALT枠を拡大しないと中間選挙で戦えないっていう話し。共和党絡みの票読みしてる人の話しだとこれは冗談ではなく本当らしい。下院の議席数は僅差だから共和党下院としては一議席でも重要。ってことで事が込み入る。

Section 899に関しては上院法案に趣旨はそのまま入ったことから上院でも899の重要性が認識された証拠になったけど、まだまだ転覆させようって激しいロビー活動が続いてるらしい。Wall Street派に加えて今度は不動産業界登場。海外からの投資に冷却効果があるんでMinority出資は免除して欲しいみたいな書簡をJohn ThuneとMike Crapoに送り付けたりしてる。以前のREIT特集で触れたけど不動産業界の究極の夢はFIRPTAの完全撤廃!さすがにそれは「Good luck」って感じだけど163(j)にしても上場REITにしても、古くはUP-REITがSub KのAnti-Abuse Regulationsでお墨付きをもらったり何かと不動産業界は厚遇特別扱い。今ではお馴染みのUP-CはこのUP-REITに対するAnti-Abuse除外お墨付きがなければストラクチャーとして蔓延しなかったかもって考えると不動産業界のおかげで一般事業のパススルー上場時のパワフルなストラクチャーオプションが増えて感謝。不動産業界がパワフルなのは、例えばWall Streetとかだったら特定の州の議院しか聞く耳を持たないかもしれないけど、不動産は全州にあるんでロビー活動時にLeverageが効くらしい。不動産業界とは別に外国の投資銀行とかもロビー活動してるらしいけどScott Bessent長官曰く「ロビー活動の矛先が間違っている。自分の国の政府に不公平税制を撤回するようロビーするべき」とのこと。不動産パワーで更なる緩和措置があるでしょうか。

来週上院投票?

ただ、section 899に限らず公表された上院法案は一週間ほど更なる変遷を経てJohn Thune曰く来週水曜日か木曜日に最初の投票、その後、最終投票をその直後の週末にしたいということ。ということで決して最終版ではないけどタイトなタイムライン。上院可決してその後に下院とConferenceで調整したりしてると時間が掛かるんで、上院の調整と同時にPre-Conferenceですり合わせして一気に通すっていうもくろみらしい。上院だけでもマジックナンバーの4人造反が居るかどうか不明。Rand Paul、MedicaidのJosh HawleyやSusan Collins…。どうなるでしょうか。

次回はNew BEATとSuper-BEATについて。

Monday, June 16, 2025

税制改正上院バージョン公開「899の運命は?」

前回のポスティングを「次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね」って締めくくったけど、本当にその通りになりました!米国時間の金曜日に結局出なかったんで月曜日は怪しいなと思って移動中にもかかわらず朝から目を光らせたんだけど、ちょうどJFKに着いた直後Air Train降りるタイミングで公表を知った。

Air Train降りてApple Pay使えるようになったからマシだけどチョッとアナログな感じの改札出てE Trainに向かう途中のエスカレーター降りたところで一旦Tim Hortens(覚えてる?パートナーシップ使って米国株主が367に抵触しない形でカナダにInversionした話し)でコーヒー買って超ザっと目を通してから地下鉄に乗ったけど、大概において思ってた通り。ビジネス界が望んでいた163(j)/174/168(k)は下院と異なり恒久化、チップ・残業代・自動車ローン金利等のトランプ選挙公約はそのまま盛り込まれてた。

チョッと驚いたけどある意味やっぱり・・・だったのはSALT控除。現状の$10Kを下院法案では$40Kに引き上げてたけど、$30Kくらいにされちゃうのかなって思って恐る恐る読んだらナンと$10Kのまま。え~、下院にはCAやNYのDistrict議員がいるけど、上院は各州2名でCAやNYの高税率州の共和党上院議員はいないから仕方ないのかもしれないけど挑戦的。上院にしてみれば何で規律のない歳出を繰り返す州の税収を部分的に連邦が負担する必要があるのかってことで特に州個人所得税ナシのフロリダ州のRick Scottみたいに「(SALT控除は)ゼロがいいんじゃないかな」っていう世界になる。ただ、法文とは別に公表されている解説で「SALTは議論を呼ぶ検討なので取り合えず$10Kにしておくけど最終ではない」って一応コメントされてるんで調整が付いてないってことだね。

で、何と言っても読者のみなさんの関心がここ数週間急激にアップしているOpportunity Zone...、じゃなくてsection 899はどうなったでしょうか。

Section 899上院法案バージョン

こちらもほぼ想定の範囲内だったけど基本的な制度設計は同じ。一読して気づいた「お~こうきたか」みたいな点をいくつか。落ち着いたらもう少しジックリ読んで詳細解説してみたいけど今日は取り急ぎハイライト。それにしても規則内容は同様なんだけど法文の構成・順序が全く変わってるんで面食らう。下院法案の癖が抜けるまではチョッと調子でない。

Offending Foreign Country

下院法案ではUnfair Foreign Tax制度を導入してる国を「Discriminatory Foreign Country」って定義してたけど、上院法案ではこれが「Offending Foreign Country」に。DiscriminatoryとOffendingってConnotation的にどっちがマシなんだろうか。普段Offendingって言うと人を不快にさせる、またはルール違反っていう双方のニュアンスで使うけど、確かにそういわれてみるとUTPRやDSTでアメリカを不快にさせて、アメリカの視点からは国際法違反って考えるとうまくひとつの単語で複数のニュアンスを詰め込んだ表現かもね。

Unfair Foreign Tax

1月21日下院法案Mark IIに少し戻った感じでExtraterritorial TaxとDiscriminatory Taxの各々がまず定義されてるけど、Extraterritorial Taxに関しては定義後半に「UTPR」は含まれる、「DST」に関してはDiscriminatory Taxの定義そのものの1つとして明記されてるんで結局それらの制度を持ってたらそれでNG。あれDPTは?って思ったけど一読した限りではPer Se Unfair Foreign Taxから脱落したみたいだ。でも世界中の税制調べた訳じゃないけど、DPTって英国とオーストラリアだろうからUTPRやDST持ってたらDPTが救われても意味ないね。

「Extraterritorial tax」と「Discriminatory Tax」で異なる対処?

おそらく設計的に一番アレって思うのは下院法案では「Extraterritorial tax」でも「Discriminatory Tax」でもどっちか採択してたら対処は同じだったけど、上院バージョンは「Discriminatory Tax」だけの問題国に関しては付加税を活用した対処はなくApplicable Personに直接間接に50%超(議決権または価値ベース)所有される米国法人にSuper-BEATが適用されるだけの対処に見える。法文読む限りそうなんだけど100%自信ないんで明日もう少しスッキリした頭で読んでみたい。一方「Extraterritorial Tax」を持つ国は従来通り付加税とSuper-BEATの双方で対抗されるように見える。この差はExtraterritorial Taxは持ってないけどDiscriminatory Taxはあるっていう国にのみ関係ある話し。もっと意訳するとUTPR持ってる国はDSTがあろうとなかろうと下院法案通り双方の対処法対象で、DSTはあるけどUTPRはありませんって国はSuper-BEATのみってことになる。

Applicable Date

適用にもう少し時間を設けて問題国が自国の制度を変える猶予期間を確保するのがベターっていう話しが出てて、この点は潜在的な下院法案からの変更点になり得るっていう点は前回のポスティングで予想したけど、その通りになった。Applicable Date(国毎・暦年ベース)やApplicable PersonがFiscal Yearのケースの適用開始年度を決める際の例の3つの日のうちの一つ「899可決から90日後」っていうのがナンと4倍に延長され「899可決から一年後」ってなった。これで仮に既にUnfair Foreign Taxを持ってる国に関しては2027年1月1日がApplicable Dateになるね。

「On or After」 v 「After」

以前のポスティング「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた通り下院法案ではFiscal YearベースのApplicable Personに対する付加税およびSuper-BEAT適用初年度は例の3つの日(下院では899可決から90日、問題国のUnfair Foreign Tax可決から180日、Unfair Foreign Tax適用開始日)の一番遅い日の「後(After)」に開始するFiscal Yearってなってた。付加税%を決める際のApplicable Date決定目的では「on or after」だったんで4月1日にUnfair Foreign Taxが適用開始で(仮にその日が3つのうち一番遅い日とする)3月決算の場合は一年後の4月1日に開始するFiscal Yearが最初の適用年度になるはずだった。さすがにApplicable Dateと規則がパラレルじゃないのはおかしいって思ってかどのFiscal Yearから適用かの判断時も「On or after」に変更されている。ただ、上述の通り、3つの日のひとつ「899可決から90日後」が「一年後」に変更されてるんで、この日が(例えば2026年7月5日)が一番遅い日になることが多く、その場合は4月1日問題は生じない。

付加税%は15%打ち止め

下院法案では付加税のCAPを付加税が足された後の税率を参照して規定していた。具体的には結果として計算される%は法定税率プラス20%がCAPとされてた。今回は付加税%そのものが15%で打ち止めになるって規定されている。下院法案と同じく条約適用の納税者には条約レートがスターティングとなる。したがって源泉税が条約でゼロ%の場合は15%で終わるけど条約ないと45%だ。

「Portfolio Interest Exemption」

米国債やボンドの金利源泉税が高くなって米国への投資に悪影響っていう懸念に対応するためか、下院Budget CommitteeのFootnoteにPortfolio Interest Exemptionは付加税の対象じゃないって記載されてたけど、Budget CommitteeのFootnoteは法律ではないんで法文上の明確化が望まれて、もしかしたらこれも上院でアップデートされるかもっていう点は前回のポスティングで触れたけど、その通り法文で対象外って明確になった。これでボンドは一安心。また199Aのパススルー所得控除の対象としても追加されてたDirect CreditのBDCが受け取る利子がPortfolio Interest Exemptionの要件を満たしている場合、それを原資に支払う配当も同様に対象外となった。

っていうことで若干のTweakの上、上院でも温存っていう予想通りの結果だけど15%打ち止め、可決から1年、とか随所に緩和措置がみられたね。取り急ぎでした。

Saturday, June 14, 2025

Section 899下院法案バージョン (4)

Mega-Bill上院バージョン

Mega-Billのタックス部分を上院で担当するFinance Committeeが税制改正上院バージョンドラフトを今日(米国金曜日)にも公表するかもって噂されてたんでソワソワ・ワクワク (?)してたんだけど未だ出てないんで、結局来週になるのかもね。13日の金曜日は縁起悪いって考えた?なんてことはないと思うけど、DCの常識的に、この手のドラフトをあんまり前もって白日の下に晒すと、様々な利権を持つ者が精査してLast minuteのロビー活動に繋がるんで、来週奇襲攻撃的に公開するっていう戦術に出てるのかもね。

Medicaidは別の管轄なんで置いておいて税制面で、上院バージョンが公開される際の関心は下院・上院間で温度差が浮き彫りになってる項目にどんな風に対処するかっていう点。すなわちSALT控除枠が$40Kのままか、チップ・残業代非課税がSurviveするか、163(j)/174/168(k)の時限救済を恒久化できるか、エネジークレジットの撤廃タイミングを緩和するか、が主たる関心事になる。これは上院がポリシーとしてどう考えるかっていう角度からの興味もなくはないけど、以前も増れた通り下院バージョンからの乖離が大きくなると両院一致バージョンを早期に可決するゴールに影響があるっていうポリティクスの問題が大きい。

これら争点となっている政策は各々Mega-Billの財政コスト面でプレッシャーが高くなるんでこれらを取り込むとDeficit Hawk派と最後の線で保ってるバランス調整が更に複雑になる。コップのウォッカがこぼれ落ちる寸前までコインを沈め合ってる感じ。そんなかけひきも近頃はもどかしくなっていっそ倒しちゃうようなことがないようにね。メレンゲはホイップし過ぎたらしぼむんでちょうど良い頃合いに止めないとね。う~ん、Voyager良く聴いたな~。この前一瞬触れたRubber SoulからPepperじゃないけど、Pearl Pierce、Reincarnation、Voyager、No Sideって続くあの4枚は個人的にはMark II (?)のGolden Ageで今聴いても素晴らしい。それよりもっと前の子供の頃に聴いてた、ひこうき雲やMisllim、そしてその後のCOBALT HOUR(卒業写真!)、14番目の月(中央フリーウェイ!)なんかのMark Iもいいよね!

で、上院サイドのDeficit Hawk派はトランプが説得に回り徐々にRand Paul以外は歩み寄りの気配があるっていう報道(Rand Paulは結局ホワイトハウスのピクニックに招待してもらえたそう!)。え~Ron Johnsonも歩み寄り~?って思うかもしれないけど、Mega-Billとは別ルートで大統領府と赤字削減プランを協議するっていう約束になったっていう報道もある。ただSALTの控除枠に関して$30Kか$40Kかとか喧喧囂囂の駆け引きが続く中、上院Deficit Hawk派の一人のRick Scott (R-FL)がどれ位の控除枠だったら受け入れ可能かって質問された際に「ゼロがいいんじゃないかな」とコメントしたそうだ。けんもほろろだね。

Section 899の行方は?

これらが主たる大物ポイントだけど、最近頻繁に「section 899は上院でも可決しますか?」っていう質問を受けるようになった。テクニカルに正しい回答は「僕は占い師じゃないんで分かりません。トランプもJohn Thuneも定かじゃないと思います」ってものだけど、Bootleg的な回答は「section 899は若干のTweakはあり得てもそのまま可決される可能性大」って考えるのが合理的。最終法案に盛り込まれる確率は個人的には95%超レベルって考えている。ポリティクスに絶対はないんでその範囲では最高得点に属する。

その理由はいくつかあるけど、まず上院以外の2府、下院と行政府(大統領・財務省)は120%法案指示で一枚岩になってる点。1月20日の政権発足と同時に公表された「Global Tax Deal大統領令」と翌日の下院section 899 Take 2のコーディネートぶりは当時のポスティング「「Global Tax Deal」大統領令」で触れてるんでそっちも読んで欲しい。昨日から議会で財務長官のBessentが質疑応答してたけど、その中でsection 899に関しては「Revenge Tax」とか俗称が付いてるけど誤解を招くとした上で他国の暴走を止め米国議業が他国企業とフェアに競争するため必要と100%ディフェンドしていた。反対意見は主に問題国の納税者からのものとも発言してた。上院と下院で意見が割れる大物争点が他にある中、加えてsection 899を喧嘩に加えるインセンティブが上院にあるとは考え難い。

次に、以前も触れたけど、section 899の主たる米国内の反対はWall Streetからに限定されてるって思われる点。国債を含む米国資産への国外からの投資意欲に悪影響があるっていう理由。この点も投資銀行のアナリストによっては「影響はほぼない(Budget Committeeが後からFootnoteでPortfolio Interest Exemptionに影響はなくsection 899付加税の対象ではないってコメント付けたんで特に)」「影響あるとしたら既に織り込み済み」っていう見方をする者も居る。いずれにして審議過程で目立ったマーケットインパクトは見られない。

一方で一般企業はOECDのGlobal Tax Dealにコンプライアンスしたり、米国で合法的に税金払ってるのに、OECDの計算で(例、R&Dクレジット取って)たまたまLow-Taxedになったっていう理由で米国の利益に子会社所在国で課税されることに何の得もないんで、政権によるプッシュバックの評価は高い。噂によるとカナダや欧州の企業も、これで少しでもコンプライアンス負荷が軽減されて欲しいって実は「こっそり」応援してるところも少なくないっていう話しも聞いた(苦笑)。

ビジネス界からのプッシュバックがWall Streetからに限定されてる点と関連するけど、議員は何よりも次の選挙に備えて地元の有権者にいいところを見せないといけない。有権者の視点からから「みなさんのために高い州税の控除枠を拡大しました」とか「みなさんが欲しい太陽光発電の助成金(クレジット)廃止を2年遅らせました」とか「コメ不足をこうして解消します(ゴメン、これは日本か)」は分かり易い。一方で「OECDが世界に働きかけて導入を図っている不公平税制を取り入れている外国の企業に対する懲罰課税を撤廃しました」って言っても「OECD?石油の輸出国の団体だっけ?」とか「撤廃して自分たち(選挙区の一般People)になんか好影響あんの?」「何で外国企業のために時間使ってんの?」みたいな世界だろうから、そこに限られたPolitical Capitalを費やす議員が多いとは思えない。

また、Mega-Billの一つの大きな争点はBudget Windowの今後10年の財政赤字に対するインパクト。昨日のFinance CommitteeのヒアリングでBessent財務長官はCBOのScoreは関税による歳入を無視してる点、Dynamic scoreじゃない点も加味して「Budget Window内で財政は均衡する」っていう見解をシェアしていた。で、ただでさえ歳出減が徹底できず、歳入源は限られている中、$116Bっていう比較的大きな歳入がScoreされてる規則を敢えて撤廃するようなことは考え難い。

Section 899上院バージョン?

大概において上院での可決が見込まれるとして、じゃあ下院法案バージョンの法文に何らかの変更が加えられる可能性はどうだろうか。こちらも「Heaven Knows」(Donna Summer!)の世界だけど、付加税やSuper-BEATにかかわるSubstantiveな変更はないんじゃないかな~。もしかしたらThom Tillis (R-NC)がDiscriminatory Foreign CountryがUTPRを取り下げたりする時間的な猶予をもう少し与えた方がいいとか言ったそうなんで、例えばApplicable Date(常に暦年で国単位でひとつの日。覚えてる?)やFiscal Year納税者の適用開始年度判断時に使用する日にちのひとつ「section 899の可決90日後」っていうのを「180日」に変えたり(可決日次第だけどおそらく180日にすれば暦年ベースのApplicable Dateは早くて2026年の代わりに2027年1月1日になる)っていう感じのマイナーチェンジは考え得る。またWall Streetの懸念を一部払拭した「Portfolio interest exemption」適格の利子所得はsection 899の付加税対象外っていうBudget CommitteeのFootnoteコメントは法文からは明らかじゃないんで、法文自体をテクニカルアップデートして明確化を図るとかもあり得るかもね。

Recission Bill下院可決

数回前のポスティング「ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向」で触れたOECDに対する拠出金撤回を含むって報道されている法案(Recission Bill)は昨日下院で可決された。法案そのものには対象国際機関の個々の名称は記載されてないけど下院の資料にOECDやUNの名前が出てたんで内務省管轄のCIO accountからの拠出取り消しに含まれてるって推測される。次は上院だけど、面白いことにRecission Billは通常の上院60票ではなくReconciliationパッケージ同様に50票超の単純多数決で可決される。この辺の話しは専門外なんで理解している範囲での話しだけど、Recission Billを規定している「the Impoundment Control Act of 1974」では予算撤回を迅速に可能にするためRecission Billは「privileged」っていう位置づけにあるからっていうこと。ただ、共和党上院議員にも歳出減に躊躇しがちな議員は結構いるんで単純多数欠だからって可決が保証されてる訳じゃない。タイミング的にも上院の優先順位は当然Mega-Bill可決の方が高いんでJohn ThuneによるとRecission Billの審議はMega-Bill可決後の7月にずれ込むっていうことだ。

う~ん、$9B(Billion)のRecission Billの可決が定かじゃないってというこの厳しい現実。これじゃ米国の債務$36T(こちらはTrillion)はいつまでたっても解消できないよね。

Section 899 下院法案「Specified rate of tax」

Super-BEAT以外の元祖Section 899部分の下院法案の規則は3つの定義される用語で構成される。すなわち「Applicable Person」に関して各「Specified rate of tax」に「Applicable number of percentage points」を足すっていうもの。「Applicable Person」に関しては前回「Section 899下院法案バージョン (3)」で触れたし、「Applicable number of percentage points」は付加税%って勝手に命名して「Section 899下院法案バージョン (2)」で触れた。

で、最後に残るのが「Specified rate of tax」だけど、tax rateって表現されているものの要は付加税を足す対象となる税金タイプのことって考えると分かり易い。ただ、税金タイプに%を足すっていうのは表現としてパラレルじゃないんで、付加税%を足す対象として「定義される特定の税率」っていう意味でこんな規定になってる。付加税対象の税金タイプは下院法案(Track 3)になる前の1月21日のTrack 2に当たるH.R.591とほぼ同じなんで当時のポスティング「Global Tax Deal対抗・報復措置「Section 899」法案 (3)」を読んでみて欲しい。

マイナーだけど変更点としては下院法案では1月21日のH.R.591の付加税の対象税金タイプに「section 4948」(Private foundationに対するExcise tax)が加えられている。さらに前回触れた通り下院法案にはForeign Governmentに対する特別恩典はないってここ部分に追記がある。さらにH.R.591では条約レートは無視するって明記されてたけど、既に何回か触れた通り下院法案では条約を適用したレートがスターティングポイントになる。

また法文そのものじゃないけど、下院が上院に法案を送付した際に下院Budget Committeeが解説を加えてて、その中のsection 899の付加税に関してFootnoteがある。Footnoteによると付加税は特定税率(Specified tax rate)を上方修正する「だけ」の仕組みなので、そもそもSpecified taxの適用が明文的に免除されているケースには付加税の適用はないとしている。その例としてProfits interest exemptionが名指しされている。さらに条約で減免されているケースは結果として0%になってるとしても法的に課税が免除されている状況とは異なるとして区別している。

ということで次回のポスティングをドラフトする頃にはもしかしたら上院バージョンの話しができるような状況になってるかもね。

Sunday, June 8, 2025

Section 899下院法案バージョン (3)

Mega-Billの中の税法部分の上院バージョンが公表される前にsection 899下院法案バージョンの詳細に戻っておかないとねってことでシリーズ3。下院法案バージョンに関しては国別暦年ベースの付加税適用開始タイミングおよび付加%、そしてDiscriminatory Foreign Countryの納税者がFiscal Year課税年度を採択してるケースの各納税者に対する適用タイミングおよび混合税率の考え方に触れた。今日はsection 899の適用対象者が誰かっていう点に触れたい。

Applicable Person

Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。

Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。

Foreign Government

まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。

で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。

Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。

で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。

個人

次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。

また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。

法人

次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。

例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。

さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。

上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。

Private Foundation

どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。

信託

信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。

外国パートナーシップ・支店等

外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。

財務省による免除権限

実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。

ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。

Saturday, June 7, 2025

Section 899最大の難関「Byrd Rule」Parliamentarianから合格通知

う~ん、section 899、Super-BEAT、OECD De-funding等の対抗策は2024年の選挙で共和党がTrifactaになったら現実的って2023年当時から警鐘を鳴らし続けたけど、世間では全然Catch-Onしなくて(苦笑)、今になってメインストリームメディアとかが「section 899が…」とか条文番号にまで言及して大騒ぎしてるんでなんだかな~って感じ。米国ではsection 899は「Revenge Tax」っていう俗称が一般化してる始末。

Section 899は予算調整法(Byrd Rule)の範囲内?

Mega-Billを上院共和党が可決できるかどうか以前にsection 899やMega-Billに盛り込まれている規則の一部にはテクニカルなチャレンジがある。予算調整法って言う特別な手続きで上院を可決させることができる内容の規定かどうかっていう点を取り締まるByrd Ruleだ。Byrd Ruleは上院60票の代わりに単純多数決の50票超(議員投票で50の場合はVPのバンスがCasting Vote)での可決が許されるための条件を規定してるルール。上院可決時のルールなんで、元々多数決で法案を通す下院には直接関係ない世界。ただ下院としても上院で予算調整法スコープ外でキックアウトされるような法案を可決しても時間の無駄なんで当然そうならないよう配慮する。

Section 899に関しては主に2つの論点があり得て、1つ目は条約をオーバーライドしてしまうことで税法の範疇よりも外交ポリシー達成を主たる目的としてるんで予算調整法では制定できないんではっていう点、もう1つは予算調整法は法律が歳入・歳出に影響する必要があり、また10年間のBudget Windowを超えて赤字を計上してはいけないっていう点。以前のポスティングで触れた通り、Section 899下院法案バージョンではこの辺りを十分に加味して、1月に提出されたバージョンと異なり付加%は条約レートからスタートさせるっていう配慮を見せ、歳入・歳出面に関しては長期間に亘る財務長官の交渉規定を撤廃、財務省の検討を待たずにUTPR、DST、DPTをUnfair Foreign Taxesと明記し歳入のScoreを容易にしている。それを受けてJoint Committee of Taxationは10年間のBudget Windowで$161Bの歳入があるってScoreしてる。ただ2034年には$8B程度のマイナスに転じるってJCTは言ってるんで、そのままマイナスが続くとBudget Windowを超える期間の赤字がBudget Window内の黒字$161Bを超えてしまってByrd Rule違反ではっていうリスクもある。ただ、161対8だからその後20年掛けて2055年にはネットで赤字転落…っていうようなほぼ意味のない数字を基にNGになるリスクは少ない。Budget Windowで$161Bプラスっていうのは他の規定との比較においてもかなり立派な歳入源。

Byrd Rule違反かどうか誰が判断?

法案のどの規定がByrd Rule違反で予算調整法内で可決不可かっていう判断は上院のParliamentarianって呼ばれる人物が行う。Parliamentarianは一人だけだから凄い権力で、Elizabeth MacDonoughが2012年から10年以上君臨している。このParliamentarianの判断はなかなか油断大敵で例えばInflation Reduction Act審議時点でもPrivate Insurance MarketのPrescription Drug Priceがインフレ率よりも高騰する点を規制する条項は「歳入インパクトは単に付随的で、主にポリシー設定が目的」っていう理由でキックアウトされている。Section 899も上述の通り外交ポリシー設定が主目的って位置付けられると同じようなうきめにあうリスクが存在する。週末を迎える段階では現時点でParliamentarianからsection 899に関してネガティブな話しは伝わっている形跡はなく、何か問題があるんだったら何らかの前触れがあるだろうから下院が可決したバージョンは工夫されてるんでセーフでは?っていうのが大概の見方だった。

そして結果は?

週末のプレスによるとParliamentarianは少なくとも条項そのものをキックアウトするような理由はないって判断したようでこのまま上院の審議対象OKっていう合格通知が届いたようだ。細部で修正が求められる可能性は残るものの手続き的に致命傷を負うことなく進むことになった。

大領領および財務省は完全にバックアップしているんでWall Street系の懸念がどの程度上院に響くかがキー。Wall Streetって言えば、メディアのWSJは「Revenge Tax」は理に適ってて解決策はいとも簡単、すなわち外国が米国を差別しているUTPRやDSTを撤回すればいいだけでシンプルだから可決すればいいとバッサリ。

上院Finance Committeeのマークアップの初版が早ければ週末または週明けには公開されるっていう噂があるんでsection 899ばかりじゃなくエネジークレジットの撤廃タイミングやSALTの対処も目が離せないね。

Wednesday, June 4, 2025

ついにOECD資金拠出撤回法案+Section 899等審議動向

いよいよ上院が休会から戻ってきたんで今週からMega-Bill上院審議開始。既にArmed Services等の物議を醸しにくいCommitteeは自分担当部分のMega-Bill上院版を完成させつつあるっていう話し。

Rescission Bill

一旦予算化された歳出を議会が法律で撤回する手続きをRescissionって言うけど、DOGEが見つけた無駄使いとかで既に予算化されている支出を取り消すためのRescission Bill法案が大統領府から議会に提出されるってホワイトハウスが数日前から言ってた。Rescission Billは予算化(Appropriation)した議会からでも予算を使う立場にある行政府(Executive Branch)の長である大統領からでもどちらも提出できる。で、それが現実に提出されたんだけど、法案では他の多くの撤回に混ざって予算化されていたUN等の国際機関に対する計$437M全額撤回されている。UNとかと並びOECDへの拠出も全額De-Fundが提案されている。ちなみにダボスで有名なWorld Economic Forum(WEF)は近年いろんなスキャンダルが報道されてたり会長が辞任に追い込まれたりって報道されてるけど、このWEFに対する資金供与取り消しも入ってる。WEFってMAGA系や一般PeopleからはOut-of-touchなグローバルエリートの象徴みたいに言われることが多いんで米国が資金拠出を予算化してたことの方が不思議に見えたけど、考えてみれば選挙前に拠出が決まってたのを取り消すっていうことなんだね。政権変わったんで既に拠出は終わってるって勘違いしてた。

OECDのDe-Fundingの動きは数年前からあって何回かポスティングしたことがあるんでそれ自体驚きはない。OECDの予算の結構なポーション(20%程度?)を米国が負担してるって聞いてるんで、にもかかわらず世界を巻き込んでピラー2とかで米国の国家主権を侵害して不快っていう話しも以前からの共和党のスタンス。ただ、共和党Trifectaの状態になってるんで、昨年の予算段階では民主党多数の上院を通らなかった環境と異なり、今回は資金拠出停止が現実になる可能性がある点、以前とは迫力が異なる。

Mega-Bill上院審議

Medicaid、エネジークレジット、SALT控除とか具体的な争点は多岐に亘るけど、いくつか大枠のダイナミクスがあるとするとまず下院リーダーシップ。上院の話ししてんじゃないの?って思うかもしれないけど上院が審議のたたき台となる下院法案はMagic Johnsonの「綱渡り状態の離れ業」で際どく可決に漕ぎつけたもの。したがって下院Mega-Bill法案の内容をあまり大きく変えると、その後の両院一致法案とする際の下院審議がまたしてもドラマチックに困難になるリスク大。このリスクはRealなんで「上院による修正は最低限に…。Delicate balanceを崩さずに」っていうのが下院リーダーシップの願い。この願いはいくらMike JohnsonがMagic Johnsonと言われてももちろん実は生身の人間で本当の魔法使いじゃないんで下院リーダーシップにとってはかなり切実なもの。にもかかわらず本来一番法案を通したいトランプがTruth Socialで「上院は好きにするだろう」みないなコメントをしたりして下院リーダーシップは冷や冷やものだろう。Truth Socialのあのコメントは普通のポリティシャンだったら絶対に敢えて書かないだろう。まあそこがトランプなんだろうね。

もうひとつは(今度こそ上院の)Deficit Hawk派。Rand Paul (R-KY)とRon Johnson (R-WI)の2人は一貫して財政赤字反対だから今のMega-Bill法案では賛成票には数え難い。せめてコロナ前の歳出レベルに戻すべきっていうのが彼らの主張。危機がある毎に政府が大きくなって危機が終わっても小さくならないから累積赤字がここまでの状態になってるんでこの主張はもっともに聞こえるけど普通の議員は歳出減には常に腰が引けるんでなかなか歳出を減らすことはできない。

PaulやJohnsonに比べるともう少し弾力的に対応する余地があるような気もするけど、Mike Lee (R-UT)やRick Scott (R-FL)もいる。ただもっと手ごわいのは実はMitch McConnell (R-KY)、Lisa Murkowski (R-AK)、そしてSusan Collins (R-ME)っていう話しもある。MurkowskiやCollinsはDeficit Hawk派とは真逆の理由で賛成できないんだろうけど、第一期トランプ政権時からトランプとは何かと意見が割れることが多かったんで票読み的にはなるほどねって感がある。McConnellは旧Establishmentの共和党の代表みたいな存在なんでMAGAとはそりが合わない。ただMega-Billのタックス部分の多くはMcConnellの関与も多かったTCJAの延長なんだけどね。McConnellの奥さんはトランプ1.0で交通省長官を務めたElaine Chaoだけど、去年だっけ、彼女のSisterがテキサスに所有する大きなランチに友人を招待して飲んだ後、Tesla運転して別邸に帰ろうとした際、自分のランチ敷地内にあるLake(池?)に暗闇の中落ちて水没してしまった事件はビックリだった。その後もMcConnellは転んで怪我したりして何かとついてない感じ。昔の影響力や政治力を知っているだけに…。

で、下院同様、上院も53対47っていう負けずに僅差だから最後はJDバンスがTie-Breakするとしても造反は3人まで。この線を死守できるかどうか水面下で交渉が始まってるって推測される。これらのDeficit Hawk派が更なる歳出減を要求すると、上院での審議が込み入るばかりでなく、仮に上院で何らかのコンセンサスが得られたとしても今度は修正された法案の下院側の受け入れでひと悶着ってなる。

Cut v Saving

ちなみにDCでのやり取りを見てると、税法そのものは共和党Finance Committeeメンバーが既に大概の方向性を決めてて下院法案と大枠歩調を合わせるっていうような話しがある一方、他の部分、特にMedicaid等のプログラムに関しては更なる歳出減(Cut)がないとDeficit Hawk派は賛成に至らず、1票ほどショートするのではってような憶測が多い。ちなみにこれらのプログラムの歳出カットを語る際、共和党リーダーシップは「Cut」ではなく「Saving」って形容するトレンドがある。そんなの同じじゃんって思うかもしれないけど、プログラム創設の趣旨的に本来恩典があるべき市民のベネフィットは削ることなく、無駄使い、不正や濫用を最小限にするっていうアプローチを強調するため、一般市民のから徴収した税金の無駄使いをSaveするっていう意味。

他にも連邦政府に通常の市民感覚、Common Senseではチョッと想像し難い(ただ、外交とかのIntricateなポリティクスは一般Peopleには理解し難いんでどこまでの支出が米国の利益でどこからが私欲や無駄使いなのかは各自のイデオロギーによるところが大きいよね)巨額の不要な支出、不正、濫用が明らかになってるけど、それらをどこまで法律でFixする規律があるかどうかがキーだろう。OECD資金拠出取り消しのRescission Billは既に予算化されている拠出の撤回だけど、Mega-Billみたいに今後の支出を左右する法案に関して、共和党議員の多くが厳しい票を投じる勇気がない場合、DC系のニュースサークルでチラッと聞いたのは、一旦議会が予算を決めた後、行政府・ホワイトハウスが施行時により低いコストで目的を達成したら差額は議会のRescission可決を経ることなく節約した額を大統領権限で歳出減とすることができるっていう趣旨の文言をMega-Billに盛り込むっていう新案。これだと弱気の共和党議員はハードな票を入れなくてもいい一方、トランプ政権はこの手の歳出減に何の躊躇もないのでガンガンSaveしてくれるのでは、っていう期待で下院法案に大きな変更を加えない状態でConferenceに持ち込むっていうアイディアのようだ。ただ、こんな手法じゃないと膨張し切った歳出もカットできないのは議会的に情けないっていうかArticle 1の義務を市民に負ってる意識が十分じゃない気もするけどね。無駄使いをSaveしたら市民の評価は高いって思うんだけど、その審判を仰ぐ気概もないのかもね。

Section 899は?

下院Section 899法案に対する反対派はいわゆるWall Streetタイプからが多く、米国へのCapital Flowに悪影響があるから好ましくないっていう理由。国の借金が多額な中、さらに外国人が国債を含む米国資産購入を控えるんじゃないかって結構慌て気味。それを受けてビジネス系のニュースサイクルも「ただでさえTreasury Bondが不調なのに…」っていうような論調もあるけど、この4年借金が一気に倍近くになっても余り騒いでなかったのに今更って感じも。Secton 899がなければいつまで借り続けることができるって考えてたんだろうね。Section 899あってもなくても時間の問題って感じはあったんだけど。以前のポスティングで触れたドルのReserve CurrencyとResource Curseの問題だ。

Capital Flowに関してはひとつ救いの手が差し伸べられてる。下院から上院に送付された法案Textに添付されていた下院Budget Committeeには面白いFootnoteが付いてて、そこにはPortfolio Interestに代表される米国内法で非課税と規定される投資所得に関しては5%付加税の対象にはならないって明記してる。この点は条文からは明確じゃない(1月の899案のポスティングで触れたよね)。一方で条約で免税になっているものは本来課税なのでこれとは異なり付加税の対象だそう。え~じゃあBondの金利とか大丈夫じゃんって、これでWall Streetも一安心?Ways and Meansも今日新たなプレスリリースで899に対するパニック反応に対抗するコメントを公表している。

肝心の上院では下院Section 899法案に対して今のところ特に目立った拒絶反応は聞かれない。John Thuneも上院は上院の考えがある的な発言はしているものの899に特化したコメントはない。もっと争点となる大物があるし、Deficit Hawk派との交渉も考えると敢えて$161Bの歳入源ってScoreされてる貴重な規則を廃止するだろうか。ただ、Joint Committeeは10年間のBudget Windowでは$161Bの歳入プラス効果だけど、後半2年(2034年とか)だけに限定してみるとは投資減によるマイナス効果で逆にいくらか歳入が減るって予測してる。ただ、この手のScoreは当たらないし、ましてや2034年に「まだこれだけの国がUTPRを維持してるか…」とか当然不明だからかなりいい加減というかEducated Guessの域を出ない。

ということで現状アップデートでした。