Saturday, April 26, 2025

両院合意のConcurrent Budget Resolution

トランプ政権発足から未だ100日弱しか経過してないけど、おそらく史上まれにみる激しい政権発足100日になるだろう。メキシコとの国境はほぼ完全に封鎖されバイデン時代に一千万強の移民が流入してたのが噓のよう。その他カルチャー系の問題やエネジー政策その他公約をほぼ全て強硬に実行中。これらの政策はトランプに投票した有権者は評価してるだろうけど経済政策はどうだろうか。

規制緩和

経済的にはまず規制緩和。特に金融やクリプトに関しては規制緩和路線が明確だし、税法に関してもバイデン時代末期に滑り込みで規則策定され、行政府の権限逸脱という反論が多かったパートナーシップを使用したBasis Shifting対抗規則の撤廃が発表された。パートナーシップのBasis Shiftingって言うと洗練された、または阿漕なプラニングに聞こえるかもしれないけど、結構な部分は法的に強制される資産簿価に対して普通にやらされてる調整の適用。例えばsection 732とか734、確かに思わぬEconomicsになることがある分配時の743とかをターゲットにし、通常領域の簿価調整も含めて広範に「Transaction of Interest(「TOI」)」に指定し報告義務が課せられてた。TOI(トイって言います)は玩具じゃないからね。Basis Shift規則は対象取引、報告対象期間双方の面でOverbroadで面食らってたパートナーシップは多く、撤廃はWelcome。743とか条文に基づく取り扱いの変更は行政府じゃなく、議会が法律で策定するべき。特にLoper Bright後の世界では。実際に上院ではBasis Shiftに関係する法案が提出されたりしてる。思いつく範囲でも見直して欲しい規則は結構ある。スピンオフ、特にSecuritiesのDebt for Debtの取り扱い、自社株買いのFunding Rule規則案、DC REIT判断時のC CorpのLook-throughとか。1.385‐3のFunding規定もそろそろ何とかならないかなって思い続けて既に10年近い月日がたったね。

規制緩和でイマイチ予想を下回ってるのはLina Khanが去った後のFTC(公正取引委員会)。Andrew Ferguson傘下で一気にLiberationされるかと思ってたけど、Capital OneとDiscoveryとか金融系はスムースにSailingしているのに対し、Big TechやPharmaには引き続き厳し目。Big Techはバイデン政権傘下で言論統制や世論操作させられてた危険な存在っていう見方がトランプ政権に根強く残っている点はひとつの理由だろう。

関税で税制改正の早期可決がMustに

で、公約だった関税が現実になり、しかも関税はオンだったりオフだったり。不確実性が高いのはビジネスにとってプラニングができず一番困るだろうから一層のことUniversalに10%なんだったらそう決めてMove Onした方が分かり易かった気がするんだけどね。また、以前に何回か触れた今のままではいずれ米国は過去の大国同様に滅び行くって言う危惧に対処するためのGlobal Reorderだけど、これが狙い通りにプラス効果をもたらし、米国市民、特に製造業が多い中西部の有権者がそのメリットをいつ「体感」できるのかはもちろん不明。そんな状況で経済に不確実性が増してるんで、少なくとも短期的なショック緩和策として規制緩和に加えて国内経済「成長志向」の税制改正の早急な可決がますますMustになったっていう点は前回チラッと触れた。

税制改正の具体的な大枠はTCJAの恒久化(上院)または時限延長(下院)、そしてトランプが選挙活動中から言ってるチップ、残業代、公的年金受給非課税、米国内製造に帰する所得に対する15%減税とかのパッケージのできるだけ多くを盛り込むっていうもの。これだけでも超大型法案だけど、それに国境警備、国防、エネジー関係を盛り込むOne Packeageなんで規模は巨大で、それだけに党内調整には多くのチャレンジがある。

TCJAの延長に関しては、TCJAそのものが2017年に同じトランプ大統領下の共和党Trifectaで可決された税制だから、2025年も同じくトランプ下で共和党Trifectaっていう点からTCJAを延長したり恒久化するっていう動きはごく自然に見える。でもチョッと落ち着いて考えてみると2017年の共和党と2025年の共和党では異なるベースの党で別の党みたいだから、2017年の税法をそのまま延長しようっていうこと自体、何となく不思議な部分はあるんだけど、まあTCJA自体が元からAmerica First Policy的なトランプ1.0のSignature法案で、結果多くの所得層に恩典があったことを考えると自然な流れって整理しておくべきなんだろうね。

S. CON. RES. 7/H.Con.Res.14 Concurrent Resolution

そんな中、上院は以前に可決していた2-TrackのBudget Resolutionの代わりに下院同様に税制改正、国境警備、軍事やエネルギーの全てをOne Packageで対処する「Big Beautiful Bill」、または「Too Big to Fail」って呼ぶ人もいるけど、に変更してBudget Resolutionを可決。その後、下院が新上院バージョンをギリギリ可決させてようやく正式に両院(Concurrent)のBudget Resolutionが誕生した。

Budget Resolutionを含むReconciliationのプロセスはthe Congressional Budget Act of 1974に基づくもので、Reconciliationルール枠内の法案を審議すると上院でFillibusterっていう議事進行妨害の除去に必要な60議席ではなく、単純多数決の50議席超で予算案を可決できるっていう制度。その際、法案に盛り込まれる内容は歳入・歳出に関係ないといけないとか、Reconciliationの手続き自体超複雑で僕の専門分野とは言えないけど、ベーシックなところで理解してる範囲でプロセスに触れておくと、まず両院各々が2025年の予算の大枠(具体的な法案内容ではなく)をBudget Resolutionとして可決し、最終的には一つのBudget Resolutionとする必要がある。

具体的には2025年の予算に関して上院が4月5日に以前の2‐Trackバージョンではなく、一括法案を想定したBudget Resolution(これがS.Con.Res.7)を可決。下院は既に一括法案を想定して先の3月20日に独自のBudget Resolution(H.Res.258・H.Con.Res.14)を可決してたけど、4月10日に下院は上院のS.Con.Res.7に元々の下院のポリシーを加味して採択。このプロセスを経て上院のS.Con.Res.7が両院合意の最終Budget Resolutionになった。元々下院のDeficit Hawksの意向を反映するために$1.5~$2Tの歳出カットが反映されてたけど、これらの歳出カットはそのまま下院向けには残る形で最終化されている。

上院・下院で異なるInstructions

このようにBudget ResolutionがConcurrentで両院一致バージョンになったものの、面白いことに上院バージョンに元々の下院バージョンを合体させてることから上院と下院で各委員会に与えられた予算指示内容は異なるっていう複雑な構成に仕上がっている。上院と下院には各々委員会があって、個々の委員会が管轄権を持つ分野はミラーイメージじゃないけど、トータルでは結局同じ分野を取り扱うことになる。下院はEnergy & Commerceっていう委員会があると思えば上院はEnergyっていうのがあり、下院のFinancial Services委員会もどきが上院Banking委員会だったりするけど、特定分野に関して両院でどこかの委員会が予算を作成する立場にあって最終的な法律は同一じゃないといけない。税制に関してはもちろんだけど下院はWays and Means Committeeだし、上院だったらFinance Committeeだ。

歳出カット

ConcurrentのBudget Resolutionに反映されている予算指示で、上院と下院で大きく異なるのは歳出カット規模。下院ではWays and Means以外の各委員会に合計で$1.5Tの最低歳出カットが指示され、Ways and Meansには$4.5Tまでの歳入減、すなわちTCJA延長他の税制改正による減税の財源が手当てされている。歳出カットは$1.5Tが最低ラインで$2Tに届かない場合、不足額はWays and Meansの$4.5Tを減額する。逆にもし歳出カットが$2Tを超える場合には、Ways and Meansの$4.5Tを増額することができる。

一方の上院側にはこの手の歳出カットの指示はない。正確に言うと全委員会合計でナンと「$4B」(この「B」は「T」のタイポではなく本当に「B」)という実質ゼロと言ってもいいような無意味な歳出カットを指示してる。これは共和党はMedicaidをカットするつもりって民主党・メディアが市民の恐怖を煽ってるんでその対策なんだろうか。Medicaidを正当に受給しているケースはカットはしないってトランプ政権は再三にわたり強調してるけど、Medicaidの不正受給や濫用による歳出は巨額だっていう話しだからトランプ政権が着手してる政府によるWaste、Abuse、Fraud支出をなくす努力をして歳出を管理するのは当然で不正の排除はMedicaid恩典カットには当たらないはず。この辺りのメッセージングはレガシーメディアが不安を煽ってるんで一般には伝わり難いところ。

米国の仕組みって日本と違い過ぎて分かり難いと思うけど、医療保険に関して国の皆保険制度はない。Privateの保険に加入しないとなかなか病院にも行けない。医療保険にかかわる連邦政府の関与は主に2つで一つは65歳以上の高齢者および身体障碍者に対するMedicareで、もう一つは低所得者に対するMedicaid。Medicaidの方は制度導入1965年当時の趣旨は生活保護を受けてる低所得層に対する医療費援助で、州が運営し連邦がかなりのポーションのコストを負担するっていうもの。1965年から制度は拡大し、特にオバマケアで連邦の負担は増額の一途。また不正の温床のようで、DOGEが実態調査する以前にも会計検査院(GAO)がMedicaidの不正は$100B規模って指摘してるから凄い。$100Bって一年のコストだからBudget Windowの10年に置き換えると$1Tだ。

Medicaidってチョッと不思議に思うかもしれないけど、下院ではEnergy & Commerce委員会の管轄化。当委員会は憲法批准直後に憲法のInterstate Commerce条項にかかわる法的管轄権を持ったことから、連邦が司る医療プログラムは必然的にInterstateとなることが理由で当委員会が管轄権を持つ。で、上述の通りConcurrentにも反映されてる下院のBudget Resolutionは計$1.5Tの歳出カットを指示してるんだけど、そのうち半分以上の$880BがこのEnergy & Commerceに割り当てられている。もちろんこれは偶然ではなくMedicaidの正当な給付ではなく、不正をカットすることで相当な歳出カットが可能だろうっていうのが背景。

一方、上述の通り上院でMedicaidを管轄しているFinance委員会には歳出カットの指示が出てない。この点から上院がどれだけ真剣に下院委員会が可決する歳出カットを法案に取り込むかがBudget Reconciliation法案可決に向けての大きな関心になっている。下院のDeficit Hawk派が上院のBudget Resolutionに賛成票を投じたのは、上院による「歳出カットはResolutionに盛り込んではないものの、下院の$1.5Tカットには賛成で同様の努力を惜しまない」っていう口約束が理由なんで火種を先送り(英語で言うところの「Kicking the can down the road」)した感は否めず、下院法案が目標のMemorial Day(5月26日)に完成したとしても、その後の上院法案や両院共通の法案とする際の交渉がどんな風に展開するか目が離せないね。