Mega-Billの中の税法部分の上院バージョンが公表される前にsection 899下院法案バージョンの詳細に戻っておかないとねってことでシリーズ3。下院法案バージョンに関しては国別暦年ベースの付加税適用開始タイミングおよび付加%、そしてDiscriminatory Foreign Countryの納税者がFiscal Year課税年度を採択してるケースの各納税者に対する適用タイミングおよび混合税率の考え方に触れた。今日はsection 899の適用対象者が誰かっていう点に触れたい。
Applicable Person
Super-BEAT以外のsection 899の基本的なアプローチは「Applicable Person」に関して規定されるタイプの税率に付加税を足すっていうもの。源泉税は徴収メカニズムなんで源泉徴収が義務付けられる支払者の位置づけは関係なくて所得を受け取る者が「Applicable Person」かどうかが重要。支払いを受け取る者がApplicable Personの場合に源泉税を徴収・納付する者が付加%を足して源泉する。いずれにしても誰がApplicable Personになるかの判断が重要。
Applicable Personは条文にて下に列挙する者と定義されている。当然だけどいずれもDiscriminatory Foreign Country、すなわちUTPRやDST等のUnfair Foreign Taxesを持つ国に関係する者。ここでは便宜上Discriminatory Foreign Countryを「問題国」って表現しておく。
Foreign Government
まず問題国の「Foreign Government」。法人や個人を超えて堂々のトップバッター。この順序自体に特に深い意味はないのかもしれないけど(そしてもちろん法的なSignificanceはゼロだけど)、なんとなく問題国の法人や個人は自分たちではどうにも対処のしようがない世界で付加税とかの迷惑を被ることになるけど、Foreign GovernmentはUnfair Foreign Taxesを導入している国と一心同体(?)ってことなのかな~とか考えちゃうけどね。この順番チョッと不自然だもんね。
で、ここでいうForeign Governmentは米国税法のsection 892に基づき本来であれば通常の外国法人よりもアップグレードされた特別な特典を受けることができる者。Sovereign Governmentの「Integral Part」およびSovereign Governmentが持つ一定要件を満たす「Controlled Entity」の双方を意味する。俗に言うSWFは通常Controlled EntityとしてForeign Governmentと位置付けられる。米国内外のCommercial Activityがフローすると大変なことになるんで(SWFそのものもだけど、アドバイザーも…)通常のECI以上の超慎重な対応となる。ファンドが通常の外国人LPとは別に892用のFeederを用意したりするのはこのためでCommercial ActivityをフローさせないっていうのはExistential的な検討になる。
Foreign GovernmentがApplicable Personっていうのは定義としての規則なんだけど、Foreign Governmentに関してはApplicable Personなんで付加税適用っていうインパクトはもちろんだけど、加えてわざわざ付加税適用を規定している箇所に「Foreign GovernmentがApplicable Personになる場合section 892(a)に規定されるForeign Governmentの特典はない」って特記がある。SWFのポスティングじゃないんで細かい話しはしないけど、通常の外国法人との比較でForeign Governmentの恩典って主に50%「以上」の持分を持たず、また実質支配下においたりしてない限り米国法人からの配当が条約にかかわりなくゼロ%になる点、また持分が50%未満のUSRPI株式を譲渡してもFIRPTA課税の対象とならないっていう点。もちろんForeign Governmentが同時にQFPFでもあるケースも珍しくないんで、そんなケースではQFPFに認められる別のFIRPTA恩典もプラスで享受することができる。
で、問題国のForeign GovernmentにForeign Governmentの特典がないと一体全体どうなっちゃうの?って言うと、特典がないからと言って全ての所得に自動的に課税されるっていう訳ではなく、要は通常の外国法人と同じシステムで課税されるっていう取り扱いになる。ただ、問題国の法人は後述の通りApplicable Personとして付加税の対象になるんで、通常の外国法人として条約を加味した後にsection 899のインパクトを図ることになる。
個人
次は個人(Individual)に関してだけど、こちらは問題国の税務上の居住者で米国市民や米国居住者でない者。1月21日の原案では「市民(Citizen)」だったけど下院法案バージョンでは「居住者(Resident)」に変更されている。ということは例えば日本の例だと、日本の法令で非居住者になると日本に関してはApplicable Personじゃなくなるってことになる。だけど、問題国は個人が市民権を持っている国に限定されないんで、例えば英国の居住者になったりするとそれはそれで英国が理由でApplicable Personになっちゃうよね。なんで英国を例にしたかは分かるね。英国はUTPR、DST、DPTの3冠王だからね!3冠王でも付加税が3倍になることはないんでその点は安心(?)。逆に言えばひとつでも持ってるとNGだからね。
また、米国に引っ越す場合、例えば暦年の後半に日本を出て日本の法令で非居住者になっても(これは日本の法令で専門外なんで例)米国の国内法では翌年の1月1日からしか居住者にならないことが多い(出国以前過去3年間にどれだけ米国に足を踏み入れてたか次第)。それでも日本の居住者じゃなければ、米国で非居住者でも他のどの国の居住者にもならないだろうからその間は「Nowhere Man」としてNowhere Landに住んでることになるんんでApplicable Personには当たらないことになるはず。う~ん、これこそHe's a real nowhere man…。子供の頃Rubber Soul良く聴いたな~。Rubber SoulからRevolver、そしてPepperまでの進化は直前のHelpとの比較で凄まじい。才能が開花するってああいうことだね!で、Applicable Personの話しに戻るけど(安心した?)課税年度毎で計算する税金に関して同じ課税年度(暦年)内にApplicable Personとそうでない期間が混在する場合の取り扱いは今一つ明確じゃない気がする。また、前回のByrd Ruleの絡みもあるんで居住関係は条約も加味して判断していいって考えるのが自然だと思うんで4条のTie-Breakerとか適用してたらその前提でApplicable Personかどうかを判断することになるんだろう。市民っていう定義じゃなくなったんで、米国駐在期間は原則Applicable Personにはならないことになる。また個人に関してはFIRPTA以外のECIには付加税の適用はないって明確になったんでその点でも相当Scopeが狭まる。個人は良かったね。
法人
次に問題国の法人。正確には問題国の居住者と取り扱われる法人。ただし、米国所有外国法人(a United States-owned foreign corporation)は除外。この米国所有外国法人は外国税額控除の制限枠を規定している条文に定義があり、米国人(米国居住者、市民、米国法人、米国パートナーシップ、米国信託、米国遺産)に直接・間接に50%以上の議決権または価値を所有される外国法人を言う。この判断時には株式を取得するオプション(そのオプションを取得するオプションも含む)はオプションでオプション所有者が対象株式を所有しているかのように取り扱う。
例えば、米国法人の英国子会社(英国居住法人扱いと仮定)は問題国の法人なんで本来であればApplicable Personだけど、米国所有外国法人なんでApplicable Personにはならないことになる。英国って国単位では問題国(Discriminatory Foreign Country)だとしても。
さらに問題国の居住法人でなくても、50%超の議決権または価値を直接・間接にApplicable Personが所有している外国法人もApplicable Personに当たる。ただし、この目的では上場企業は免除。注意が必要なのは上場企業に適用される例外はあくまでその法人の居住地は問題国じゃないケースのみ。すなわちそんなケースでは上場企業の持分が他国のApplicable Personに50%超所有されててもApplicable Personにならないってことだろう。上場企業の居住国そのものが問題国の場合、上場企業だからってApplicable Personにならないっていう例外はない。
上場企業以外の法人がUnfair Foreign Taxesを導入していない優等生国(?)の居住法人の場合、それでもApplicable Personになるかどうかの判断には法人の持分を正確に特定する必要がある。容易に特定できるケースも少なくないかもしれないけど、場合によっては特定が難しいケースもあるだろう。ケイマンファンド経由とかで所有されているようなケースだと法人はBeneficial Ownerが分からない可能性大。どうするんでしょうか。USRPIみたいに反証できなければApplicable Personみたいな規則が出るのかな。
Private Foundation
どれだけ読者の皆さんに影響があるか分かんないけど、問題国で創設(Created)される、または組成(Organized)されるPrivate Foundation。付加税の規則ではPrivate Foundationに課せられるExcise Taxは付加税対象タイプって明記されてる。
信託
信託は米国内外を問わず受益権(「Beneficiary Interest」)の50%超(「Majority」)をApplicable Personに所有されているケース。
外国パートナーシップ・支店等
外国パートナーシップ、支店、その他の主体に関しては財務省が定める範囲でApplicable Personになる。条文の文言的にこれらの主体・支店は財務省規則(またはNotice等のSub-Guidance)が公表されるまではApplicable Personには当たらないことになる。パートナーシップはなぜ法人や信託みたいにCapital InterestまたはProfits Interestの50%超をApplicable Personに所有されているケースとかしないんだろうって思うかもしれいけど、おそらく持分の認定を704ベースとかで判断するのは難しいし、パススルーなんでパートナー自身がApplicable Personだったらいずれにしても他の定義でカバーされるっていうことで、仮に外国パートナーシップ自体がApplicable Personかどうか不明でも、パートナーがApplicable Personだったら外国パートナーシップからAllocationされる米国課税対象所得にはパートナーが直接受け取ったかのようにsection 899の適用があるっていうことに見える。
財務省による免除権限
実はApplicable Personの定義に、全てのタイプのApplicable Personに関して「Except as otherwise provided by the Secretary」っていう例外が規定されている。ここで言うSecretaryは財務長官のこと。つまり上に列挙した者でも財務長官権限で「Applicable Personではない」っていう指定が可能なことになる。例外規定なんで法文解釈の「いろは」的に狭義に解釈し、例外が公表されるまでは例外はないってことだけど、これはランダムにこの人はOKというような例外じゃなくて、問題国がUnfair Foreign Taxesを撤廃する手続き中とかの状況に認められるタイプの緩和措置っていうのが趣旨だろう。
ということで次回は下院法案バージョンの付加税対象タイプの税金に関して。上院の動向次第でテーマ変わるかもしれないけどね。